欧米で発売されたNintendo Switchゲームが突然配信停止。原因はプログラミング言語「Ruby」に関するイースターエッグ
パブリッシャーのCIRCLE Entertainmentは4月12日、『A Dark Room』のNintendo Switch版を欧米で発売した。本作は、Michael Townsend氏が手がけた同名のテキストアドベンチャーゲームの移植版だ。デベロッパーのAmir Rajan氏はiOS/Android版にて成功を収めたのち、Ryan Gordon氏と共にNintendo Switchへの移植をおこなった。しかし、本作は配信開始から程なくして、任天堂によりニンテンドーeショップから取り下げられてしまった。その原因は、本作に隠されたイースターエッグにあったという。
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Nintendo Switch版『A Dark Room』の発売からおよそ2週間が経った4月25日、Amir Rajan氏は“クレイジーな発表がある“と自身のMastodonアカウントを通じて投稿。その内容は、本作にはイースターエッグとして、オープンソース・プログラミング言語「Ruby」のインタプリタとコードエディタが仕込まれているというものだった。本作を起動し、Nintendo Switch本体にUSBキーボードを接続して「〜(チルダ)」キーを押すと、その機能が有効になりRubyのコードを実行できるようになるという。Rajan氏は、家庭用のNintendo Switchを事実上のRubyマシンに変えることができると誇らしげに語り、実際に動作させる映像も投稿している。
Rajan氏はもともとRubyを扱う開発者で、本作もロジック部分はRubyにていちから作り直したという。また、今年4月18日から20日にかけて福岡県で開催されたRubyのコミュニティイベント「RubyKaigi 2019」では、Rajan氏は本作の開発過程について講演をおこなっている。海外メディアEurogamerのインタビューに答えたRajan氏は、コーディングの楽しさを子供たちに知ってもらいたかったと、『A Dark Room』にRubyのコードエディタなどを仕込んだ理由について語っている。しかし、そのイースターエッグの存在を明かした数日後、任天堂は『A Dark Room』をストアから削除した。
Rajan氏によると、本作に仕込んだRubyのコードエディタはごくシンプルな仕様で、線やラベルを描いたり、『A Dark Room』に収録された音を鳴らしたり、あるいはJoy-Conのボタン入力を認識できる程度とのこと。開発終盤にひらめいてひとりで実装したそうで、本作のようなテキストベースのアプリなら開発し実行できるだろうとしている。しかしコミュニティからは、Nintendo Switch本体のハックに悪用されるのではないかと批判の声があがることとなった。おそらく任天堂も、そうした懸念から本作を取り下げたものと考えられる。
Rajan氏は、限定的な仕様のコーディング環境を重大なエクスプロイトだとセンセーショナルに取り上げられることについては納得がいっていない部分はあるとしながら、こうした騒ぎを引き起こしてしまい深く後悔しているとし、申し訳ないというほかないと述べている。
『A Dark Room』にRubyのコードエディタが仕込まれていることは、販売元のCIRCLE Entertainmentは騒ぎになって初めて知ったそうだが、こうした状況により販売停止となったことで同じく謝罪する声明を出している。本作の今後については任天堂と協議中とのことで、販売再開を目指すのかを含め具体的な計画はまだ示していない。本作は英語と日本語に対応しており、数週間後には日本でも発売予定となっていたが、そちらも不透明な状況だ。もし国内発売されても、このイースターエッグは削除されることになるだろう。