Kickstarterで18万ドルを集めた宇宙ゲームが開発中止、6年にわたる苦闘のすえに力尽きる
個人開発者Josh Parnell氏は9月29日、『Limit Theory』の開発を中止することを発表した。海外メディアのRock Paper Shotgunなどが報じている。『Limit Theory』は、オープンワールド型の宇宙RPGだ。自動生成された広大な宇宙を自由に探索する。高機能AIや独自のエコシステムが用意されており、自由度の高さと複雑さを併せ持った作品を目指して開発されていた。
2012年にはKickstarterで18万7000ドル(約2000万円)を集め、6年にわたり開発され続けていたが、プロジェクトは成就することなく幕を下ろすことになる。Parnell氏は、「資金的にも、精神的にも、肉体的にも、限界がきてしまった」と語る。Kickstarterで集めた資金は尽きており、個人の貯蓄を使い開発してきたが、それもすべてなくなってしまったという。バッカー向けの返金も、おそらくされないとみられる。「『Limit Theory』は、完成させることができない」と告白し、その心境をKickstarterのアップデートページにて語っている。
『Limit Theory』は、Josh Parnell氏の個人プロジェクトだった。クラウドファンディングにて目標額の3倍以上を集める大きな成功を収め、野心的なゲームを作るべく、開発を進めていた。当初は「ひとりの開発者が、小さな予算で自動生成の力を使い、どこまでのゲームを作れるかを人々に見せたい」とも意気込んでいた。しかし氏は、ひとりでコードを書き続けるうちに、やがて疲弊していく。2017年にはGameindusry.bizに対し、精神疾患を患い、苦しんでいたことを告白。同紙に、完璧主義者として、そして個人として開発していく苦悩を明かしていた。この時点では精神的な病を克服したことを示唆していたが、最終的には自分の限界を感じざるを得ない状況にまで深刻化していたようだ。
開発中止にあたりParnell氏は、『Limit Theory』のソースコードを公開すると語っている。そのソースコードは、ゲームを動かすことができず、中途半端でありながら膨大なコードであり、誰かの役に立つとは思えないとしながら、“胸のつかえ”を外すために、公開する予定であると語っている。「深く失望させたことを残念に思う」と出資達に詫びながら、いつまでも達成できない偉業を目指すために、自分を破壊し続けることはできないと悲痛な心の叫びをつづっている。
ゲーム開発におけるクラウドファンディングは、大きな成功が難しくなった現在は、開発費の部分的な援助を目的とするものが多いが、盛んだった時期はゲームを作るための全面的な資金を募るケースが多かった。『Limit Theory』はまさしくそうしたケースにあたるだろう。Parnell氏は、Kickstarterキャンペーンページ(2012年当時)にて「配信時期は、2014年初頭。非現実的な考えは好きではないので、時間がかかるとみて、現実的にこの時期を設定した」とつづっていた。最終的には、リリース予定日の4年半後に開発が中止されることとなった。
Kickstarterにおける告知ページでは、Parnell氏の体調を気遣う、敬意を払う出資者のコメントが、多く寄せられている。もちろん、お金を出したものが製品にならないことを憤る声もあるが、同情的な声がほとんどだ。Parnell氏の健康状態を、多くのユーザーが認識していたからだろう。あらためて、Kickstarterで出資する難しさ、そして資金を集めて開発する難しさが認識できるかもしれない。