『Legal Dungeon』日本語に対応してSteamで配信開始。警部補として「供述」や「判例」などで戦う、ダークなリーガル・推理ADV

インディーゲームクリエイターSOMI氏は5月6日、『Legal Dungeon』をSteamにて配信開始した。『Legal Dungeon』は、警察官側の立場で判例や法令を用いて、起訴および不起訴を判断する「意見書」を作成するリーガル・アドベンチャーゲームだ。

インディーゲームクリエイターSOMI氏は5月6日、『Legal Dungeon』をSteamにて配信開始した。価格は720円で、日本語にも対応している。SOMI氏は、「他人のスマートフォン」を操作するアドベンチャー『Replica』を手がけた韓国人開発者だ。

本作は、警察官の立場から事件の調査にあたり、最終的にその事件に対する「意見書を提出」するというやや変わったアドベンチャーゲームである。すでに調査などは終わっており、プレイヤーがおこなうのは事実関係を整理し、ロジックを組みたて、被疑者を尋問し、最終的に起訴か不起訴かの意見書を出すことである。タイトルに「ダンジョン」という単語が入っているが、ダンジョンを探索するといったダンジョンゲームの要素はないので注意されたい。

『Legal Dungeon』の主人公となるのは、清崎蒼。新しく赴任された若手の課長(警部補)だ。配属された刑事二課にいる、ふたまわりも年上の巡査部長の原田准一や、正義感の強い渋川順平らと共に活動する。本作の進行はフローチャートで表示されている。原田や渋川らとの会話によって物語が進行していき、各事件の意見書提出をすることで、シナリオは大きく動いていく。

意見書提出は前述したように、警察側の意見を提出すること。最終的な起訴や不起訴は検察官がおこなうが、意見書の提出は事件の結末を大きく変える可能性を持つ。そのプロセスをプレイヤーが担う。意見書提出は、大きく2パートに分けられることができる。事実確認と事情聴取。事実確認は、事件の起きた時間や被害者などの情報を調書から汲み取り、意見書フォームに入力する作業。こちらは正解が決められており、調書から適切な情報をドラッグ&ドロップしていくのみ。

一方事情聴取は、これまで集めた情報で被疑者と対峙する。戦闘に近い形ということで、このパートにはちょっぴりRPG的演出が込められている。被疑者が要求する情報、もしくは反論する情報を、調書からドラッグ&ドロップして突きつける。情報は調書からのものだけでなく、供述や判例なども用いる。『逆転裁判』の裁判パートに近いといえるかもしれない。ただし、この事情聴取にはキャラクター性などは存在しないので、同じようなイメージをすると肩透かしを食らうだろう。ともかく、この事情聴取パートの展開によって立証が進められ、起訴か不起訴かの結論にたどり着くことになる。

裁判後は、成果と正確な法執行ランクという、ふたつのランクにより評価される。この世界では、点数稼ぎが極めて重要である。とにかく起訴してしまえば、成果ランクは上がる。意見提出所の結論と検察官・裁判官による最終判決が一致していれば、法執行ランクが上がる。成果を上げれば、尋問などでより多くのミスが許容されるし、シナリオ上での課の評価も高まっていく。しかし一方で起訴の意見提出をした際に、検察が起訴という判断をしなかったり、裁判官が無罪と判断してしまえば、正確な法執行ランクは下がる。どちらもFランクになってしまえば終了。本作においては、成果をあげ正確な法執行であると認定されても、真実とは異なる場合もある。慎重に意見書を作成するのだ。

本作はシステム自体がユニークであり難解であるか、一方でリーガル・アドベンチャーとして設定はかなり作り込まれている。というのも、ゲーム内には法令や判例が存在しており、それらも情報のひとつとして使用されるわけだが、これらは本作のために用意されたもの。ゲーム内の事件も、自殺幇助や死体遺棄、家庭内暴力など扱いが難しいものばかり。これらの法令および事件は、すべて韓国で実際に起こった事件をモチーフにしているという。

事情聴取パートには、体力が設定されており、数を打てばあたるわけではない。実際の法令を学ぶ必要はないが、膨大なゲーム内の資料などを読み込み、理解を深めて選択をしていかなければならない。意見書提出によって物語が分岐するシステムがとられており、プレイヤーが下した選択により、事件に関わる人々、そして被疑者たちの運命は大きく変化していく。点数稼ぎのプレッシャーを受ける課、陰謀にまみれた組織、霧に覆われた真実。敏腕若手警部補として抜擢されたプレイヤーである清崎は、どのような決断を下していくのか。

『Legal Dungeon』は、ゲームの描写を正確に読み取り、犯罪の構成要件や法令の概念を理解し、その中で選択を繰り返す。どの事件も一筋縄でいかないということもあり、推理アドベンチャーとしても難易度は高い方だろう。しかし前述した法令の作り込みから、先の見えない闇に覆われた物語、強い問題提起など、執念とも呼べるような強い思いが込められていることが感じられる作品である。『Replica』もユニークな作品であったが、前作を上回る熱量で開発された本作。お値段も手頃ということで、この手のアドベンチャーゲームを好む方は、ぜび意見書の提出に挑戦してみるといいだろう。

Ayuo Kawase
Ayuo Kawase

国内外全般ニュースを担当。コミュニティが好きです。コミュニティが生み出す文化はもっと好きです。AUTOMATON編集長(Editor-in-chief)

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