『レッド・デッド・リデンプション2』ピンカートン探偵社の描写を巡り訴訟に発展。商標権侵害の有無が論点に

 

大手セキュリティ会社Pinkerton Consulting & Investigations(以下、Pinkerton)は昨年12月、Take-Two Interactive(以下、Take-Two)およびRockstar Gamesに対し、商標権侵害の訴えを提出。Rockstar Gamesが販売する『レッド・デッド・リデンプション2』(以下、RDR2)にて、Pinkertonの許諾なくピンカートン探偵社の商標を利用したことや、ピンカートン探偵社所属という設定のキャラクターを登場させたことを理由に、示談金もしくはロイヤリティの支払いを求めている。

『RDR2』では、ピンカートン探偵社に所属する人物としてAndrew MiltonとEdgar Rossというキャラクターが登場する。そうしたキャラクターが作中で描かれることでPinkertonの評判が悪化すること、そしてPinkertonが『RDR2』の開発に携わっているという誤った印象を与えてしまうことが、Pinkertonの損害内容として提示されている。

この訴えを受けてTake-Twoは、歴史的事象に対し商標法を適用することはできないと主張。さらには、『RDR2』におけるピンカートン探偵社の描写は商標権の公正利用(Fair use)の範囲内におさまっていると反論する訴状を提出している。その概要を海外メディアのThe BlastGame InformerThe Vergeが報じている。

商標権のフェアユースを判断する際には、該当コンテンツの類似性、利用目的、利用必要性などが考慮される。このうち類似性という点では、Pinkertonが商標権侵害の具体例として挙げているピンカートン探偵社のバッジに関して、現実世界で実際に使用されたバッジとゲーム内で描写されたバッジとはデザインが異なること、バッジのデザイン・刻印の細部まではゲーム内で表示されないことを指摘している。

先述したTake-Twoの訴状より

また利用目的・利用必要性という観点で言うと、『RDR2』は1800年代後期の西部開拓時代を描く作品であり、当時のピンカートン探偵社を描写することは、あくまでも本作の世界観構築・芸術的表現の一部であると説明している。事実、作中ではピンカートン探偵社に限らず、歴史上の事件、当時のものを再現した武器・楽器・音楽などが数多く登場する。

またピンカートン探偵社所属のキャラクターが登場するのは本作の106ミッション中10ミッションのみであることや、ピンカートン探偵社に関する描写は他の映画や小説にてふんだんに取り入れられてきたこと、『RDR2』の宣伝活動の一部としてピンカートン探偵社の名を利用した実績はないことなどを反論材料として挙げている。

ちなみにTake-Two/Rockstar Gamesが提出した訴状では、『RDR2』について「本質的にはインタラクティブ・フィルムである」と説明されている

ピンカートン探偵社(Pinkerton National Detective Agency)とは、19世紀から20世紀初頭にかけて名を広めた米国の私立探偵社/警備会社。業務内容は軍の請負業務から政府付けのボディーガード、スパイ活動など多岐に渡る。西部開拓時代と関わる部分で言うと、ジェシー・ジェイムズ、ブッチ・キャシディ、サンダンス・キッドといったアウトローの捜索において活躍したと伝えられている。その後、20世紀に入ってからは身辺警備業務に集中するようになり、1999年にはスウェーデンの警備会社Securitas ABに買収された。現在は民間企業向けのリスクマネジメント・サービスを提供するPinkerton Consulting & Investigationsとして活動している。

ピンカートン探偵社は、当時の米国における法執行を描く上では外せないほどに影響力の大きい存在であったこと、数々のストライキや米国における歴史的事件に関わっていたこともあり、先述したように西部劇を含む19世紀~20世紀初頭を舞台とした映画・小説・TVドラマにて繰り返し言及・描写されてきた。ゲームにおいては『RDR2』のほか、『バイオショック・インフィニット』にて主人公ブッカー・デュイットが元ピンカートン探偵社所属という設定になっている。歴史物のエンターテインメントにて多用されてきたこともあり、仮に今回のPinkerton側の主張が通るとなれば、『RDR2』にとどまらず、創作物における歴史描写という観点から大きく影響を及ぼすことになるかもしれない。