『ポケモンGO』のNianticが、チートツール開発者を知的財産権侵害で提訴。改造アプリ「PokeGo++」などが配布終了へ
モバイル向けアプリケーションを開発するNianticがハッキングツール開発者のグループ「Global++」に対し、訴訟を起こしたことを海外メディアBusiness Insiderなどが報じた。同グループはNianticが提供するARゲーム『Pokémon Go』ならびに『Ingress』のシステムを改変したバージョンである「PokeGo++」、「Ingress++」などの無料配布を行っていた。また、無料版からさらに機能を追加した有料版(サブスクリプション)も配布されていた。なお現在Global++の公式ウェブサイトおよびDiscordサーバーは削除され、配布サービスの終了を発表している。
Global++から配布されていたアプリケーションは本来のゲームシステムから大きくかけ離れたものであった。GPS操作による位置偽装、自動歩行による不正なアイテム入手、テレポートの利用など、不正にゲームを有利に進めることができる、いわゆる“チートツール”と呼ばれるものである。今回の訴訟でNianticは、これらのツールがユーザーに不当な優位性を与えていると同時に、同社の知的財産権を侵害すると述べている。また、健全に遊ぶプレイヤーのゲーム体験や意欲を損ない、自社が提供するゲームからプレイヤーを引き離す可能性があるとも主張している。さらに冒頭にも述べたとおり、Global++は無料配布のほかに、サブスクリプション形式による有料版の販売も行っていた。Nianticは同グループがこういった形で何十万ものユーザーにツールを配布することにより、利益を得ていると言及。
これはオリジナル版を開発するNianticに本来流れるべきお金が、“改造版”を提供するGlobal++に流れていることを示しているようだ。一方Global++は配布した改造版はチートツールではなく「微調整バージョン」と主張。しかし実装されている機能は、ツールをダウンロードしたプレイヤーとそうでないプレイヤー間で不平等を生じさせるものであり、明らかに“微調整”の域を超えている。
Nianticは今回の訴訟でGlobal++のリーダーRyan“ElliotRobot”Huntおよび、YouTubeにてサービスの告知、宣伝に協力していたAlen“iOS n00b”Hundur、そのほか20人を対象に訴えを起こし、同グループに対する仮差止命令を申し立てた。この命令によりGlobal++は、改造したアプリの配布とNianticが作品に使用しているコードのリバースエンジニアリングを中止しなければいけない形となる。
今回Nianticが訴訟を起こした背景には、今年度同社からリリースされる『Harry Potter Wizards Unite(ハリー・ポッター:魔法同盟)』が関係しているようだ。どうやらGlobal++は同作の改造版である「Potter++」をすでに開発しているとSNSやYouTubeチャンネルを通じて宣伝していたようだ。こうした事態を踏まえ、看過できないと判断した結果、Nianticは今回訴訟に踏み切ったと考えられる。実際にNianticは「Potter++」に対し「『ハリー・ポッター:魔法同盟』の立ち上げを複数年、数百万ドルの投資の集大成と考えているが、その成功がGlobal++の違法行為によって脅かされている」と考えを示している。
本来多くのプレイヤーに楽しんでもらうことを目指す作品が、今回のような形で不利益を被ることは大変不服なことと思われる。昨今、一部の悪質な業者・プレイヤーによる不正行為はよく話題に上るが、そうした行為は企業を傷つけ、プレイヤーからプレイの楽しさを奪うという行為にほかならないということを忘れてはいけない。今回の事態が周知され、少しでも不正行為の抑止力となることを願う。