SIEがE3 2019に出展しない理由に言及。ゲーマーに寄り添うような変革の必要性や、小数の大規模作品に注力する自社方針を説く

ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)のShawn Layden氏が、2019年のE3に出展しない理由を説明。E3のイベントとしてのインパクトが失われつつあることや、小数の大規模作品に注力していくというSIEの方針により、E3開催のタイミングでは新しい情報がないことが理由としてあげられた。

ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)が、2019年のE3には出展しないと昨年発表したことは大きな話題となった。E3(Electronic Entertainment Expo)は、ゲーム業界における世界最大規模のトレードショウであり、SIEはプラットフォームホルダーおよびパブリッシャー・デベロッパーのひとつとして、1995年の開催第1回から毎年参加していたためだ。この決断に至った経緯について、SIE ワールドワイド・スタジオを統括するShawn Layden氏が、海外メディアCNETに対して語っている。

Shawn Layden氏

Layden氏はまず、家電見本市のCES(Consumer Electronics Show)から、発足したばかりのE3にゲームの出展先を移行したPS1時代当時を振り返る。E3は一般のゲーマーのためのイベントではなく、小売店がゲームを買い付け、またメディアが誌面を飾る作品を求めて訪れるイベントで、これは基本的に今でも変わらない。Layden氏は、インターネットがいまほど普及していなかった当時は、見本市にてそうした関係者と繋がりを持つことは必要だったと述べる。

ただ、最大の商戦期であるホリデーシーズンに向けて小売店と商談の場を持つには、E3が開催される6月では遅すぎるという。そこで現在SIEは、Destination PlayStationと呼ばれる、小売店やサードパーティのパートナーを招いての独自イベントを2月に開催している。またインターネットの普及により、メディアからは24時間絶え間なくゲーム関連ニュースが報じられるようになった。Layden氏は、E3はトレードショウとしての本来の役目を果たせず、かつて持っていたインパクトはもう失われてしまったとし、世界が変化しているなか、E3は必ずしも追従できているとは言えないと語る。

もちろん、E3を運営するESA(Entertainment Software Association)もそうした変化を認識しており、2015年からは一般の入場客を受け入れる取り組みを始めている。ただLayden氏としては、もっとゲームファンに寄り添った形への変革が必要だと感じているようだ。毎回大きな発表を用意したり、表彰を受けたりといった場ではなく、開発者とファンが交流できるパネルセッションをおこなうなど、ファンフェスティバルのようなイベントへと移行していくべきかもしれないとしている。

PlayStation Experience 2017

SIEは昨年、年末恒例の独自イベントPlayStation Experienceの開催も見送っている。Layden氏が言うファンフェスティバルのようなイベントだが、その時期に北米向けに披露できるタイトルが少ないことが見送りの理由だとされた。Layden氏は、今回のE3への出展回避についても同じ理由を述べている。いわく、現在SIEはタイトル数を抑えながら、より大きな作品を時間をかけて制作するスタイルをとっており、E3が開催される今年の6月はタイミング的に新しい情報は何もないという。SIEのような大きなメーカーの場合、E3に出展すると言っただけでファンは新作や続報を期待するだろう。その期待を裏切ってしまうことを知っていながら、従来どおりE3に出展することは得策ではないということなのかもしれない。

大手メーカーのE3への出展に関しては、たとえばElectronic Artsは2016年からEA Playという独自イベントをE3会場近郊にておこなっている。やはり、E3では一般のゲーマーとの接点が少ないというのが理由で、E3のショウフロアでのブース出展を見送り、EA Playにてプレスカンファレンスやファンイベントを実施している。またこの時期には、Activision Blizzardやディズニー、Wargamingも後に続いた。Wargamingの場合は、『World of Tanks』のような基本プレイ無料のダウンロードゲームを提供していることもあり、ビジネス面においてE3にて得られるメリットが少ないという理由だった(VentureBeat)。時代の移り変わりを感じさせると同時に、E3の変革の必要性も浮かび上がった形だ。

一方、コンソールプラットフォームホルダーの残る2社、任天堂とマイクロソフトは、E3には今年も引き続き出展することを明らかにしている。任天堂は、大きな発表についてはNintendo Directを通じておこないながらブース出展を続けており、米任天堂社長Reggie Fils-Aime氏は、E3期間は最新作とその情報を世界に届ける大事な機会だと述べる(IGN)。マイクロソフトのXbox事業責任者Phil Spencer氏は今年のE3について、(SIEの不参加を念頭に置いて)お金を節約すべきか、それとも大規模に展開すべきか議論を重ねた末、後者を選んだそうで、かつてない規模のイベントになるだろうとしている(Major Nelson Podcast)。

SIEは、今年のE3の時期にはプレスカンファレンスや、EA Playのような独自イベントをおこなう計画もないという。一方で、年内にはコミュニティとの新たな接点を設けるとしており、何らかのイベントを開催する予定のようだ。新作の開発状況によりE3への出展を見送っていることから、タイミングを見計らっているところなのかもしれない。もちろん、大きなイベントでなくとも新作のさまざまな情報は日々届けられており、それらをチェックしながら期待を高めていきたい。

Taijiro Yamanaka
Taijiro Yamanaka

国内外のゲームニュースを好物としています。購入するゲームとプレイできる時間のバランス感覚が悪く、積みゲーを崩しつつさらに積んでいく日々。

記事本文: 6878