EA Originalsはなぜ全利益をデベロッパーに還元するのか。ストリーミングやサブスクリプション型のビジネスモデル拡大を見据えた投資

Electronic Arts(以下、EA)のインディースタジオ支援プログラムEA Originals。これまでに『Unravel』『Unravel Two』『Fe』といったかわいらしい3Dアクションゲームや、Co-op必須というコンセプトで勝負しナラティブ面で高評価を獲得した『A Way Out』を配信しており、7月5日には怪物化した少女が水没都市を旅する『Sea of Solitude』の発売を控えている(関連記事)。では、大型タイトルを主力としているEAは、なぜインディースタジオの支援に力を入れているのだろうか。

EAは、自社タイトルのビジネスモデルやマイクロトランザクションの仕組みについてプレイヤーから指摘を受けることが多く、なにかと悪評がつきまとう大手パブリッシャーである。最近では英国議会の口頭試問にて、同社の『FIFA』シリーズが扱っているカードパックなどはルートボックスではなく「サプライズメカニック」であると主張し話題となった。同社のゲーム・クライアント「Origin」については、現在は修正済みながら、深刻な脆弱性を抱えている状態であったと先日報じられたばかりだ(GlobeNewswire)。

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『Fe』

Visceral GamesやMythic Entertainmentなど、EA傘下のスタジオが閉鎖される事例も多く、対ユーザーだけでなく対デベロッパー/従業員のイメージも芳しくはない。2019年3月には350人規模のレイオフも発表された。そんな中、インディースタジオを支援するEA Originalsに関しては、かなりクリーンな印象を保っている。公式サイトには「EA Originalsゲームの全収益を開発スタジオに還元しています」と記載されており、『A Way Out』のディレクターであるJosef Fares氏も2018年のインタビューにて同様のことを伝えている(TheSixthAxis)。

「本作の契約上、EAは1ドル足りともお金を受け取っていないんだ。すべてデベロッパーの手に渡るようになっている。それなのにしっかりとサポートしてもらえたよ。私たちのビジョンに口を挟むこともなく――そんなこと私が許さないんだけど――最後までとても協力的だった。」

『A Way Out』

そしてあらたに、EAの成長戦略分野におけるエグゼクティブ・ヴァイスプレジデントMatt Bilbey氏がGamesIndustry.bizのインタビューに応じ、直接には利益を生み出さないにも関わらずEA Originalsを運用している理由に触れている。なお収益分配については、厳密には費用をカバーできるだけの金額はEA側で確保しているとのこと。利益部分は全てデベロッパーに渡るようにしている。それでもかなりデベロッパー有利な条件であることに変わりはない。現在EA Originalsタイトルとしてゲームを開発しているGlowmadeのテクニカル・リードJonny Hopper氏は、EAから送られてきた契約書の内容に目を疑ったという。

もちろん、EAは民間企業であり、完全なボランティア精神でEA Originalsを続けているわけではない。「企業として成長するにつれて、新しい才能の台頭についていけなくなっているのではないかという懸念が生じたのです」。そう語るBilbey氏はEA Originalsについて、「そうした才能ある人々や小規模のアイデアと繋がる機会」であると説明している。ではなぜ、そうした小規模なアイデアを取り入れる必要があるのか。「サブスクリプションビジネスを続ける中で、ゲーマーは『FIFA』や『フォートナイト』などをメインタイトルとして遊びつつ、箸休めとして5〜10時間で終わるゲームも遊びたがっていると学んだのです」。

『Unravel Two』

ポートフォリオの幅を広げることで、同社のサブスクリプションサービスEA AccessやOrigin Accessの価値が高まる。一定の利益を手放してでもEA Originalsに投資する価値はあると判断しているのだろう。またBilbey氏は、同社が扱っているサブスクリプションサービス、そして再熱しつつあるゲームのストリーミングプレイに言及し、それらが魅力的なビジネスモデルになる上では、業界として大小問わず、より多くのタイトルが求められるとも述べている。「私たちはNetflixやほかのサービスから、家族みんなで使えることに真の価値があると学びました」。そうした観点からも、幅広いジャンルのゲームを取り扱うことが好ましいというわけだ。

そしてEA Access/Origin Accessのラインナップに含められるデベロッパーには、ユーザーが同サービスをどのように利用しているのか、どれくらい遊ばれているのか、各種データを共有しているという。EA Originalsを利用するデベロッパーとしては、パブリッシングサポートはもちろんのこと、今後も広まっていくと考えられるサブスクリプションやストリーミング型のビジネスモデルの仕組みを学ぶ機会となり、それが支援プログラムを利用するインセンティブのひとつになっている。

『Sea of Solitude』

またBilbey氏は、「ライブサービスの少額課金、F2Pモデル、ターゲット層や協力相手、アニメーション用のエンジンなど、さまざまな分野にて成功と失敗を経験してきた大企業に勤めていると……EA Originalsのデベロッパーたちと話して、ちゃんとしたアドバイスを送れるというのは、担当チームにとって嬉しいことなのです。同じ過ちを犯さないためのアドバイスです」と、満足度の高い業務であることを伝えている。

ここ1年の間には多くのデベロッパーからアプローチされており、取り扱いタイトルを増やしていけるよう対応を進めているという。デベロッパーの相談役となる顧問として、『タイタンフォール』『Apex Legends』で知られるRespawn EntertainmentのCEO Vince Zampella氏が中心となり、いくつかのスタジオと調整を進めているとのことだ。

なおEAが消費者から悪者として見られがちな点についてMatt Bilbey氏は「EAに入社して25年になりますが、いまだに“EAは悪者”という世間の認識に悩まされています」と語り、「残念ながら規模の大きさもあり、私たちのゲームで何か過ちを犯すと世界中の人に知れ渡っていきます」と自身の見解を述べている。ブランドイメージを崩さないため、という意図もあり、EA Originalsタイトルをむやみに量産することはないという。

EA Originalsの今後の動向としては、まず先述したJo-Mei Games開発の『Sea of Solitude』が7月5日に発売される。その後は『Fe』のZoink Gamesの新作『Lost in Random』、『A Way Out』のHazelight Studiosの未発表新作、英国Glowmadeの『RustHeart』という3作品がPC/コンソール向けにリリースされる予定だ。

『Lost in Random』は個性的なパズルと格闘パートが特徴のファンタジーアクションゲーム。『RustHeart』は主人公と自作ロボットとの友情が描かれるGlowmadeのデビュー作で、Hazelight Studiosの未発表新作は同スタジオが手がけた『A Way Out』のような協力プレイを軸にした作品になるという。

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