架空のファンタジー世界地図の作成を補助してくれる「Wonderdraft」発売中。TRPGファンにも愛用されているツール


「指輪物語」、「ドラゴンライダー」、「氷と炎の歌」のような定番から児童文学の「エルマーとりゅう」に至るまで、ファンタジー小説のページをめくって最初に目に入ってくるのは舞台となる世界の地図であることが多い。読み進めて地名が出てくるたびに思わず地図を見直しているうちに、気が付いたら見知らぬ異世界の地理を覚えてしまうというのはファンタジーでしか味わえない「没入感」の仕掛けといえる。ゲームにおいても、『The Elder Scrolls V: Skyrim』のような広大なオープンフィールドから『The Witness』のこぢんまりとした島まで、『ACE COMBAT』シリーズのどことなく現実世界を連想させる「ストレンジリアル」世界から、『Civilization』シリーズや『RimWorld』のようなゲームが自動生成するマップまで、ファンタジーフィクションに欠かせない「地図」というのにはどこか人を惹き付ける不思議な魅力があるものだ。

Skyrimの全体マップ Credit:GAMEBANSHEE

しかし、実際に地図を作るのはクリエイター側からすると骨の折れる作業であるのも間違いないだろう。ゲーム製作においても、いくらゲーム内のオブジェクトとして世界の地形が完成していたところで、ファンタジーRPGで主人公が手にする地図が航空写真のようなシロモノであったら興醒めもいいところだ。「それっぽい地図」というのは需要があるが、設定構想やレベルデザインとはまた違ったグラフィッカー/イラストレーター的な技術が要求されるものである。「Wonderdraft」は、そんなクリエイターたちの悩みを解決してくれるかもしれないツールだ。PC Gamerなどが報じている。

「Wonderdraft」はMegasploot氏によって開発されているマップ生成ツールである。同じようなマップ生成ツールでは、大陸・海の形から山脈・川・都市の配置、そして国名や都市名まで全てランダム生成してくれるいわば「異世界ジェネレーター」のようなものもある。だが、「Wonderdraft」はどちらかというとマップに特化したドローイングツールといった方が近いだろう。大陸の形はある程度条件を指定した上で自動生成することができ、たとえば「羊皮紙の地図」に見えるような質感を出したり、地図を描くのにふさわしいブラシやアイコン、フォントプリセットを使用したりすることができる。地図作成に適した細かい機能は多岐に渡り、ドラッグするだけでいかにも自然な形で曲りくねった川を作ることもできれば、山脈や森林を配置した上でシンボルの密度や大きさを調整することもできる。デフォルトで用意されているシンボルの他にも、CartographyAssetsのようなサイトからユーザー製のシンボル、フレームやテーマを導入することも可能だ。

「Wonderdraft」のsubredditも存在し、こちらではユーザー達の自信作マップが日々投稿されている。「Wonderdraft」ではいわゆる世界地図だけではなく都市図のようなものも作成可能であり、実際にこのツールを使ってどういったマップが完成するか知りたい方は、このsubredditの投稿をざっと見てみるのもいいだろう。ちなみに、ユーザーが投稿するマップは『ダンジョンズ・アンド・ドラゴンズ』のようなファンタジー系TRPGに使用されるものが多いようだ。TRPGのゲームマスターをやる機会がある人や、ファンタジーベースのキャンペーンプレイを予定している人にもオススメできるツールであるだろう。

redditユーザーXammox氏による作品

「Wonderdraft」は公式ページにて29.99ドルにて販売中。Winタブレットやペンタブにも対応しており、開発に意欲的なMegasploot氏によって今後もアップデートで機能がどんどん追加されていく予定だ。物語の小道具としての「地図」を完成させたいクリエイターやTRPGプレイヤーの他にも、インスピレーションに沿って弄り倒して自分だけのファンタジーワールドを先に完成させ、そこから想像力を膨らせて物語に発展させるという使い方もできるだろう。いわゆる「異世界転生」ストーリーの出発点としても使えるかもしれない。ファンタジー愛好家は、ぜひ購入を考慮してみてはいかがだろうか。