『MOTHER』シリーズから影響を受けたRPG『YIIK』のゲーム内には、元任天堂社長・岩田聡氏への追悼メッセージが存在している


本日1月18日に海外発売された『YIIK: A Postmodern RPG』に、かつて任天堂の代表取締役社長を務めていた岩田聡氏への追悼のメッセージが存在していることが話題を呼んでいる。同作に存在する街のひとつ「Wind Town」の左手には、10基のお墓が並ぶ墓地が存在している。お墓には、開発者自身の自虐テキストやちょっとした小ネタなどが込められているという。そしてその一番右上のお墓には、「Satoru Iwata December 6, 1959 – July 11, 2015」と記されている。

『YIIK』は、アメリカのインディースタジオAckk Studiosが開発し、Ysbryd Gamesが販売するRPGだ。日本向けPlayStation 4/Nintendo Switchは1月31日の発売が予定されており、現在発売中のSteam版は同日に日本語に対応するという。『YIIK』は「surreal Japanese-style RPG(シュール日本スタイルRPG)」と銘打たれており、フィールド移動やターン制バトルなど、日本タイトルのエッセンスをにおわせる作品となっている。村上春樹氏の小説からも影響を受けており、独特な世界観が築き上げられているのも特徴だ。楽曲制作には、Toby Fox氏や菊田裕樹氏、丸山ミカ氏など携わっており、美しくも奇妙な音楽がユニークな世界観を彩る。

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本作は、特に『MOTHER』シリーズの影響を受け作られたとされている。さらに、Ackk Studiosはのちに中止になるものの当初Wii U版の発売を計画していたなど、任天堂プラットフォームと関わりがあった作品。開発途中に亡くなった故・岩田聡氏への思いをゲームに込めたと考えられるだろう。多くの人々が、愛情を感じられるメッセージに心打たれている。ただし一方で、この追悼メッセージは必ずしも全員に受け入れられているわけではないようだ。というのも、本作の舞台は1999年なのだ。氏が存命中であるはずの1999年が舞台の作品に、2015年に亡くなった故人へのメッセージを込めるのは不適当であるという指摘もある。

また、この墓石が、脈絡なく置いてあることに対し不快感を示すユーザーも存在する。前述したように、同作は『MOTHER』シリーズから影響を受け作られた作品だ。岩田聡氏は、『MOTHER2』のプロジェクトを建て直すなど、同シリーズと関わりが深いことで有名である(ほぼ日刊イトイ新聞)。こうした文脈で墓石が置かれている可能性も考えられるが、ゲーム自体は岩田聡氏が監修したわけでもなく、ゲームのストーリーやWind Townにそうしたエッセンスが取り入れられていることも現時点では報告されていない。ユーザーにとっては、何の関連もなく唐突に“追悼メッセージ付きの墓石だけが置かれている”ように見えてしまう。ぎこちない(奇妙な)追悼メッセージであるとResetEraのユーザーの多くが評するのも、理解できない話ではない。荒涼とした墓地に置いてあるなら、なおさらだろう。

もちろん、Ackk Studiosが敬意と愛をもってこのメッセージを込めたのは明らか。しかしながら、「故人」というセンシティブなトピックであるだけに、あまりにもどストレートな追悼は、必ずしも歓迎されるメッセージにはならなかったかもしれない。とはいえこの事例は、『YIIK』に多くの日本への愛が詰められていることも意味しているだろう。ゲームはクリアするまで30時間以上かかるほどボリュームがあるとされており、テキストも膨大ということで、さまざまな小ネタが隠されていると考えられる。ほかには、どのようなメッセージが込められているのだろうか。1月31日の日本語対応およびコンソール版の発売が、楽しみなところだ。