「名探偵ピカチュウ」をさらにリアル化するファンパロディが話題に。クスリに溺れた厭世刑事ピカチュウと、カスミに浮気されたサトシ

「名探偵ピカチュウ」をさらにリアル化するファンパロディ「トゥルー・ディテクティブ ピカチュウ」が話題となっている。厭世刑事ピカチュウとカスミに浮気されたサトシがタッグを組み、ムサシ殺人事件の謎を追う。

ニンテンドー3DS向けに発売されたアドベンチャーゲーム『名探偵ピカチュウ』を題材とした実写映画「名探偵ピカチュウ」。俳優ライアン・レイノルズ演ずるピカチュウがユーモアを交えて話しまくる様子や、オリジナルの特徴を残しつつも実写映画向けにアレンジされたポケモンたちのリアルな造形といった、意表を突いた設定が注目されてきた。

 

マシュー・マコノヒー風ピカチュウ

そしてこのたび、5月の上映開始を控えた期待作と関連する、ファンメイドのパロディ映像が話題となっている。「名探偵ピカチュウ」の海外タイトル「Detective Pikachu」と、人気海外ドラマ「True Detective」を掛け合わせた「True Detective Pikachu」という、架空の作品のトレイラーだ。そこで描かれるのは、リアルすぎる、そして悲観的すぎる厭世刑事ピカチュウだ。

この「True Detective Pikachu」は、2014年に公開された「True Detective」のシーズン1を元ネタとしている。以下の「True Detective」のシーズン1トレイラーと比較すると、その類似性は顕著だろう。同作はシーズンごとに異なる主人公による、異なる物語を描くアンソロジー形式のドラマシリーズとなっており、シーズン1では人気俳優のマシュー・マコノヒーとウディ・ハレルソンが刑事役としてタッグを組んだことでも話題を呼んだ。

「True Detective」シーズン1では、1995年に女性の怪奇殺人事件の捜査にあたったルイジアナ州の刑事二人が、当時犯人を特定したとの報告を行ったものの、2012年になって類似した怪奇事件が再発したことから、事実を隠しているのではないかと事情聴取を受ける。1995年、2002年、2012年という3つの時間軸で描かれる物語となっており、今回のパロディ映像でも、若手刑事風のピカチュウ、髭を生やしたベテラン刑事風のピカチュウと、しっかりビジュアルが変更されている。

 

ムサシ殺人事件とカスミの浮気

トレイラーは、「True Detective」の刑事コール(マシュー・マコノヒー)の独特かつ悲観的な語り口を真似た中年ピカチュウが、ジュンサーから事情聴取を受けるシーンから始まる。そして若かりし頃の回想に突入。相棒のサトシ(英名:Ash)の「お前は何を信じるんだ?」という問いに対し、「ポケモンの自我の芽生えは、種の進化にとって悲劇的な躓きであると、俺は考えている。俺たちは、存在してはいけない生き物なのだ」と答えるピカチュウの台詞は、人間の意識について論じる刑事コールのパロディである。

続いて事件現場へと向かったピカチュウとサトシは、奇妙な体勢で放置されたロケット団ムサシ(英名:ジェシー)の遺体を調査。相棒のコジロウ(英名:ジェームズ)には、「お前たち二人はいつも一緒だったじゃないか。どうしてこんなことになったんだ」と静かに問い詰める。そして誰の指示で動いているのか詰問されたコジロウは、思わず「黄色の猫」と情報を漏らしてしまう。そう、ニャースだ。

Sam & Billy Comedy「True Detective Pikachu」よりキャプチャ

そのほか、サトシが恋人と思わしきカスミと「仕事と私、どっちが大事なの」と口論する場面や、カスミとピカチュウの浮気を示唆するシーンが含まれるなど、原作「True Detective」の流れを汲んだトレイラーとなっている。またタバコを吸い腕に注射器を打つピカチュウ、体格の良いギャングメンバーのカメール、ストリップバーで働く細身のロコンといった、社会の暗部に住まうポケモンたちの様子が確認できる。

 

ポケモンゲットだぜ

トレイラーの終盤では、車の助手席に座るサトシが、運転中のピカチュウに「お前は自分が悪者だと思ったことはあるか?」と問う場面も。「サトシ、世界は悪者を必要としている。俺たちは他の悪者どもを捕まえるんだ」というピカチュウの返事を受け、サトシは「じゃあ、全員捕まえなきゃいけないな」と、険しい眼差しを窓の外に向ける。こちらは「True Detective」の有名な台詞を真似つつ、「ポケモンゲットだぜ!」の英語版キャッチフレーズである「Gotta Catch ‘Em All」をオチに持ってくるという、粋な台詞となっている。

最後に流れているのは、ポケモンの英語テーマソングの哀愁漂うアレンジ版である。捕獲するのが俺に与えられた試練、訓練するのが俺の使命という歌詞はそのままだが、ここでは闇に堕ちたポケモンたちを逮捕する、訓練して社会復帰させるという、暗いニュアンスがにじみ出ている。

ポケモンゲットだぜ

俳優マシュー・マコノヒー演じる刑事コールの独特かつ悲観的な語り口を、真面目かつ見事に真似ることで成立しているシュールな笑い。それはパロディながら、「True Detective Pikachu」が本当にドラマ化するならば観てみたいと思えるほどのクオリティではないだろうか。なおピカチュウ役を演じたTommy Kang氏と、サトシ役を演じたBill Bria氏は普段ミュージック・コメディデュオとして、YouTubeチャンネル「Sam & Billy Comedy」にて即興ソングやパロディソングを披露している。

パロディではなく本物の、モフモフのフサフサになったポケモンたちが描かれる実写映画「名探偵ピカチュウ」は2019年5月3日、日本にて先行上映が開始される予定だ。

Ryuki Ishii
Ryuki Ishii

元・日本版AUTOMATON編集者、英語版AUTOMATON(AUTOMATON WEST)責任者(~2023年5月まで)

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