約250人の大規模なレイオフを実施したゲームスタジオTelltale Gamesを相手に、元従業員が集団訴訟を起こす。事前予告なく整理解雇されたことを受けて

『The Walking Dead』『The Wolf Among Us』といったアドベンチャーゲームの開発元として知られるTelltale Gamesが大規模なレイオフに踏み切ったことを受け、Telltale Gamesの元従業員が集団訴訟を起こした。事前予告なく解雇されたことを受けて起訴した形となる。

先日Telltale Gamesより解雇された元従業員のVernie Roberts氏が、同社に対し集団訴訟を起こした。Polygongameindustry.bizなどが報じている。原告であるRoberts氏が拠り所としているのは、米国労働法のWARN Act(Worker Adjustment and Retraining Notification Act of 1988)。WARN Actは、大規模なレイオフや事業所の閉鎖にともない従業員を解雇する際には60日前までに対象者に解雇予告を行う必要がある旨を定めている手続的規制である。このたびRoberts氏は、Telltale Gamesが事前予告なく原告を解雇したことを受けて訴状を提出している。

『The Walking Dead』『The Wolf Among Us』といったIP物のアドベンチャーゲームの開発・販売元として知られるTelltale Gamesは9月21日、スタジオの大部分を閉鎖することを発表。スタッフ約250人を解雇し、取引先やパートナーへの義務を果たすため25人だけを残し、実質上のプロダクション停止へと陥った(関連記事)。同社は対象者への解雇予告なくレイオフを決行しており、各種福利厚生を受けられるのも月末までとなる。

『The Wolf Among Us』

米国連邦法上は、整理解雇を行う場合でも、直前まで出資を募るため/事業獲得のため働きかけていた場合(かつ解雇予告を出すと、そうした活動に支障が出る場合)や、予測不能な事情によりレイオフ・閉鎖がやむを得なかった場合には、解雇予告義務は免除される。後述するように、Telltale Gamesがそうした状況化にあったことを証明できれば、訴えは退けられると考えられている。

ただし、Telltale Gamesの本社所在地であるカリフォルニアの州法(California WARN Laws)では、この例外措置が当てはまらない。Roberts氏は、連邦法・州法の両レベルから訴えを起こしていることから、連邦法上の判決問わず、州法レベルでは罰せられる可能性がある。

California Labor Code Section 1402.5 (d)により、上述した理由に基づく免責は、California Labor Code Section 1400 (d)で定義されている大規模なレイオフ(30日間内での50人以上の従業員の解雇)においては適用されないと規定されている。

Telltale Gamesがレイオフ実施直前まで必要資金を募るための交渉を続けていたのかどうか、という点に関しては、Telltale Gamesの共同創設者Dan Connors氏が海外メディアVarietyに対し、「最後の出資候補者が突然抜けたため、プロダクションを停止するほかない状況に陥ってしまった」とコメント。Connors氏は具体的な企業名を出していないが、Varietyは独自ソースをもとに、出資を断ったのはAMCとSmilegateの二社ではないかと述べている。

法律事務所Hoeg Lawの弁護士Richard Hoeg氏はGameDaily.bizに対し、Telltale Gamesは連邦法レベルでは訴えを退けられるかもしれないが、州法レベルでの免責は難しいだろうとコメントしている(GameDaily.biz)。上述したようにTelltale Gamesは直前まで資金調達のため活動していたと考えられるため、連邦法上は責任が免除され得るが、先述したように州法上はそうはいかないからだ。

※『The Walking Dead: The Final Season』エピソード2トレイラー

Roberts氏の訴えが認められた場合、Telltale Gamesは原告に対し、解雇予告を行わなかった60日間分の給与・賞与等を支払う責任が発生する。またカリフォルニア州法レベルでは、レイオフから3週間以内に支払い責任を果たさなかった場合、対象期間1日につき最大500ドルの罰金が科される可能性がある。なおレイオフが実施された際には解雇者数は約250人と報道されていたが、訴状では従業員275人分の請求となっていることから、スタジオに残っている25人が将来的に集団訴訟の原告側に加わることが想定されていると考えられる。

エピソード1・2まで配信済みであったシリーズ最新作『The Walking Dead: The Final Season』は各種販売プラットフォームにて販売停止済み(欧米圏のNintendo eShopにおいては本稿執筆時点でまだ販売中)。なおTelltale Gamesは、新たなパートナーを探し、続くエピソード3・4を何らかの形で完成させたいと発言。ストアから削除されたシーズンパスの今後については、海外メディアKotakuに対し、近日中に何かしらの発表を行う予定であるとコメントしている。

同社から解雇されたキャラクターアーティストのBrandon Cebenka氏は、「ゲームをリリースするためにどれだけ徹夜と休日勤務を重ねても、解雇手当をもらうことはできなかった。みんな残業代の発生しないサービス残業はやめた方がいいよ、健康を大事にすべきだ。会社は従業員のことなんて考えてくれないから」とツイートしている。従業員に対するケアが不十分であったことが露呈しつつあることもあり、『The Walking Dead: The Final Season』エピソード3・4を完成させたいと語る公式ツイートに対しても、先にすべきことがあるのではないかと冷ややかな反応が送られている。厳しい目にさらされている中、残されたTelltale Gamesは自らが置かれた厳しい状況にどう対処していくのだろうか。

Ryuki Ishii
Ryuki Ishii

元・日本版AUTOMATON編集者、英語版AUTOMATON(AUTOMATON WEST)責任者(~2023年5月まで)

記事本文: 1953