『ウィッチャー』の報酬をめぐり原作者とCDPRの関係が複雑化していることを受け、有名作家が名乗り。「ミストボーンの権利を無料であげたい」

今月10月2日、小説「The Witcher(ウィッチャー)」の小説家であるAndrzej Sapkowski氏が、同小説を原作としたゲームを販売するCD PROJEKT REDに対して、さらなる報酬を求めていることが判明した。複雑な状況になりつつあるが、とある小説家がならば自分の小説をゲームにしてほしいと名乗りを上げている。

今月10月2日、小説「The Witcher(ウィッチャー)」の小説家であるAndrzej Sapkowski氏が、同小説を原作としたゲームを販売するCD PROJEKT RED(以下、CDPR)に対して、さらなる報酬を求めていることが判明した(関連記事)。現在結んでいる契約における支払いは十分なものではなく、さらなるロイヤリティを弁護士を介して要求した形だ。『ウィッチャー』シリーズはCDPRの看板ともいえる作品。累計で2500万本以上を売り上げているほか、『グウェント ウィッチャーカードゲーム』など派生タイトルも生まれている。このタイミングで原作者との関係が複雑化したことにより、多くのファンは困惑しているようだ。

Brandon Sanderson(ブランドン・サンダースン)氏も、困惑するファンのひとりだった。サンダースン氏は、アメリカ生まれのファンタジー/SF作家。特殊能力である合金使いをテーマに据えたファンタジー「ミストボーン」シリーズや「王たちの道」シリーズを執筆し、数々の賞を獲得してきた巨匠だ。冗談をまじえながら、その心境をredditにて語った。

サンダースン氏は、Sapkowski氏とCDPRの一連の話を見たときに「ミストボーンの権利を移譲いたします……」とメールを書こうとしたが、大騒ぎになるだろうとしやめたと茶目っ気たっぷりに話し始めた。しかしやがて真剣なトーンで、CDPRと仕事ができることが、作品の原作者としていかに光栄なことであるかを静かに語りだす。『ウィッチャー』シリーズのような高品質で、小説を原作としたゲームとして過去最高峰の作品が市場に出回ることは、小説・映画・ゲームを含む業界全体にとっても利益になるだろうとコメント。すばらしいゲーム化がもたらす文化的な影響は絶大であるがゆえに、自分の本の権利をCDPRに無料で明け渡すことを真剣に検討してもよいくらいだとラブコール。ただし、CDPR自体はもうファンタジー作家との仕事に興味はないだろうとするほか、新しいオリジナルIPを持つことに関心があるのではないかと、実際にCDPRと仕事をすることは現実的ではないと冷静にコメントしている。

数々のヒット小説を手がけてきたサンダースン氏であるが、自身の作品のビデオゲーム化には未練があるようだ。「ミストボーン」シリーズはアナログゲームとして何作品かリリースされているものの、ビデオゲームである『Mistborn: Birthright』は2012年にPS4/Xbox One向けにLittle Orbitから発表されたのち、開発中止となった。「王たちの道」シリーズをベースにしたVRゲーム『The Way of Kings: Escape the Shattered Plains』が2018年3月にArcturus Studiosから発売されているが、こちらも短編であるうえに、評判はあまり芳しくない。同じ小説家として、丁寧にゲーム化されヒットしている『ウィッチャー』の原作者であるSapkowski氏に対し、何かしら思うところがあるのかもしれない。

『The Way of Kings: Escape the Shattered Plains』

いざこざが報じられてからも、Sapkowski氏の契約内容への同情はあれど、CDPRの手腕や功績を評価する声が圧倒的に目立つ一連の騒動。Sapkowski氏が生み出し、CDPRが育て羽ばたかせたともいえる『ウィッチャー』シリーズの問題の早期解決を、多くのファンが望んでいることだろう。

Ayuo Kawase
Ayuo Kawase

国内外全般ニュースを担当。コミュニティが好きです。コミュニティが生み出す文化はもっと好きです。AUTOMATON編集長(Editor-in-chief)

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