イギリスのヘビーメタルバンド「Iron Maiden(アイアン・メイデン)」の持ち株会社であるIron Maiden Holdingsが商標権侵害をめぐって、ゲームパブリッシャーの3D Realmsを訴訟ならびに200万ドルを要求していると、海外メディアを中心に報じられている。
3D Realmsは往年のFPS『Duke Nukem』シリーズなどの開発を手がけてきたパブリッシャー。昨年の2月にはSteam向けに『Duke Nukem』と同じBuild Engineを使用したFPS『Ion Maiden』を早期アクセスリリースした。古き良きスタイルのFPSを踏襲しており、ゲームイベントPAX East 2018にてWRITERS CHOICE AWARDで一位に輝くなど、好評を博す作品となった。もっともこの『Ion Maiden』が、Iron Maiden Holdingsから訴訟を提起される原因となってしまう。
バンドのIron Maidenについても説明しておこう。「Iron Maiden」はイングランド出身のヘビーメタルバンド。1975年に結成され、幾たびものメンバーチェンジを経つつ現在も精力的に活動を行っている。今回の事態に関して海外メディアDaily BeastとBlabbermouthの報告によると、訴訟の争点は大きく三つあるようだ。
ひとつめは、自社が抱えるバンド「Iron Maiden」というバンド名と、3D Realmsが開発する『Ion Maiden』というタイトルが酷似しているという点である。この点に関して原告は、3DRealmsに対し「消費者間の混乱を招きかねない、“驚くほど露骨な”商標権侵害を行っている 」と主張している。これは、『Ion Maiden』が、「Iron Maiden」と何らかのつながりを持っていると消費者に勘違いをさせてしまうのではないかといった原告側の懸念である。
2つめは、3D Realmsが行っている『Ion Maiden』の名称を用いたマウスパッドやポスターなどのグッズ販売が、「Iron Maiden」が販売するグッズにまで影響が及ぼされるのではないかといった主張である。この点に関して原告は、「Iron Maiden」を象徴するシャツを20年近く販売しており、Ion Meidenのグッズを検索した人々が、名称の酷似から「Iron Maiden」のグッズ販売にたどり着いてしまう可能性があるため、混乱は否めないだろうと述べている。
3つめは、原告が過去にリリースしたモバイル向けゲーム『Iron Maiden ビースト レガシー』の存在である。これは『Iron Maiden ビースト レガシー』と『Ion Maiden』との間に、何らかの関わりがあるという混乱を招いてしまうのではないかといった主張である。この点に関して原告は、実際に消費者が混乱したケースを挙げた。
その内容とは、『Ion Maiden』に関するオンラインスレッド内で、『Ion Maiden』を「Iron Maiden」に関連するゲームと思い込んでいたユーザーがいたというもの。さらにスレッドには勘違いしたユーザーから、このゲームには「Iron Maiden」のサウンドトラックが欠けているといった旨のコメントも寄せられていたようだ。さらに他にも、『Ion Maiden』の主人公の名前であるSherry Harrisonは「Iron Maiden」創設者の名前Steve Harrisからコピーしているといった主張や、「Iron Maiden」の商標に用いられている「steelcut」というフォントが勝手に用いられているという非難も含まれた。
以上の理由から冒頭にも述べた通り、バンドの持ち株会社であるIron Maiden Holdingsは3DRealmsに対し200万ドルの要求をしている。また、『Ion Maiden』のウェブサイトの辞任または譲渡も要求しているという。ゲームをめぐっての商標権、著作権のトラブルは今までにも何度か起こっているが、今回の事態に関しては、共通点において曖昧なポイントも多く、明らかな“パクリ”というわけではなさそうだ。双方にとってベストな解決策が見つかることを祈るばかりである。