『ディビジョン2』では、“メキシコ政府”がアメリカからの不法移民を防ぐため国境に壁を建設する。現実とは対照的な皮肉PR

 

Ubisoftの『ディビジョン2』公式Twitterアカウントは3月7日、メキシコ政府が非常事態宣言を発令したことを伝えた。アメリカの政情不安およびメキシコへの避難民の流入危機、首都ワシントンD.C.を機能不全に陥れたウイルスの拡散の可能性を考慮したうえでの判断だとし、アメリカとの国境はすでに封鎖済み。そして、両国の国境に壁を建設するための予算を承認し、すぐにでも建設を開始するとしている。

声明の中でメキシコ大統領は、メキシコ国民の身の安全を確保することの緊急性を語り、政治や政策、財務上の問題を考慮している時間はないとしている。また、東海岸地域から避難してきたアメリカ国民のキャラバンがメキシコとの国境に到着していることも報告。彼らは混沌とした無政府状態のダークゾーンから逃れるため、メキシコ政府に保護と社会的サービスの提供を求めているという。しかしメキシコ政府は、アメリカからの移民に対してゼロ・トレランス(不寛容)政策を取ることを決定。これを徹底するため、数千人規模の軍と警察を国境地域に派遣した。

一方アメリカ政府については、長年にわたる両国の通商・移民・経済合意を履行できるかどうか疑わしいとし、信用できる状態にないとコメント。ワシントンD.C.にて市民のために戦闘を続けているディビジョンのエージェントとコンタクトを取っているが、この懸念が解消されるまでは国境の封鎖は継続するとしている。

もちろん、これは『ディビジョン2』の設定に基づいた架空の非常事態宣言であり、現実世界の話ではない。本作では、バイオテロによりアメリカの秩序の崩壊が始まった前作から7か月後のワシントンD.C.を舞台とし、ディビジョンのエージェントであるプレイヤーは、市民ひいては国を守る最後の砦として複数の敵対勢力と対峙する。またダークゾーンでは、PvPvEの激しい戦闘が繰り広げられる。ゲーム内のワシントンD.C.は、ウイルスの拡散および嵐や洪水により様変わりしているものの、1/1スケールにてリアルに再現しており、今回の“非常事態宣言”はそうしたリアリティの演出のひとつだと言えるだろう。

また、アメリカとメキシコの国境間に壁を建設するという点では、皮肉が効いている。アメリカでは、ドナルド・トランプ大統領がメキシコからの不法移民や麻薬の流入などを防ぐため、両国の国境に壁を建設することを目指しており、その予算を捻出するため今年2月15日に国家非常事態を宣言したことは記憶に新しい。またトランプ大統領は昨年4月、不法移民に対して不寛容なゼロ・トレランス政策を導入。昨年末には、アメリカを目指すメキシコからの移民キャラバンについても大きく報じられた。『ディビジョン2』の世界では、現実世界と立場が逆転してしまっているようだ。

ちなみに、『ディビジョン2』のプロモーションにおいて時事問題を匂わせる手法が取られたのは今回が初めてではない。今年2月初旬に実施された本作のプライベートベータテストにあたってUbisoftは、「プライベートベータテストに参加して、実際に政府機関が閉鎖された様子を目撃しよう(Come see what a real government shutdown looks like in the private beta)」という件名のメールを登録者に送付した。当時アメリカでは、ねじれ議会により政府予算が承認されない状況が昨年12月から続いており、その結果一部の政府機関が閉鎖。影響を受けた連邦政府職員への給料の支払いが止まる事態となった。確かに本作では政府が機能していない世界を描いているが、実際に起きている深刻な状況を揶揄した形となり、Ubisoftは批判を浴びることとなった。のちに同社は、この件名は不適切だとボツにする予定だったが、誤って送信されてしまったと謝罪している(関連記事)。

一方、今回の(架空の)メキシコ政府による非常事態宣言や国境への壁の建設については、一部に批判的な意見もあるものの、皮肉として受け止められおおむね好評のようだ。中には、トランプ大統領がこれをリツイートすることに大金を賭けるよだとか、結局(トランプ大統領が主張していたように)メキシコが壁の建設費を支払うのか、といった声も見られる。

『ディビジョン2』は、PC/PlayStation 4/Xbox One向けに、来週3月15日にローンチを迎える。