ホラーゲーム『還願』を売っていた中国パブリッシャーが、営業停止処分を受ける。当局が『還願』販売を「国家の安全を害する行為」と認定

パブリッシャーのIndievent(上海橘喵)が、ビジネスライセンスを剥奪され事実上の営業停止処分を受けたことが、Gamebaseなど台湾メディアより一斉に報じられている。上海市工商行政管理局にも、その告知が掲示されている。どうやら6月17日付で処分されたようだ。国家の安全を害するという罪に問われており、その国家の安全を害するという行為は、Steamで『還願 Devotion』(以下、還願)を販売したことに起因しているのである。

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『還願』は、今年2月に発売されたホラーゲーム。台湾の新進気鋭のゲームスタジオRed Candle Gamesが手がけている。学校という場所を中心に台湾の歴史を描いた『返校 -Detention-』の路線を引き継ぎつつ、今度は家庭をテーマとし80年台の華やかで暗い台湾家族を描写した。2Dから3Dへと変化したが、じんわりと襲いかかる「不安」を煽る精神的な恐怖は健在。宗教や文化を絡ませながら、悲しい物語を描ききった作品である。発売後は、ボリュームは短いながら、全世界から非常に高い評価を獲得し上々の滑り出しを見せていた。“とあるもの”が発見されるまでは。とあるものとは、「習近平くまのプーさん」と書かれているポスターである。ゲーム内に飾られている符呪と呼ばれる張り紙に、「習近平くまのプーさん」と記されていることが確認され、さらに符呪の周りにある四文字が、語呂合わせで「お前の母ちゃんはアホ」と読み取れるものになっていた。

中国の習近平国家主席は、2013年にオバマ大統領と共に歩いていた画像が「くまのプーさんとティガーが歩いているようだ」と比喩されたことから、国内では侮辱ともとれるこの「くまのプーさん」が禁句となっている。“国を背負って立つ、完璧であるはずの国家主席”をくまのプーさん呼ばわりし、さらに「お前の母ちゃんはアホ」と言葉がそえられている。中国主席および中国への侮辱だと認識したユーザーらが、『還願』および開発元を激しくバッシングし始めた(関連記事)。

『還願』は、一部中国ユーザーから台湾のスタジオ産ながら“中国国産の新作”と期待を寄せられていたことや、“台湾”という複雑な立ち位置にあるスタジオから批判めいたメッセージを受け取ったことにより、反発の声は強くなるばかり。各種SNSやWebページの運営会社は『還願』およびそれにともなうコンテンツを“なかったもの”かのように消し去る自主規制を断行した。大きな騒ぎに発展しており、IndieventもWinking Entertainmentとともに問題発覚後すぐに『還願』のパブリッシング契約を解消したが、Indieventは中国国内で同作をリリースしたという罪および監督責任が問われていたようだ。
【UPDATE 2019/7/2 10:50】
習近平主席にまつわる表現を変更し、『還願』の立ち位置をより適切に記述。

上海市工商行政管理局によると、Indieventは法律や規則に禁止されているコンテンツを含む『還願』というゲームをリリースし、国の安全を害したという罪に問われているそうだ。5月より尋問が始まっていたが同社は反応しておらず、当局はこれを権利放棄とみなし、営業停止という処分を下している。

『還願』の騒動があったのち、Red Candle Gamesは同作をSteamストアから取り下げた。まず騒動を謝罪し、技術的な問題やクラッシュ、それ以外のものを含めたさまざまな理由により、QAチェックをするため『還願』をストアページから取り下げたと表明。ほか、符呪以外にも攻撃的なアセットが存在しないか確認し、プレイヤーが「ゲームに集中できる」状態で戻したいとしていた。一時的な販売停止かと思われたが、7月2日現在もまだ販売再開されてない。販売停止期間の長さは、この問題の根深さを物語っているといえる。

なお、『還願』の騒動によって企業やサービス側が、政府からペナルティを受けないように厳しい自主規制を敷いてきたが、政府/当局側が直接『還願』関係者を罰するのはこれが初のようだ。営業停止は厳しい処分に見えるものの、「国家の安全を害するという罪」の中では比較的軽い処分なのだという。ある種の見せしめの意図があるのかもしれない。高評価を得たにもかかわらず、長期の販売停止により幻のゲームとなりつつある『還願』。Red Candle Gamesの自信作が、Steamで販売再開される日はやってくるのだろうか。

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