ドリームキャスト作品の制作秘話に迫る1時間弱の濃厚ドキュメンタリー映像公開中。『シーマン』『スペチャン』『JSR』などの開発者が語る裏話

日本のアーティストやクリエイターを海外に向けて紹介するYouTubeチャンネルが7月5日、「A Dream Cast - Part 1」と題したインタビュー動画を公開した。前編であるPart 1ではドリキャスのタイトルに関わるようになった経緯や、開発の裏話などについて語られている。

日本のアーティストやクリエイターを海外に向けて紹介するYouTubeチャンネルArchipel(旧toco toco tv)が7月5日、「A Dream Cast – Part 1」と題したインタビュー動画を公開した。ドリームキャスト20周年(今年2019年11月27日で21周年となる)の一環として、ドリキャスの代表的なタイトルのクリエイターにインタビューを行っている。前編であるPart 1ではドリキャスのタイトルに関わるようになった経緯や、開発の裏話などについて語られている。

「ドリームキャスト」はセガが1998年に発売した家庭用ゲーム機。同時代のPlayStation 2やゲームキューブなどとシェアを競い合ったゲーム機だ。惜しくもシェア争いでは敗れてしまったが、そのゲームタイトルは王道というよりどこか尖ったところがある個性的なゲームが多く、熱烈なファンを獲得していたゲームハードだった。そんなコアなタイトルがひしめくドリームキャストタイトルの中でも、絶大な人気を誇りハードの色を体現するかのようなタイトルの数々がある。そんな名作のクリエイター達が動画に登場し、インタビューに応え当時の様子や開発秘話などについて語ってくれている。

動画に登場するクリエイターは計8名。井内ひろし(『斑鳩 IKARUGA』)、岡野哲(『SGGG』(セガガガ))、菅野顕二(『クレイジータクシー』)、菊池正義(『ジェット セット ラジオ』)、小玉理恵子(『エターナルアルカディア』)、斎藤由多加(『シーマン』)、水口哲也(『スペースチャンネル5』、『Rez』)、世取山宏秋(『ソウルキャリバー』)、(以上敬称略)といった錚々たる面々だ。約60分の動画の中で語られる内容はかなり盛りだくさんでありかつ濃い話なので、是非とも動画をご覧頂ければと思う。ここではとてもすべてを紹介しきれないので、特に印象に残った二、三のお話をご紹介することとしたい。

画像は当該映像よりキャプチャしたもの

『スペースチャンネル5』と『Rez』を開発した水口哲也氏は、両タイトルが同時平行的に開発された様子について語っていた。昼は『スペースチャンネル5』の仕事を主に行い、夜になると『Rez』の開発をしていたそうだ。明るい時間帯には明るく楽しい雰囲気の『スペースチャンネル5』を、そしてあたりが暗くなってくると暗いゲーム画面の中でアンビエントなテクノが鳴り響く『Rez』のムードに自然となっていったという。ほとんど会社に住んでいる状態で開発を進めていた水口氏。ともに音楽とゲームを融合させた内容でありながら雰囲気の全く異なる両タイトルを昼夜のサイクルで作っていたことで、心のバランスが保たれていた面もあったようだ。

『シーマン』を開発し、またシーマンの声も担当した斎藤由多加氏は、シーマンをどうしても目立つ存在にしたかったと語った。そのために通常のゲーム開発では行われない三つの逆のことをあえてやるようにしたのだという。一つ目は、ゲームのキャラクターはピカチューのようにかわいらしく作るのがセオリーだが、『シーマン』では顔は人間で体が魚という気持ちの悪い人面魚をメインキャラクターに据えている。二つ目は、ゲームとはプレイヤーがテレビの中のゲーム画面を覗きこみ進めていくものだが、『シーマン』ではテレビの中のシーマンからプレイヤーの生活を覗くような演出がなされている。そして三つ目は、ゲームではファンタジーやクライムアクションなど非現実を楽しむものが多いが、『シーマン』では「昨日誰と会ってたの?」「今日何食べた?」といった質問がされ、プレイヤーは現実でのことを話さなければならない。こうして意識的に変わった要素を詰め込むことで、奇妙なゲームでありながら異例のヒットを記録した『シーマン』が誕生した。

画像は当該映像よりキャプチャしたもの

こういったコアなタイトルを世に送り出し人気を獲得していたドリームキャストだが、2001年1月セガはドリームキャストの生産中止を発表する。発売からわずか3年足らずでの生産終了は、ゲームハード戦争における事実上の敗北宣言だ。しかしこの状況を『SGGG』(セガガガ)開発者の岡野哲氏は追い風だと感じたようだ。『SGGG』は当時のゲーム業界やゲームハード戦争をネタにしたメタフィクショナルな作品。追い込まれた状況にあったセガを自虐的に扱ったネタが多い。ドリキャス生産中止の報によって当時開発中であった『SGGG』が一気に注目されることとなる。上の階で作られていた『シェンムー』を意識していた岡野氏。「シェンムーの百分の一の予算で作る」とそう企画書で謳われていた『SGGG』だが、その予算規模からは考えられないような注目を浴びる結果となった。

動画の中で語られている制作秘話は、当時を知る人にとっては懐かしくまた裏話満載であり、当時を知らない人にとってはあの頃のセガハードの雰囲気を感じ取れるよい内容となっている。あの当時、ドリームキャストは確かに異彩を放っていた。さまざまなタイトルとともに夢を届けてくれたドリームキャスト。しかしその夢はなぜ終わってしまったのか? それについてはPart 2(後編)にて語られるとのこと。なお、Part 2も7月7日に公開されているので、ぜひ視聴してみてほしい。
【UPDATE 2019/7/8 7:30】
Part 2について追記

Yoshinori Sato
Yoshinori Sato

生産、管理、最適化。そういった要素が楽しめる都市育成ゲームや経営ゲームを好んで貪るゲームプレイヤー。サバイバル要素も気になります。

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