『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』は、凄腕プレイヤーならば「30分」でクリアできるゲームに。超人たちの挑戦は続く

『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』で「30分でクリアする」ということが実現可能になりつつある。『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』発売から2年の時を経て、大きな壁が崩れ落ちようとしているのだ。

『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』のスピードラン挑戦者達の間で、30分という記録の壁が崩れ落ちようとしている。日本人プレイヤーsketodara氏が先日、any%のAmiiboなしルールにて、30分10秒170という記録を叩き出し、世界1位に躍り出た(日本Wii U使用)。Amiiboありルールでは1か月前に米国プレイヤーrasenurns氏が29分46秒を記録していた。どちらのルールでも、いよいよ30分という壁が攻略されつつある。

『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』は、2017年3月に発売されたアクションアドベンチャーゲームだ。オープンエアーと称された本作は、過去作とは大きく路線が変更され、決められたレールは存在せず、広大なフィールドを自由に移動することができる。目に見える場所のほとんどに辿り着くことが可能なのだ。チュートリアル的な局面を抜ければ、最終決戦の場となるハイラル城に行くことすらできる。これを利用し、発売早々から最速クリアを目指すスピードラン競争が繰り広げられていた。

発売されてすぐの段階から、クリアタイム40分後半での戦いが熾烈になっており、そのうちタイムは40分台前半へと突入。Amiiboを使ったトリックや、言語を使った時間短縮、ダッシュ中に口笛を吹くことでがんばりゲージの消費を節約するwhistle sprintなど、さまざまなテクニックを用いて最速クリアを目指した競り合いが繰り広げられた。しかし、40分台を切るまでにはなかなか至らず、最終的に約1年後にその壁が破られた。そこからまた約1年が経った2019年初頭、ようやく30分の壁が崩されようとしている。

sketodara氏のプレイを例に、いかにこうした最速クリアが実現されているかを見ていこう。冒頭から早速壁抜けを使い、オープニングをすっとばしているほか、ボコ弓と弓矢を入手している。これが後述するショートカットにつながるヒントである。そのほか随所で使われているのは「盾サーフィン壁抜け」ことShield Skew Clip。座標の歪みを利用して、壁を抜けてしまうという強引なグリッチだ(関連記事)。Stasis Launchと呼ばれる、オブジェクトの上に乗り飛んでいく基本テクニックも、時の神殿跡のてっぺんに飛ぶ際などにしっかりと使用されている。

そして本作においてもっとも存在感を見せているのは、リンクがものすごい速度で飛んでいくショートカットだろう。弓矢を構えてボコブリンを踏みつけたのち、ミサイルの如く遠方へとリンクがぶっ飛ぶ。あまりに猛スピードにて移動することから、ゲーム側の読み込みに待たされるシーンも多々ある。このBullet-time bounceと呼ばれるテクニックが、30分の攻防において非常に重要な鍵を握っている(関連記事)。敵キャラの頭上から、盾サーフィンをしながら、空中で弓を構えてスローモーション状態になり、そのまま敵の背中に落ちる。うまく敵に直撃すれば、対応した角度にリンクがものすごい速度で“ぶっ飛んで”いくのだ。

つまるところ、タイムの短縮は、集合知による発見と研究によるところが大きい。コミュニティではZant氏などを中心に、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』における新たな発見を探り続けている。メモリーを用いたリセットボウスピンなど、ここ1年でもさまざまなテクニックが見つけられている。ほとんどのテクニックは、国内外の異なるユーザーによって発見され、理論化され、そして応用化される。コミュニティの厚さが、タイム短縮に力強く貢献している点は疑いない。

一方で、求められる実力もまた高まっている。通常のスピードクリア自体もテクニックを要求されるが、前述したテクニックを繰り出すために正確な入力をするのは難しい。映像こそ見れば簡単そうに見えるが、Shield Skew Clipなどを安定してイメージどおりに出すのは困難。それを一回のプレイで通して完遂させるならばなおさらだろう。知識とテクニックと集中力、いずれかを少し欠いてしまっても、30分の壁は遠のいてしまうのだ。

※ Shield Skew Clipを使って試練の祠に侵入する一幕

『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』は、その腕さえあれば30分でクリアできる可能性が存在する作品であるが、遊び尽くす上では100時間あっても足りないほどのボリュームを誇る。早解きもできるし、遊びこむこともゲームできるなのだ。発売直後は1時間であったスピードラン記録が30分に縮むまで遊ばれ続けているのは、同作が未だプレイヤーたちを魅了しているからに他ならない。スピードクリアだけでなく、「さまざまな場所に本棚を運ぶ」といった遊びや「色んなパターンのオープニング映像を撮影する」といった遊びなど、多様な楽しみ方が見られる。あと1か月で発売から2年が経つことになるが、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』を遊ぶ人たちの熱はまだまだ冷めることがなさそうだ。

Ayuo Kawase
Ayuo Kawase

国内外全般ニュースを担当。コミュニティが好きです。コミュニティが生み出す文化はもっと好きです。AUTOMATON編集長(Editor-in-chief)

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