『Detroit』のQuantic Dreamが、『荒野行動』などを展開する中国大手NetEaseと提携。PlayStation独占から脱し次世代タイトル開発へ

『Detroit: Become Human』『HEAVY RAIN』などで知られるQuantic Dreamと、『荒野行動』『Identity V』などを運営する中国大手NetEaseが提携。またQuantic Dreamは今後、PS独占ではなくマルチプラットフォーム対応の次世代タイトル開発に乗り出す。

中国の大手企業NetEase(網易)のゲーム部門NetEase Gamesは1月29日、Quantic Dreamの小数株を取得し、提携関係を結んだことを発表した(NetEase公式)。NetEaseのゲーム部門は、『荒野行動』『Identity V』といった自社IPのモバイルゲーム開発、『オーバーウォッチ』『ディアブロIII』『Hearthstone』といったBlizzardタイトルの中国版運営、Blizzardの新作『ディアブロ イモータル』の共同開発など事業を手広く展開しており、今回の一件もそうした世界規模でのオンラインゲームの開発・販売を促進していくための一手であると説明されている。

Quantic Dreamは『Detroit: Become Human』『HEAVY RAIN -心の軋むとき-』『BEYOND: Two Souls』『Fahrenheit』などのアドベンチャーゲームで知られるフランスのゲームスタジオ。過去3作品はPlayStation独占タイトルとして開発されてきたが、今回の発表とあわせて、PlayStation独占から脱し、複数プラットフォーム向けの次世代タイトル開発を進めていくことをVentureBeatとのインタビューを通じて語っている。

『Detroit: Become Human』

NetEaseの最近の動向としては、2018年6月にBungieに出資しパートナーシップを結んでいる(関連記事)。当時Bungieは自社パブリッシングに向けた取り組み、複数タイトルの同時開発・運営体制の構築を進めるための一歩であるとコメントしていた。そして2019年1月にBungieは、『Destiny』フランチャイズのパートナー契約を結んでいたActivisionと決別し、『Destiny 2』の自社パブリッシングを始めている。またNetEaseは同年1月、Blizzardの元中枢スタッフが設立したSecond Dinnerと、Marvel作品の開発に関して契約を結び資金提供している。

今回のQuantic Dreamに対する戦略的投資は、Quantic Dreamが目指すグローバルなマルチフランチャイズ展開および最新技術の開発を推し進めるためのサポートが目的とのこと。NetEaseのヴァイス・プレジデントであるEthan Wang氏は、「私たちは自社開発に注力しており、次世代タイトルの開発・制作において協力体制を結べるパートナーを常に探しています」と述べている。NetEaseとしては、Quantic Dream が培ってきたノウハウや最先端の技術を吸収することができる。

『BEYOND: Two Souls』

なおQuantic Dreamについては2018年、スタジオ内でハラスメント行為が蔓延していると現地メディアにより報道されてきたが、この点についてNetEaseのSimon Zhu氏は、投資を決める前にQuantic Dreamの社内を調査した結果、報道されてきた内容が事実であると示すような材料は見つからなかったと、上述したVentureBeatのインタビューにて答えている。

一方のQuantic Dreamとしては、金銭的出資を受けることはもちろんのこと、NetEaseとの戦略的提携により、新しいハードウェア・ビジネスモデル・遊び方が続々と生まれてくるであろう今後のゲーム業界において、スタジオの野心とポテンシャルをフルに発揮できるような体制を整えることができると語っている。シナジー効果を得つつも、制作上での決定権はQuantic Dreamが保持し続けるとのことだ。

同スタジオの次回作については多く語られていないが、David Cage氏によると新作で使用される自社エンジンは、先述したようにマルチプラットフォーム対応になるとのこと。今回の提携を受けてスタッフの増員も計画されているということで(現在の150人から300人への増員)、『Detroit: Become Human』以上に野心的な作品が期待できそうだ。

Ryuki Ishii
Ryuki Ishii

元・日本版AUTOMATON編集者、英語版AUTOMATON(AUTOMATON WEST)責任者(~2023年5月まで)

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