オープンワールドMMORPG『RAW』、Kickstarterから資金調達停止が下される。 目標設定額が「虚偽の表示」に該当してしまう

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ドイツのデベロッパーKillerwhale Gamesが開発するオープンワールドMMORPG『RAW』は7月15日、Kickstarterから資金調達停止の処分を受けた。海外メディアPCGamesNなどが報じている。Killerwhale Gamesは『RAW』の開発資金を調達するため、今年6月17日からKickstarterを開始。

同月27日には、目標達成額である7万8818ドルの調達に成功。ファンディングが停止されるまで獲得資金は19万3332ドルに達していた。しかし今回、「Kickstarter外での資金調達の予定」を理由に、Kickstarterからキャンペーン停止処分が下されたようだ。

『RAW』は約400平方キロメートルにもおよぶ広大な島が舞台のサンドボックス型MMORPG。島全体がオンラインプレイヤーによって構成され、各プレイヤーは島の住民となって、仕事でお金を稼ぎ、土地を購入したり、家を建てたりと、生活を営んでいく。生活スタイルは多岐にわたり、警察官などの公務に就くことや、トラックの運転手など民間企業で働くことをはじめ、事業を起こしビジネスを展開することや、市長となって州の予算管理、街のインフラ整備を行うことも可能。ほかにも車のナンバープレート登録や、税金などの要素も用意されており、オンラインプレイヤーとの“リアルな生活”を前面に押し出した作品となる。

また『RAW』は、『ARMA3』のMod「Arma Life」や『Rust』、「GTA」シリーズなどのオープンワールドゲームから影響を受けた作品であることを、Kickstarterページにて開発元は述べている。

わずか10日で目標額を達成したことや、最終的に約20万ドルの資金を調達していたことから、従来のオープンワールド作品をベースとしつつも、リアルなオンライン生活が楽しめる『RAW』に向けられたバッカーからの期待は高かったことと思われる。しかしプロジェクトをスタートした当初は、小規模な開発チームが挑むプロジェクトにしては、ゲームの規模が大きすぎるうえ、約8万ドルという目標設定額も十分でないと、redditにてユーザーから『RAW』の実現に懐疑的な目を向けられていた。
 バッカーから期待を寄せられている一方、問題視される部分もあったようだ。

しかし冒頭にも述べたとおり、資金調達が一時停止となった原因はKickstarterの判断によるものである。Killerwhale Gamesには『RAW』の資金調達を中断したと告知する文章と、「プロジェクトを中断する判断基準」がKickstarterからメールで送られてきたようだ。

メールの内容では、プロジェクトの中断に至る判断基準が3つ確認できる。1つ目は、開発者や関係者がバッカーを装った場合。2つ目が、他人の経歴を適用することおよび、なりすまし行為。3つ目が、プロジェクト、またはその作成者に関連する事実を偽って、もしくは間違って表示した場合である。PCGamesNが報告したKickstarter担当者の発言によると、今回のケースでは3つ目の項目に抵触したようだ。その理由にKickstarterのFAQページにて、「なぜ目標額は7万9000ドルなのですか」といった質問に対するKillerwhale Gamesの回答を取り上げている。回答の内容は、快適に開発するには最低30万ドルの資金が必要だが、開発の遅れなどからプロジェクトにかけられる時間が限られているため、目標額を7万9000ドルにまで引き下げることにしたこと。そしてKickstarterはあくまで資金調達における最初の段階だとして、後に異なるクラウドファンディングサイトIndiegogoを利用すると明言している。

この回答に対しKickstarter担当者は「このクリエイターはプロジェクトを完成させるためにKickstarter外で資金を調達する必要があると述べました。私たちはプロジェクトが誠実かつ明確に提示されていることを求めます。しかしこのプロジェクトはその基準を満たすことができませんでした。」と述べている。IndiegogoとKickstarterの掛け持ちプロジェクトはそう珍しくはない。おそらく、プロジェクトの規模の大きさと開発チームの規模との間でうまく釣り合いがとれず、現時点でかかる金額と将来的にかかる金額との間に大きな差が生じてしまった結果、Kickstarter から目標設定額が“不透明”だと判断され、虚偽の表示に該当してしまったのだろう。

Killerwhale Gamesは今回の事態を受けて、公式Discord上でもKickstarterでの資金調達が中断したことを報告している。またKickstarterからプロジェクト中断の告知を受けるまで、一切の「警告」がなかったと強調している。Kickstarterで募った資金は通常、プロジェクトが“終了”した後にのみ請求することができるため、19万3332ドルは“なかったこと”になり、資金集めは頓挫していることと思われる。しかし開発元は「私たちは非常にがっかりしています。しかし挫けてはいない。」と発言しており、今後はIndiegogoを利用、あるいは自分たちのウェブサイトを通して資金を調達していきたいと前向きな姿勢を見せている。また準備には2日ほど要するようだが、以前からコミュニティに約束していたゲームプレイ映像の公開を行うとの方針も明らかにしている。

今後Killerwhale Gamesには、開発者たちが実現したい理想と、資金や時間を踏まえた現実との間でベストな選択肢を模索していくことが求められそうだ。一方、Kickstarterには開発者とバッカー、双方にとって満足のいくプラットフォームづくりがより一層必要とされるだろう。

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