株式会社ゆめみが、あらゆる作業を自動化させる工業SLG『Factorio』を用いたゲームプレイ人材採用を開始

IT企業ゆめみは、エンジニアの新卒及び中途採用活動の一環として、「ゲームプレイ採用」を開始した。応募者はPCゲーム『Factorio』をプレイし、そのプレイ状況を履歴書にかわる書類として提出。その内容を、ゆめみが確認することで選考を進めるという、かなりユニークな採用方法だ。

東京および京都に会社を構えるIT企業ゆめみは、エンジニアの新卒及び中途採用活動の一環として、「ゲームプレイ採用」を開始した。同社の採用施策第3弾として始まったこのゲームプレイ採用においては、応募者はPCゲーム『Factorio』をプレイし、そのプレイ状況を履歴書にかわる書類として提出。その内容を、ゆめみが確認することで選考を進めるという、かなりユニークな採用方法だ。なお今回の採用にあたっては『Factorio』の開発元であるWube Softwareの許可を得ているとのこと。

『Factorio』はSteamで早期アクセス販売中のシミュレーションゲームだ。未知の惑星に不時着した主人公が、生き残るために現地の資源を集め、技術開発をおこなう。木を伐採したり鉱石を採掘したりといった地道な作業から始め、新たな技術を研究開発する。余裕ができれば、資源の掘削から運搬、精製、生産などをおこなう機械・ロボットを開発することが可能。最終的にそれらを組み合わせることであらゆる作業を自動化することができる。この自動化が非常に重要になっており、惑星を発展させるためには、自動化を用いた製造の量産化を積極的に狙っていく必要がある。そこが本作の最大の特徴であるといえる。Steamのレビュー評価は極めて高く、『RimWorld』などと並ぶ定番シミュレーションゲームのひとつだ。

ゆめみの通常の採用フローの中には、応募者が提出したソースコードをレビューするプロセスが存在しているが、未経験者の場合は経験を積んでいない以上ポテンシャルを判定するのが難しいという。この企画を発案した、たるはちこと仲川樽八氏は、『Factorio』のゲームデザインに注目。エンジニアとしてのポテンシャルはソースを書くこと以外にも、『Factorio』のゲームプレイでも判断できると氏は考えたのだ。たとえば、序盤で飽きてしまう場合はエンジニア適性なし。半自動化まで進められれば適性あり。さらには製造品量産化のための最適化を目指した試行錯誤までできれば、適性が非常に高いといった具合だ。この適性具合についての判断基準はあくまでも氏の感想であるようだが、『Factorio』を遊び進めていけば自動化のプロセスを踏むことは免れない。作業の効率化を楽しめるユーザーのためのゲームであることを考えると、採用の意図がはっきりとわかるだろう。

面白いのは、ゆめみの採用エントリーフォームより応募することで、Steamのフレンド申請を介して、3000円で販売されている『Factorio』のゲームキ―を入手できるが、ゲームをもらったからといって必ずしも採用プロセスを進めなければいけないというわけではない点。ゆめみの担当者に“ゲームキーの無料入手が可能であるリスク”について訊ねたところ、「あまり深くは考えていません(笑)」との回答をいただいた。ゲームキーの申請を行った者が最終的にゲームプレイ採用に応募するかは会社がコントロールできるものではないということ、かつ話題性が十分にあったということで、ゆめみの代表取締役の片岡俊行氏も企画発案者の仲川氏も、ゲームを楽しみ気軽に応募してほしいと考えていると話す。ゲームの入手申請やゲームプレイの条件などについても今後設けることは考えていないという。

『Factorio』を入手するには、エントリーフォームを通じた応募や、Steamのフレンド申請などいくつかのプロセスをこなす必要があるが、ただゲームをもらいたいだけのユーザーが応募してくる可能性まで許容するというのは、なかなかに太っ腹な決断であるといえるだろう。

なお、社内の承認プロセスのスピード感についてもきいてみたところ、企画立案から承認まで要した期間はおよそ1か月ほどであるとのこと。企画を考え、社内SNSでエンジニアの反応をチェック。私物のPCを使って『Factorio』をプレイしながら社内にて“普及活動”をおこない、社内委員会の会議で企画を打診したという。委員会には前出の代表取締役・片岡氏が参加しており、代表承認を得たのち、資料を作成し人事へ企画を提出し、最終的な承認がおこなわれたという流れのようだ。なお、仲川氏の普及活動の甲斐もあってか、社内の『Factorio』プレイヤーは10名にのぼるとのこと。仲川氏の企画・実行力、そしてゆめみの社内組織の柔軟性があったからこそ、実現された採用方式といえるかもしれない。

プレイ規定についても緩く、攻略サイトの閲覧は可能でプレイ時間は不問。クリアしている必要もないという。ただし、基本設定としてゆめみが指定した「資源豊富/ピースフルモード」のマップでプレイする必要があるので、この点は注意する必要がある。採用基準としては、プレイ時間やスクリーンショット数枚、ゲームのレビュー、プレイに関して気をつけたことや感想などから総合的に判断するという。採用基準ははっきりと設けられていないとはいえ、『Factorio』の世界に順応できるかどうかが、最初のスタートラインであることは間違いなさそうだ。

ゆめみ採用ページはこちらから確認可能。新卒・中途採用両方での利用が可能であるようなので、『Factorio』のプレイに自信のある方は、ぜひ応募してみてはいかがだろうか。

Ayuo Kawase
Ayuo Kawase

国内外全般ニュースを担当。コミュニティが好きです。コミュニティが生み出す文化はもっと好きです。AUTOMATON編集長(Editor-in-chief)

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