UbisoftのE3カンファレンスに現れた犬。ジョン・バーンサルはなぜゲームと無関係のピットブルを連れてきたのか

UbisoftのE3カンファレンスに現れた犬。『ゴーストリコン ブレイクポイント』の紹介のため登壇したジョン・バーンサルは、なぜゲームと無関係のピットブルを連れてきたのだろうか。

E3 2019にあわせて開催されたUbisoftのE3カンファレンスでは、『ゴーストリコン ブレイクポイント』の新映像が公開されるとともに、今年9月のベータテスト実施(製品版発売日は10月4日)およびローンチ後の計画として、ソロプレイ時のAIチームメイト実装がアナウンスされた。

そして同カンファレンスでは、敵対組織「ウルブズ」のリーダー「コール・デンホルム・ウォーカー」を演じる俳優ジョン・バーンサルが登壇した。ウォーカーおよびウルブズを紹介するために登壇したわけだが、ゲームとは全く関係のないピットブル(Lil Bam Bam Bernthal)をステージに連れてきたことを不思議に思った方もいるだろう。従順なBam Bamはバーンサルの「おすわり」という指示に従い、主人の出番中、会場をキョロキョロと見渡しながらも静かに佇んでいた。

※Ubisoft E3 Conference ジョン・バーンサル登壇は2:05~

今年のE3では、『サイバーパンク2077』への出演(主人公のコンパニオンキャラクター「ジョニー・シルヴァ―ハンド」役)が発表されたキアヌ・リーブスが、マイクロソフトのカンファレンスに登場し話題を呼んだが(関連記事)、ジョンバーンサルも今をときめく旬な俳優のひとりである。最近ではドラマ版「ウォーキング・デッド」のシェーン役、「Marvel パニッシャー」の主人公フランク・キャッスル役で知られる俳優だ。大切な人を守るため、あるいは自らの正義執行のためには手段を選ばない、タフなキャラクターを演じてきた。

そうしたタフガイを演じるバーンサルは、私生活では動物愛好家として知られている。バーンサルはBam Bam、Boss、Veniceという3匹のピットブルを保護し、愛犬として飼っている。Instagramでも愛犬と一緒に写った写真を頻繁に投稿。「This Week in The Walking Dead」ではBossとVeniceを連れてインタビューに応じたりと、仕事現場にも連れていくことがある。

https://www.instagram.com/p/BWNkdHSF6p3/?hl=en

※2017年当時のLil Bam Bam Bernthal

バーンサルは俳優業だけでなく、非営利団体「Drops Fill Buckets」の設立者、ピットブルの保護団体「Animal Farm Foundation」のスポークスパーソンとしても活動している。ピットブルの保護・啓蒙活動はバーンサルが特に力を入れている分野。背景として、米国や欧州国ではアメリカン・ピットブル・テリアやスタッフォードシャー・ブル・テリアといった特定の品種を対象とした法的規制(Breed Specific Legistration)が広まっている。飼育禁止や避妊/去勢手術必須化など、規制内容は地域によって異なるが、ピットブルによる死傷事件が相次いだことから、欧米国にて規制が進んでいるのだ。バーンサルが住むカリフォルニア州も例外ではない。

ピットブルは闘犬用に改良された品種ということもあり、攻撃的な側面を持つものの、本来は人間になつきやすい性格の持ち主。バーンサルのように愛情と責任を持って飼っているオーナーも多く、「Animal Farm Foundation」は法的規制により差別的な扱いを受けることに異議を唱えている。バーンサル個人としても、「ピットブルに対する人々の認識を変えるために尽力している」とインタビューにて度々発信。父Eric Bernthalは動物愛護団体「The Humane Society of the United States」の委員長であり、父子そろって動物愛護精神の強い家族であることがうかがえる。

バーンサルはE3のステージ上で、「犬のBam Bamです」と観客に向かって紹介こそしたものの、それ以外はBam Bamおよび動物愛護、ピットブルオーナーとしての取り組みについては一切触れていない。ただステージに愛犬を連れてきて、飼い主のそばで静かにおすわりしているBam Bamの様子をそれとなく見せただけだ。激しく主張することなく、イベントの本題から逸れることなく、静かにメッセージを発していたのではないだろうか。

なお『ゴーストリコン ブレイクポイント』にてバーンサルは、ゴースト部隊の元リーダーであるウォーカーを演じている。社会のルールやモラルにとらわれず、己の任務遂行のためには手段を選ばない男だ。そんなウォーカーは、長年忠誠を誓ってきたゴースト部隊を裏切り、元ゴースト部隊を集めた「ウルブズ」を率いて、本作の舞台アウロア島を占拠。アウロア島は米国のテック企業スケルテクノロジー社の拠点であり、ウルブズはその最新技術を手中に収めたのだ。ゴースト部隊として米国のために戦ってきた彼が、なぜ犯罪組織を率いるようになったのか。ウォーカーの動機は、本作の物語上重要な謎のひとつとなっている。

バーンサル自身、葛藤を抱いたキャラクターというのは、仕事を受ける上では常に求めている点であり、ウォーカーのようなキャラクターを演じる機会を得られたことを光栄に思うと語っている。『ゴーストリコン ワイルドランズ』の主人公ノマドがかつての同胞と対峙する続編『ゴーストリコン ブレイクポイント』は10月4日発売予定。

Ryuki Ishii
Ryuki Ishii

元・日本版AUTOMATON編集者、英語版AUTOMATON(AUTOMATON WEST)責任者(~2023年5月まで)

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