パブリッシャーと音信不通になった開発者、自社タイトルにDMCA侵害申請を行うことでSteamページの所有権を取り戻す
パブリッシャーからの支払いが滞っていた開発スタジオが、自ら開発したゲームについて米国のDMCA(デジタルミレニアム著作権法)に基づく著作権侵害の申し立てを行うことで、Steamページの所有権を自社のもとに移すことに成功するというケースが発生した。対象となったのは、2018年9月にSteamでの早期アクセス販売が開始されたFPS/RTSのハイブリッド作品『Eximius: Seize the Frontline』(以下、Eximius)。開発元のAmmobox Studios(以下、Ammobox)によると、販売元のTheGame Wall Studiosと音信不通になり、『Eximius』の売上からの取り分が一切支払われていない状態にあるとのことだ(Steamコミュニティ)。
そこでAmmoboxは1月9日、TheGame Wall Studiosに対して著作権侵害の申し立てを行い、Steamでの販売を停止させることに成功。またSteamの運営元であるValveの協力により、『Eximius』のSteamストアページの各種権限はAmmoboxのもとに移管された。パブリッシング契約違反によりTheGame Wall Studiosから販売権をはく奪することが狙いだ。今後は未払い代金の支払いを求めて争っていくとのこと。なおゲームを購入済みのプレイヤーは、今後も通常どおり遊び続けることができる。
GameIndustry.bizが報じるところによると、現時点でストアページの権限移管に応じてくれた販売プラットフォームはSteamのみで、GreenManGaming、Humble Store、Fanaticalなど他販売プラットフォームでは引き続きTheGame Wall Studiosが販売元として記載されている。
TheGame Wall Studiosは英国に拠点を置くゲームパブリッシャー。『Eximius』のほかには2014年に発売されたF2Pシューター『Guns and Robots』、2018年7月に発売されたF2Pゾンビシューター『ZKILLER』などの販売を手がけているが、FacebookやTwitterといったSNS上での活動は2018年9月の『Eximius』発売以降止まっている。
DMCAに基づく著作権侵害の申し立てはさまざまな用途で使われており、例として任天堂が同社タイトルのファンゲームやエミュレーターに対し公開停止要請を行う事例が度々報じられている。近年のケースで言うと、『Escape From Tarkov』の開発者がYouTuberの動画を「誤情報の拡散」を理由にテイクダウン要請したことや、2018年10月にEpic Gamesが『フォートナイト』のチートツール紹介・販売を行なっていたYouTuberをDMCA違反(ゲームコードの不正な書き換え)により提訴している。今年1月にも、『Star Control』シリーズ初期2作品のクリエイターが、フランチャイズの権利を巡り係争中のStardockが販売した新作『Star Control: Origins』について販売の停止を要請(関連記事)。こちらは一度ストアから取り下げられたものの1月18日に販売が再開されている。このようにDMCAが持ち出されることは多いものの、今回の『Eximium』のように、自社が開発したゲームそのものを対象としてDMCA侵害申請を行うというのは、異例のケースと言えるだろう。
なおAmmoboxはTheGameWall Studiosと契約を結んだ経緯についてredditで語る中で、「理想的な選択ではありませんでしたが、さまざまな要素を考慮した上での判断でした。振り返って考えてみれば、十分な知識に基づいた判断だったとは言えません。締切に追われる開発終盤、同時に複数の事柄について決断を下していかなければならないプレッシャーの中で、起きてしまった過ちなのです」「今回の件から学べることは、プレッシャー下で重要な決断を下すのは避けた方がよいということでしょう」と述べている。またAmmoboxのもとには、TheGameWall Studiosと手を組んだ他の開発スタジオ2社からも、収益を持ち逃げされたとの連絡が寄せられているという。