Activision Blizzard、業績好調ながら700人以上の大規模レイオフを決行。開発部門以外のスタッフを削減した上で、主力タイトルにリソースを集中する

Activision Blizzardがスタッフの8%、合計700人以上を対象としたレイオフを決行する。開発部門以外の人員を削減した上で、主力タイトルの開発スタッフ増員を図ることに。Activisionは2018年に過去最高の営業利益を出したが、グループ全体として期待に応える結果を出すことはできなかったという。

Activision Blizzardは、2018年度第4四半期決算の公開にあわせて開催された投資家向けの収支報告(カンファレンスコール)にて、2019年に大規模なレイオフを実施することを明らかにした。対象となるのは全スタッフの約8%。昨年時点での従業員数9600人をもとに考えると、その数は750人以上にもおよぶ。対象者には退職金・各種福利厚生の継続・転職サポートなどの手厚い支援を施していくとしている。

同社CEOのBobby Kotick氏は今回のレイオフについて、企業再建計画の一部であると収支報告にて説明し、「自身のキャリアでトップ5に入る、苦しい判断であった」と伝えている。今回のレイオフでは、総務部門を含む開発チーム以外の人員を全体的に削減するほか、期待に応えられていない事業を縮小。一方で自社の主力IPにはこれまで以上に注力し、2019年に開発リソースの20%増加を目指すという。また売り切り型タイトルやゲーム内コンテンツの増加、モバイル展開(未発表タイトル含む)、既存タイトルの多国展開に重点を置くほか、隣接するe-Sportsや宣伝部門にも投資していくという。

『オーバーウォッチ』

海外メディアのKotakuが独自に入手したという、CEO J. Allen Brack氏から社内スタッフに向けて送られた手紙によると、一部チームのスタッフ数が、現在のリリーススケジュールと釣り合っていないことから、組織をスケールダウンする必要が出てきたという。なおKotakuは昨年秋、Blizzardは開発チームを拡大しつつも、コスト削減のためバックオフィス人員の削減を進める予定であると、独自ソースをもとに報じていた。

現にActivision Blizzardでは、ここ数か月のうちに重役の入れ替わりが続いていた。Activision BlizzardのグループCFO Spencer Neumann氏は昨年12月Netflix社に移ったほか、BlizzardのCFO Amrita Ahuja氏も今年1月に退社。昨年10月には、長年CEOを務めてきたBlizzardの共同設立者Mike Morhaime氏が降板し、J. Allen Brack氏が新しくCEOとして着任している。ActivisionのCEO Eric Hirshberg氏も今年3月に退社予定となっている。

今年1月、ActivisionとBungieは『Destiny』フランチャイズを巡るパートナーシップを解消した

700人以上という大規模なレイオフ実施となるが、ゲーム事業が不振というわけでもなく、2018年度の総売上高は75億ドルで予想値(73.5億ドル)を超えており、Activision単体での2018年度営業利益は過去最高の10億1100万ドル(約1120億円)。Blizzardは6億8500万ドル(約760億ドル)、King sawは7億5000万ドル(約830億円)の営業利益を出しており、Activision Blizzardの株主配当金は9%近く高い37セント/株にまで上がっている。

このように過去最高クラスの成果を出したとはいえ、Kotick氏は期待どおりの結果は出せなかったと語っている。昨年2018年に発売された『Call of Duty: Black Ops 4』は2018年のコンソールでのセールスNo.1を誇るヒット作となり、最初の四半期での売上は『CoD:BO3』を大幅に超えている。ただBlizzardの事業に関しては、『ハースストーン』『オーバーウォッチ』など長期運営タイトルのMAUこそ安定しているものの、ゲーム内少額課金による収益確保が不十分であったと、Kotick氏は説明している。

今後ポテンシャルをフルに発揮するため、いくつかの人事異動および大幅なレイオフを決行したとのこと。2019年は同社にとっての転換期になるとして、決算見通しはやや低めに抑えられている。企業再建に向けた転換期ということもあって、2019年の新作リリースは控えめ。Activisionは2019年Q4発売予定の『CoD』新作やTencent開発の『CoD』モバイルタイトルに集中。同社が今年1月、『Destiny』シリーズにおいて長年手を組んでいたBungieとのパートナーシップを解消したことも、2019年の売上高の見通しを低く見積ることになった要因と言えるだろう。一方、Blizzardの方はメジャータイトルのリリースは予定していないと説明している。つまり、モバイル向けに発表された『ディアブロ イモータル』は別として、『ディアブロ』の大型新作は年内にはリリースされないと見てよいだろう。

『ディアブロ イモータル』

一応は業績好調とはいえ、『Destiny』という大きな柱を失うなど、明るい知らせが多かったわけではない。Activision Blizzardの株価は2018年10月以降降下し続けており、10月1日時点で83.28ドルだった株価は2月11日40.11ドルにまで下がっている。EAやTake-Two Interactive、Ubisoftといった大手は軒並み株価が落ちており、Activision Blizzardに限らず、各社そろって投資家からは厳しい目を向けられている様子がわかる。今回の人員削減はかなしい知らせではあるが、少なくとも今後の再建により、新たな柱となるようなタイトルが生み出されていくことに期待したい。

Ryuki Ishii
Ryuki Ishii

元・日本版AUTOMATON編集者、英語版AUTOMATON(AUTOMATON WEST)責任者(~2023年5月まで)

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