ゾンビサバイバル『OVERKILL’s The Walking Dead』の売上不振を受け、Starbreezeがコスト削減とコアビジネスへの注力を表明

スウェーデンに拠点を構えるStarbreeze Studiosは11月23日、事業におけるコストの見直しおよび削減への取り組み、そして今後はコアビジネスに注力していく方針を明らかにした。今年11月にPC向けにリリースした『OVERKILL's The Walking Dead』の不振が影響しているようだ。

『PAYDAY』シリーズなどで知られるスウェーデンのパブリッシャー/デベロッパーStarbreeze Studiosは11月23日、事業におけるコストの見直しおよび削減への取り組みを開始し、そして今後はコアビジネスに注力していく方針を明らかにした。発表の中で同社は、今年11月にPC向けにリリースした『OVERKILL’s The Walking Dead』の売れ行きが事前予想を下回ったことに言及しており、これが今回の方針転換の引き金を引いたようだ。

『OVERKILL’s The Walking Dead』は、Robert Kirkman氏の人気コミック「The Walking Dead(ウォーキング・デッド)」をベースにした4人協力プレイ対応FPSゲームで、Starbreeze傘下のOVERKILL Softwareが開発を担当している。舞台となるのは、アウトブレイク後のアメリカ・ワシントンD.C.。死者が蘇り、ウォーカーとして街中をうろついているなか、それぞれ異なるバックストーリーを持つ主人公4人が協力してサバイバルをおこなう。ミッションをこなして物資を確保したり、生存者を救出しながら、拠点となるキャンプを強化するのだ。この荒廃した世界では、ウォーカーだけではなく生き残ったほかの人間も脅威となる。

Starbreezeの見込みを下回ったという本作の売り上げについて、具体的な数字は明かされていないが、同社は中国やロシアといった定価の安い国々でのシェアが予想外に大きかったことを一因として挙げている。またSteam Databaseによると、本作の同時プレイヤー数のピークは約1万4000人。直近24時間では約4000人となっている。これらの数字は特別悪いというほどではないものの、マルチプレイを前面に押し出した新作としてはやや寂しい数字である。ちなみに、『PAYDAY 2』の直近24時間のピークプレイヤー数は約1万6000人。同社は本作について、『PAYDAY 2』以来最大のタイトルであると意気込んで送り出したが、「ウォーキング・デッド」のIPをもってしても、発売から5年以上経った同作に及んでいない状況だ。

『PAYDAY 2』

本作の評価についても、レビュー集積サイトMetacriticのスコアは52とあまり芳しくない。友人との協力プレイをやり込んでいけばスリルや楽しさを見出せる点など評価されている部分もあるものの、サバイバルゲームとしてありきたりで、「ウォーキング・デッド」の世界観を十分に活かしきれていないことや、単調なミッションなどが評価を下げる要因となっている。またSteamでは多くのユーザーレビューが投稿されており、現時点で「賛否両論」となっている。

Starbreezeの株価は、『OVERKILL’s The Walking Dead』の発売に向けて値を上げ、1株あたり8.14スウェーデン・クローナを付けたものの、ローンチを境に一転して値を下げ続け、直近では2.37スウェーデン・クローナにまで落ち込んでいる。今回の発表の中で同社CFOのSebastian Ahlskog氏は、本作の低調なパフォーマンスは、今期の決算にマイナスの影響を与えるだろうとコメント。一方で、今期の利益(EBITDA)全体については好調な見通しのままであるとし、また来期には本作のコンソール版の販売を担当する505 Gamesから1000万ドルのライセンス料が入る予定だとしている。

同社は、今回発表した事業コストの見直しと削減について具体的なことについては言及しなかった。また、今後注力していく必要があるとしたコアビジネスについても、同社にとって重要な内製および外製のゲームを届けていくことだとするに留めている。現在開発中のStarbreeze/OVERKILLタイトルとしては、『PAYDAY 3』や『Storm』『Project Crossfire』『Geminose』『PAYDAY Crime War』がある。また、Double Fine Productionsの『Psychonauts 2』や、OtherSide Entertainmentの『System Shock 3』などの販売を担当する予定だ。今後、これらの計画になんらかの影響があるのかどうか注目されるだろう。

このほか、StarbreezeはAcerとのジョイントベンチャーとしてStarVR Corporationを設立してVR事業を展開しているが、ちょうど今月9日に、拠点とする台湾にて上場取り消しをおこなっている。VR業界の状況や、同社のビジネス戦略を理由としているが、今回のStarbreezeの方針転換に関連した動きかどうかは不明である。

『OVERKILL’s The Walking Dead』については、サービスとして運営する中で現在いるプレイヤーを大事にし、ゲームの改善と新たなコンテンツ制作のために全力をもって取り組んでいくとのこと。実際、本作は発売以来矢継ぎ早にアップデートを配信し、多くの調整を重ねている。また、本作はシーズン制で展開されており、現在のシーズン1は10種類のエピソードを収録。Starbreezeは、シーズン2についても計画通り配信するとしており、9つの追加エピソードとゲームの改善により評価を持ち直したいところだろう。なお、本作はPS4版がスパイク・チュンソフトから2019年2月7日に国内発売予定となっている。

Taijiro Yamanaka
Taijiro Yamanaka

国内外のゲームニュースを好物としています。購入するゲームとプレイできる時間のバランス感覚が悪く、積みゲーを崩しつつさらに積んでいく日々。

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