自由に歌を歌い進むミュージカルアクション『Wandersong』Steamにて発売。歌だけが取り柄の吟遊詩人が、歌声の力で人々を救う
インディーデベロッパーのGreg Lobanov氏は9月28日、ミュージカル・アドベンチャーゲーム『Wandersong』をSteam(Windows向け。のちにMac版も予定)にて発売した。価格は1980円。海外では、Humble BundleをパブリッシャーとしてNintendo Switch向けにもリリースされている。
『Wandersong』の主人公は、とある吟遊詩人の男。ある日、彼は女神Eyaの使者だという女性に出会う。Eyaは、創造の歌を歌いこの惑星を生み出した女神だ。そして使者によると、Eyaは古くなった今ある惑星を滅ぼし、別の新たな惑星に作り変えるため、近々また歌を歌うことになるという。使者はそれを止めることができる勇者を探していたが、出会った吟遊詩人は剣もまともに振ることができない非力な男だったため見込みなしある。
とはいうものの、彼の美しい歌声に惹かれた使者は、Earthsongを歌うことができれば、この惑星を救うことができるかもしれないと教えてくれる。ただしEarthsongは、この惑星に生きるものすべての意思が組み合わさって奏でられるもので、特定のメロディーも存在せず、歌うことは非常に難易度が高いという。それでも、歌うことだけが取り柄の吟遊詩人の男は、自分ならできると信じて旅に出る。
本作は、横スクロールの2Dアクション・アドベンチャーゲームで、ジャンプアクションを駆使しつつ、主人公の吟遊詩人の歌を活かしたゲームプレイが大きな特徴である。アナログスティックを倒すと(ゲームパッドでプレイする場合)、主人公の周囲に8色に色分けされたリングが出現。それぞれの色は音階を表しており、そのままスティックで色を選択すると主人公が歌声を上げる仕組みだ。いつでもどこでも歌うことができるが、これをどうゲームプレイに活かすのかというと、たとえば通常のジャンプでは届かない段差があり、側には鳥がいる場所があるとする。鳥は特定の音階の音を好み、それが吹き出しに表示されているため、その音階と同じ歌声を発すると、喜んだ鳥の力を借りて大きくジャンプして段差を越えられる。
ほかにもたとえば、歌声に反応して茎を伸ばす大きな花もあり、その花びらの上に乗って歌を歌うと、エレベーターのようにして移動できる。さらに、歌のリングで選択する方向に従って茎を伸ばすため、入り組んだルートを登ることも可能である。本作の世界には、ゲームプレイへの影響の有無に関わらず、このように歌声に反応するオブジェクトがさまざまある。
本作はいくつかの章に分かれて物語が進む。旅先にて吟遊詩人は多くの人(あるいは人でないものも)に出会い、それぞれが直面している困難に対して手助けすることになる。もちろん彼の歌声で、である。たとえば、突然多くの幽霊が村を襲い、もう世界の終わりだと怯える村人たちに対しては、幽霊退治を買って出る。その幽霊に対峙すると、特定のメロディーを歌ってくるため、同じ音階の歌声で返せば対抗できる。幽霊にはいくつかのタイプがいるが、基本的に歌のリングの方向を示してくれるので、音で聞き分ける必要はない。
そのほかにも、吹き飛ばされそうな強風に見舞われる場面では、風が吹いてくる方向にカウンターを当てるように歌のリングの方向を入力し、歌の力で耐えながら進んだり、歌のリング上に降ってくるノートに合わせて入力して歌う、音楽ゲームのようなパートがあったりと、バリエーション豊富である。また、出会う人々との会話の中では回答に選択肢が与えられる場合があり、それも歌のリング上に表示され、歌って会話を進める形となっている。本作ではこのように、歌声をどう活かせばいいかを見極め、そして人々を助け、愛する惑星を救うのだ。
『Wandersong』は、2016年に実施したKickstarterキャンペーンにて開発資金を得ることに成功し、音楽以外は開発者のGreg Lobanov氏ひとりによって制作された。広大なアメリカ大陸をバイクで横断する旅から着想を得て、数多くの人々と出会いながら旅をするゲームにしたそうだ。またストーリー面に関しては『MOTHER2 ギーグの逆襲』や、アニメ「となりのトトロ」「オーバー・ザ・ガーデンウォール」などを参考にしたという。
本作は、色紙を切って貼り合わせたようなカラフルなグラフィックスタイルや、どこでも好きに歌うことができる(ゲームを進めればダンスも可能)ゲームプレイ、また旅先で出会うユニークなキャラクターたちとの掛け合いなど、とても楽しげな雰囲気に包まれた作品である。一方で、旅を進める中では、一見能天気で前向きな主人公の吟遊詩人自身の心が大きく揺れ動く場面もあり、物語面にも力を入れた作品となっているようだ。まだあまり多くはレビューされていないが、なかなかの高評価を得ているようで(Metacritic)、興味のある方はチェックしてみてはいかがだろうか。