前・米任天堂社長レジーの「イス」は安すぎた?もっと相応しいイスがあると考えたファンは、署名活動を開始

今月4月15日、ニンテンドー・オブ・アメリカの社長兼最高執行責任者を務めたレジーことレジナルド・フィサメィ氏が同職を退任した。一般人となったレジー氏はTwitterアカウントを開設し、さまざまな写真を公開しているが、ファンはそのイスが気になって仕方がないようだ。

今月4月15日、ニンテンドー・オブ・アメリカの社長兼最高執行責任者を務めたレジーことレジナルド・フィサメィ氏が同職を退任した。そして退任と同時に公式Twitterアカウントを開設。ニンテンドー・オブ・アメリカに在籍していた当時の思い出などを、改めて振り返り始めた。素朴で陽気、そして笑顔を欠かさなかった愛嬌ある前社長は、たちまち多くのフォロワーを獲得。現在40万のフォロワーを抱える、“特別な一般人”となっている。

 

注目したのはイスだった

これまで同氏が姿を見せてきたのは、メディアの前だけであったこと、そして貴重な社長室の様子がわかるということで、熱心なファンたちは投稿される写真ひとつひとつに対し分析をおこなっている。たとえばレトロスタジオから寄せられた写真の左下部分には、同スタジオに関連した新作のキャラが描かれているのではないかと推測されていた(Polygon)。

写真の隅々まで見渡して、未発表の情報を探す。それ自体はゲームファンとして普通の行動である。しかしながら、熱心すぎたファンはゲームに関連する情報ではなく、社長室にある「イス」に注目し始めた。発端となったのは、カナダに住まうグラフィックデザイナーJason Cryer氏の指摘。氏は、4月16日に投稿された、レジー氏が社長室でマスターソードを握る写真に目を付けた。注目したのは、マスターソードではなくイスだった。写真に映るイスはハーマンミラーのミラ2であると分析。その値段はというと、およそ14万円である

ハーマンミラーのチェアの中には30万円以上するイスもざらにあり、同社のブランドの中では安い方なのだ。Cryer氏は、レジー氏が座っていたミラ2の価格は、同メーカーのアーロンの高級モデルと比較しても、半分程度であると考察。ニンテンドー・オブ・アメリカの社長のイスにはふさわしくないと嘆いた。さらに調査を進めた氏は、ミラ2だと推測していたイスは高さや肘置きの形状から考えて、生産終了したミラ1(定価約10万円)であると訂正。このイスは42%がリサイクル素材からできたものであるとし、その嘆きは深くなっていった。

 

もっと相応しいイスを

さらに、ジャーナリストであるNick Robinson氏の報告によると、このイスは13年間使われ続けていた可能性が高いという。同氏は、いずれのFacebook社員もこのイスより高価なイス(アーロン)を使っていると指摘。世界的大企業任天堂のアメリカ支社の社長が、それもレジー氏だけでなく、後任であるダグ・バウザー氏もこの10万円程度のイスを使っているという。散々嘆いてきた第一発見者であるCryer氏は、ニンテンドー・オブ・アメリカはレジー氏にもっと相応しいイスを用意すべきだとアクションを起こした。

その結果が署名活動である。Change.orgにて立ち上げられたキャンペーンには、レジーのような人には、ランバーサポートや洗練されたアルミの脚があり、調節可能でレザーの肘掛けを備えたイスこそが相応しいと記載されている。そして16年間務めを果たしてきたレジー氏に敬意を表して、任天堂がレジー氏にハーマンミラーの高級イスを贈呈すべきだと要求しているわけだ。最初こそこのキャンペーンは、それほど認知されていなかったが、Nintendo Soupなどメディアが「レジーは13年間座り心地の悪いイスに座らされていた」などと報道したことから、徐々にこの「イス議論」は浸透していき、4月24日16時時点では1万3000人からの支持を得ている。目標である1万5000人を突破するのは、時間の問題になるだろう。

なにやらイスをめぐり妙な盛り上がりを見せていたが、冒頭に述べたとおり、レジー氏は15日にリタイアしている。後任のバウザー氏のイスを変えるならともかく、今回の署名運動を受けて今レジー氏に会社からイスを贈ることに意味はあるのか。そもそジョークなのか、本気なのか。不透明な方向性のまま、署名活動は熱を帯びている。いずれにせよ、結果的には、“(社長にしては)安価のイス”を大事に使い続けたレジー氏の好感度を高める形となった。Change.orgをこのように使うのが適切であるかはともかく、今回のイス騒動は、改めてレジー前社長の人気の高さを物語っているだろう。

Ayuo Kawase
Ayuo Kawase

国内外全般ニュースを担当。コミュニティが好きです。コミュニティが生み出す文化はもっと好きです。AUTOMATON編集長(Editor-in-chief)

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