なんでも作れるPS4ゲーム『Dreams Universe』が思わぬ形で脚光を浴びる。開発元は喜びながらも葛藤見せる

ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)が発売予定の『Dreams Universe』が、SNSで“予期せぬ 形”で盛り上がりを見せている。とある契約が破られたことにより、盛り上がりがもたらされているのだ。

ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)が発売予定の『Dreams Universe』が、SNSで“(開発元にとって)予期せぬ形”で盛り上がりを見せている。『Dreams Universe』は、『リトルビッグプラネット』シリーズを手がけたMedia Moleculeが開発中のPlayStation 4専用タイトル。キャラクターのモデリングから楽曲作成・編集まで、さまざまなコンテンツを自由に作れるクリエイションゲームだ。アクション、アドベンチャー、レース、RPGなど多彩なジャンルのゲームを作成し、インターネットでシェアすることも可能。現在北米ユーザー向けにベータテストを実施しているが、そのベータを体験中のユーザーが同ゲーム内で『P.T.』のクローンを作り出したのだ。

とあるユーザーは、『P.T.』の代名詞ともいえる、ラジオが聞こえる狭い廊下を徘徊する3Dシーンを見事に再現しており、それを見たほかのユーザーがその作品の動画をSNSに投稿。またたく間にシェアされ、大きな注目を集めた。Media Moleculeが手がけた作品としては、『リトルビッグプラネット』シリーズでも、ジャンルの垣根をこえた作品が作成可能であったが、一人称視点のホラーゲームを“リアルに”再現できるのは他のクリエイションゲームに例を見ない。それが『P.T.』という独特な作風のゲームであったならなおさら。この動画には好意的な反応が見られているように、投稿された動画は、『Dreams Universe』のクリエイションの可能性を示し、知らしめた事例といえるだろう。

ただし、この話は開発元にとって“単なるバズ”として喜べる話ではなかった。というのも、SIEもしくはMedia Moleculeと、ベータユーザーの間では秘密保持契約(NDA)が結ばれていたのだ。昨今のベータテストにおいては、テストに参加することを引き換えに、ゲームの情報を公の場に共有しないという契約がかわされることが多く、たとえば『Anthem』や『Artifact』などもこの形態でのベータ(もしくはアルファ)テストがおこなわれていた。当然、動画投稿はNDA違反である。同作のデザイナーであるChristophe Villedieu氏はクリエイションを称賛しながらも、「NDA違反であるゆえにすぐに消してください」と笑顔の顔文字をつけてマイルドに削除要請している。

https://twitter.com/monsterplant/status/1087026739866492929

しかし一方で、この削除要請に反発する人々もいるようだ。この動画を見てゲームを買う気になったというユーザーや、こういうシェアがあるからゲームは売れるんだとシェアを投稿するユーザーも存在しており、前出のVilledieu氏は「それはわかっていますが……でもわかるでしょう……(We know 😉 but you know…)」と葛藤しながら返信している。また「短い動画を投稿するのは、いい宣伝になりますよね。今はこのゲームに興味を持っています」というユーザーにも、「ですね。コミュニティは凄まじい勢いでツールを学び、すごいものを作っています」と同調している。『Dreams Universe』で『P.T.』クローンを作ったオリジナル作者に対しても、温かいアドバイスを送っている。またベータの参加ユーザーも右上がりに増えていることが、Media Molecule のAlex Evans氏から明かされている。

とはいえ、SIEとMedia Moleculeにとって、盛り上がっているからといってNDAを破り画像や動画の共有を許すことはできないだろう。Media Moleculeはベータを開始するにあたって、Q&Aページにてそのスタンスを明確にしている。ベータの段階では、ゲームのすべてを準備できているわけではないとコメント。現時点で重要なのは、すべてのユーザーがオンラインに飛び込む前に、フィードバックとイテレートをしてもらうことであり、まだシェアを許可する段階にはないとしている。未完成であるがゆえに、構築中のものがシェアされ、それが製品版でも同じであると誤解されるのを避けたいのだろう。

ゲーム内作品をもっと見たいと願うユーザーからはNDAを批判する声が寄せられているが、販売・開発元としてはきちんと段階を踏んでプロモーションや情報公開をしたいと考えるのは当然のこと。簡易的であるとしても契約を結ぶ以上は、ユーザーにはその契約を守る義務がある。幅広いものを作ることが可能なゲームであり、かつほかの人に共有したくなるゲームだからこそ、ほかのゲームよりもNDAを守りづらい作品なのかもしれない。実際に、『Dreams Universe』のユーザーの作品は、『P.T.』クローン以外もSNS上でちらほら出てき始めている。

それだけ『Dreams Universe』が可能性にあふれたゲームであるのだろう。国内向けにも発売が確定している『Dreams Universe』。その名前どおり“夢あふれる”ゲームであるが、もし国内向けのベータテストなどがあった際には、開発元を困らせないように行儀よく遊びたいところだ。

Ayuo Kawase
Ayuo Kawase

国内外全般ニュースを担当。コミュニティが好きです。コミュニティが生み出す文化はもっと好きです。AUTOMATON編集長(Editor-in-chief)

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