『龍が如く6 命の詩。』海外版の販売本数は、国内版と同水準の成功を収める。海外展開に手応えをつかむセガはローカライズを重要視
セガサミーホールディングスは10月15日、統合レポート2018を公開した。投資家向け情報として、役員紹介や現状の分析、今後の展開などセガサミーホールディングスの動向を網羅的に紹介している。その中で、セガグループの欄では、海外展開の成功について紹介している。
「世界で支持される セガのモノづくり」と題したセクションでは、セガグループに文化として根付くモノづくりへのこだわりが、海外でも受け入れられ、海外販売にも結びついていることを説明している。その成功例として、『龍が如く6 命の詩。(Yakuza 6: The Song of Life)』の海外版の販売本数が国内版と同水準を記録していると報告した。これらのシリーズは、かつては売上のほとんどを日本市場が占めており、欧米市場を意識して開発してきたわけではないと強調。日本のファンに支持されるよう、モノづくりを地道に積み重ねていった結果、日本の人気タイトルというだけではなく、洗練されたゲームセンスがひとつの作品として認められ、海外のファンにも支持を受けることができたと手応えを語っている。
海外版に関する具体的な数字は明かされていないが、セガゲームスは発売翌週の2016年12月16日に、『龍が如く6 命の詩。』の国内及びアジア地域の累計本数が50万本を突破したことを明かしていた。あくまで台湾・香港・東南アジアなどアジア地域を含んだ数字であるが、マーケット規模を考慮すると、このうちの多くが日本での数字であると見て取れる。この数字は、海外版の売上水準の参考にできるかもしれない。
海外展開においては、Steamなどによる安定的なリピート販売により収益性にも効いているとも言及している。前出の『龍が如く(Yakuza)』シリーズはSteamでも国内を含めた販売に進出。『戦場のヴァルキュリア4』や『シャイニング・レゾナンス リフレイン』を販売し、上々の評価を獲得している。『Yakuza 0』においてはローンチ時に数多くの不具合が報告されていたり(現在は多くが修正済み)、日本版は他国版と比べてもなかなかに定価が高かったりと、いくつか気になる点はある。しかしながら、不具合に関してはその後の丁寧な対応もあり、セガはセガヨーロッパのタイトルをSteamで多く販売してきたが、“国内タイトルを販売するセガ”としても存在感を見せつつある。
また海外展開の成功においては、モノづくりに加えて、もうひとつの理由があるとしている。セガグループに限らず、国産タイトルを海外で発売するにあたっては、それぞれの国や地域や文化にあわせてゲームをローカライズすることになる。同グループには、子会社であるアトラスが米国カリフォルニア州に有するスタジオがあるという。日本のゲームと米国のゲームの双方をよく理解し、日本のゲーム独自の世界観を現地ユーザーに的確に伝わる形でローカライズする力を持っているとのこと。独自の世界観が反映されたローカライズによってそのゲームが持つ面白さ、価値を届けることができ、現地ユーザーからの高い評価を獲得しているようだ。また発売においては、製品開発の途中段階からローカライズチームと内容を共有し、ゲームの完成前から翻訳を開始することで、速やかな海外版のリリースを実現しているようだ。
ローカライズについては、いかに日本でヒットしたとしても、ローカライズが不十分なままでは、世界のファンの支持を得ることは困難であることも強調している。弊社アクティブゲーミングメディアのイバイも、弊誌にて多言語ローカライズを進めるよりも、まずひとつの言語の質を高めるべきであると発言していた。グローバル展開をする上では、しっかりとコストをかけてローカライズをすることが、成功につながっていくのかもしれない。
セガオブアメリカは、木村拓哉氏が主演を務める、龍が如くスタジオの最新作である『JUDGE EYES:死神の遺言』を欧米向けに2019年にリリースすることを発表済み。欧米向けのトレイラーは日本の映像にYouTubeの字幕をつけた簡易的なローカライズであるが、それでもゲームプレイトレイラーは約9万3000回にのぼり、期待されていることがうかがえる。手応えつかみつつあるセガグループによる、国産タイトルの輸出には今後も注目していきたい。