「名探偵ピカチュウ」が北米でビデオゲーム原作の映画史上最高のスタートを切る。ベロリンガはぎりぎりのベトベト具合

海外メディアVarietyなどによると「名探偵ピカチュウ」は公開初週となる週末の北米興行収入で、公開3週目の「アベンジャーズ エンドゲーム」に続く2位を記録した。週末の北米興行収入は5800万ドルで、ビデオゲームの実写映画化史上最高のスタートを切ったことになる。これまでのビデオゲーム原作映画における北米での初週興行収入1位は、アンジェリーナ・ジョリー主演の「トゥームレイダー(Lara Croft:Tomb Raider)」で4773万ドルだった。

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日本でもヒット

最高のスタートを切った「名探偵ピカチュウ」だが、映画.comによると先行公開された日本でも「名探偵コナン 紺青の拳(フィスト)」、「アベンジャーズ エンドゲーム」につづく3位となっている。土日2日間で動員31万7000人を動員するなど好調だ。奇しくも名探偵対決となった日本だが、Googleのサジェスト機能で“名探偵”と入力した際に、連載開始25周年のベテラン子ども探偵を差し置いて「名探偵ピカチュウ」が上位に表示されることもあるなど、探偵としての知名度でもコナン君に迫りつつある。ちなみに我らがピカチュウ氏は誕生から23周年で、わずかに少年探偵より若い。

筆者の家族もさっそく先日、つれだって劇場へでかけた。チケットを予約する際に劇場で流れる予告編に「アベンジャーズ」のネタバレを含むことを警告してくれるなど、劇場のこまかい配慮に感心した。ちなみに劇場版ポケモンでは恒例のポケモン配布はなかった。『Pokémon GO』の特別なポケモンがいたりしないかと思ったが、とくにそういうサービスはないようだ。

映画を観た子どもたちは「街の住人として登場するポケモンがたくさんいること」や、「細かいポケモンジョーク」があること、「吹き替えの声優にアニメ版の声優が登場している」ことなどが面白かったとのこと。街の政策としてポケモンを捕まえたり戦わせることが禁止されている世界観のおかげで動物虐待が禁止された現実の世界に近く、実写であっても感情移入もしやすかったようだ。

 

あまりヒット作のなかったゲームの実写化

先に挙げた「アベンジャーズ」シリーズをはじめ、アニメやコミックの実写化には日本よりも実績のあるハリウッドだが、じつはゲームの実写化となるとヒット作といえるものは数少ない。今回記録を抜かれた「トゥームレイダー 」でさえ総興行収入は2億7470万ドルである。ちなみにゲーム原作の実写映画で最高興行収入は「ウォークラフト」の4億3367万ドル。つづいて2位は「プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂」の3億3636万ドル、3位が「バイオハザードIV アフターライフ」の2億9622万ドルとなっている。

一見するとどれもヒットしているようにみえるが、アメコミの実写化と比較してみると、サム・ライミ監督版の「スパイダーマン」の興行収入が8億2170万ドル、バットマンの「ダークナイト ライジング」が10億8493万ドル、「アイアンマン3」が12億1481万ドルとなっている。現在公開中の「アベンジャーズ エンドゲーム」などは最終的にどれほど稼ぎ出すか想像もつかない。ゲームの実写化は、まだまだ成功しているとは言い難いのが現実だ。くわえてゲームの実写化には微妙な作品が多い。「アサシン クリード」や「ヒットマン」、「ニード・フォー・スピード」などはいいのだが、いまでも実写化失敗の代名詞になっている「DOOM」や、ジャン=クロード・ヴァン・ダムやカイリー・ミノーグの怪演が光る「ストリートファイター」、ツッコミどころしかない「スーパーマリオ 魔界帝国の女神」など、惨憺たる評価の作品も多い。また、ゲームの実写化の場合「Dead Rising: Watchtower」のように映画版の存在をほとんど知られていない作品もある。

 

株式会社ポケモンによるクオリティ・コントロール

ゲームの実写化がなぜ成功しないのかについては、さまざまな理由があると思われる。よくいわれる代表的な意見としては「グラフィックが進化したために、実写化のインパクトがない」ことや「原作をないがしろにしている」といったものが挙げられるだろう。特に「主人公や設定がちがう」といった原作へのリスペクトを欠くケースは深刻だ。アニメや漫画作品の実写化にも同様の問題が存在するが、それらのメディアとちがって、ゲームの場合「ムービーはスキップする」というプレイヤーも一定数存在し、必ずしも“ストーリー”を楽しんでいるプレイヤーばかりではないと思われているのが、原作軽視につながっているのかもしれない。

翻って考えると「名探偵ピカチュウ」が好調な秘密も、そのあたりにあるのかもしれない。Forbes JAPANによれば「名探偵ピカチュウ」はレジェンダリー・ピクチャーズと契約を結んだ株式会社ポケモンによって、しっかりとしたクオリティ・コントロールが行われているという。製作総指揮にも、ポケモン代表取締役社長の石原恒和氏の名前がしっかりとクレジットされている。

TIMEのインタビューによると、実際にベロリンガが俳優を舐めるシーンについても株式会社ポケモンと製作スタッフの間で監修のやり取りが交わされたという。製作側はベロリンガの舌をつくる際、ラテックスの大きな塊で舌をつくり、偽の唾液で覆った。本物感を出すためには舌はベトベトの液体で覆われているべき、という意図だったようだが、株式会社ポケモンはそれを「汚い」と感じて嫌ったという。視覚効果監督を努めたErik Nordby氏は「(ベロリンガのシーンが)株式会社ポケモンのお気に入りのシーンではない」ことを認めつつ、そのシーンが株式会社ポケモンが許容してくれる限界だったと語っている。映画が完成するまでには、こういった細かいやり取りが無数に交わされたにちがいない。

原作ファンが見ると「キャラの性格がちがう」とか「世界観がおかしい」となりがちな実写化だが、本作はそれらの細かい監修によって原作ファンにも“違和感なく”受け入れられたということだろう。「ポケモンジョーク」のようなゲーマーへの目配せがあることで、原作ファンにも「この作品は本物(オフィシャル)だ」と感じることができるのだ。

ちなみに北米におけるポケモンの最高初週興行収入は「Pokemon:The First Movie(劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲)」の3103万ドルで、「名探偵ピカチュウ」はすでにそれを大きく上回っている。これからどこまで記録が伸びるか期待したい。

「名探偵ピカチュウ」は現在、全国の劇場でロードショー中だ。

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