ユニクロの「ポケモンTシャツ」グランプリ2作品が規定違反により受賞取り消し。理由は“デザインの使い回し”

ユニクロは5月23日、プレスリリースを通じて、「ポケモン」とコラボレーションしたデザインコンペティション「UT GRAND PRIX 2019」でグランプリを受賞した作品および入賞した作品の受賞を取り消すと発表した。今回の背景には、何があったのだろうか。

ユニクロは5月23日、プレスリリースを通じて、「ポケモン」とコラボレーションしたデザインコンペティション「UT GRAND PRIX 2019」でグランプリを受賞した作品および入賞した作品の受賞を取り消すと発表した。具体的には、大賞となるGRAND PRIZEを受賞したLi Wen Pei氏によるギャラドスが描かれたデザインと、AJ Hateley氏によるミュウツーのデザインに応募規定違反があったという。このデザインの受賞は無効となり、GRAND PRIZEは空席に。副賞の授与取り消し、および予定していた2作品の販売は中止されることになる。

「UT GRAND PRIX」は、毎年ユニクロが実施しているコンペ。デザインを公募しその中から審査員チームが認めたものが、実際に全国のユニクロ店舗及びオンラインストアで発売される。2019年のテーマは「ポケモン」となっており、過去最多の1万8000点を超える応募から、24作品が選ばれている。選ばれたTシャツは『ポケットモンスター ソード・シールド』に着せ替えアイテムとして登場するなど、大型企画として進行されていた。

なぜLi Wen Pei氏のギャラドスデザインは受賞取り消しになったのだろうか。実は「UT GRAND PRIX 2019」が発表されてから、氏の住まう中国のSNSがざわついていた。というのも、実はこのギャラドスのデザインのTシャツは“もともと存在していた”のだ。これはPei氏が盗作したことを意味するのではない。中国に住まう氏は、すでに数年前から今回のギャラドスのデザインを考案しており、2017年7月にスマートフォンケースとして約3000円程度で、“私的”に販売していたことが確認されている。本人はWeiboでのデザインに関する投稿を削除したものの、そのことを認めているという。またTシャツもタオバオで販売していた(日本円で約1700円)ことも報告されていたが、こちらは盗用され勝手に商品化されたものだと主張している。Weiboでこの件が議論されたのち、台湾のゲームメディア巴哈姆特 (バハムート)が報じ、全世界に拡散されていった。

販売されたTシャツが盗作であったかどうか定かではないが、少なくとも「UT GRAND PRIX 2019」の応募規定には「ご応募いただく作品は、応募者ご本人の著作による未発表のオリジナル作品に限ります。」と定められており、このレギュレーションに違反している。そうした経緯もあり、今回のGRAND PRIZEの受賞が取り消しになったのだろう。結果的には、既存のデザインを使いまわしたことが、規定に引っかかってしまったわけだ。

Image Credit : 巴哈姆特

ちなみに、AJ Hateley氏のミュウツーデザインについては、Hateley氏は姉妹とみられるLucy Hateley氏とともに、イギリスにてゲームを取り扱うグッズショップGameteeを運営しているようだ。デザイナーである氏はTumblrでデザインを公開しているほか、同ショップでミュウツーのデザインのTシャツを販売していたようだ。Pei氏と同じく、市場に出ていることによる規定違反が有力だろう。ユニクロは今回取り消し処分を下したことに際して、「グランプリ受賞者や入賞者を応援されていた皆様や販売を心待ちにされていたお客様、関係者の皆様には深くお詫び申し上げます。今後、同様の事象が発生しないよう、確認の徹底に努めてまいります。」と謝罪している。
【UPDATE 2019/5/23 18:25】
AJ Hateley氏の規定違反理由について、詳細を追記しました。(情報提供:51M4Um4氏)

中国のインターネットには、グレートファイアウォール(もしくは金盾)と呼ばれるフィルタリングがなされており、世界のネットワークとはやや異なる立ち位置にある。たとえばGoogleで検索しても出てこない中国の情報が、Weiboならば発見できるということはままあることだ。そうしたネットワークの特殊性および広大さが、今回の悲劇の背景には存在しているだろう。かわいらしいポケモンTシャツのラインナップから、ひとつの作品が消えたことは残念であるが、そのほかの素敵な作品に目を向けてみるのもいいかもしれない。

Ayuo Kawase
Ayuo Kawase

国内外全般ニュースを担当。コミュニティが好きです。コミュニティが生み出す文化はもっと好きです。AUTOMATON編集長(Editor-in-chief)

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