Valveは「個人の好み」と「成人向け」ふたつのフィルターでSteam整備を進める。「成人向け性的ゲーム 」を容認するSteamストアは実現されるか
Valveは9月6日、Steam Blogにて現在強化を進めているフィルタリング機能についての進捗を報告した。Valveは6月に、Steamにおいては「荒らしと違法行為」以外のすべてのコンテンツを容認していく意向を発表した(関連記事)。「すべてのコンテンツ」には、暴力コンテンツや性的コンテンツが含まれており、それらを容認するという姿勢が世界的な注目を集めた。
しかし、この容認を実現する上では、フィルタリングが不可欠であるともValveは述べていた。荒らし(トローリング)と違法以外のすべてのコンテンツにアクセスできるストアを実現するために、フィルタリングする機能を充実させ、ユーザーが自ら見たい/見たくないコンテンツをコントロールできるようにする仕組みだ。Valveは以前よりこのフィルタリングについては段階的に実装してきており、今回その成果について報告したわけだ。Valveが進めているフィルタリングについての機能は、いくつかにわけられる。
個人の好み(嗜好)でフィルタリング
ひとつは、ユーザーの個人的な嗜好をより反映させるフィルタリングだ。たとえば、もともとキュレーションなどで表示されるゲームについては「興味なし」と選択することによって、同じようなタイトルの表示が少なくなる機能があったが、それがさらに強化された。無視することを選択した際に、記録されるタイトル数が3件から10件へと変更されたほか、「無視する」と選択すれば、単に表示されづらくなるだけでなく、Steamストア自体から表示されなくなる。ストア検索時は、タイトルを除外すれば半透明で表示され、タグ(ゲームタグや開発者など)を除外すればそもそも検索をしてもタイトル一覧に表示されなくなる。これらは個人設定からもカスタマイズ可能。
成人向けコンテンツのフィルタリング
そしてもうひとつ実装されているのが、成人向けコンテンツに対してのフィルタリングだ。個人設定には「成人向けコンテンツ」「暴力表現やゴア表現の頻出」「ヌードまたは性的なコンテンツ」「Adult Only Sexual Content(成人向け性的コンテンツ )」という欄が設けられている。「成人向けコンテンツ」のチェックボックスは、暴力と性的コンテンツを包括する機能を有しており、これをオフにすることで両方のコンテンツが表示されなくなる(ストア検索時にも現れない)。「ヌードまたは性的なコンテンツ」は、ゲーム中で性表現があるコンテンツ(『The Witcher』など)で、「Adult Only Sexual Content」は性に大きくフォーカスを当てたいわゆるエロゲーに近い作品だ。さらに、これらのコンテンツを提供する開発者はその内容を説明することが義務付けられ、これまでと同様に年齢確認の認証プロセスも設けられている。
つまり、個人の嗜好のフィルターと、成人向けフィルター、主にふたつのフィルターによってユーザー自身が快適に閲覧できるSteamストアを提供しようとしている。単にユーザーがフィルタリングするだけでなく、たとえば似た傾向のゲームを表示しないように繰り返していると、Steamストアはタグから共通点を見つけ出し、そのタグを除外するように提案するなど、自動学習のような機能も用意されるようだ。
本当にすべてを容認できるのか?
Valveは6月に容認宣言をする一方で、それ以降の性的なコンテンツを含む美少女ゲーム(前出のAdult Only Sexual Contentがそれに近い)の配信を差し止めていた(関連記事)。美少女ゲームのすべてが差し止められているわけではないが、一度Valveの検閲対象になったコンテンツは、フィルタリングが完成し、その後コンテンツとしてどのような性質を持っているかを識別されるまで配信できないと告げられていた。
フィルタリングの強化は進んでいるが、差し止め中の『Shining Song Starnova』を代表に、多くの美少女の配信は、依然として差し止められたまま。Valveは今回の発表で、こうしたコンテンツについて「Valve のモデレーターがカタログを参照しつつ、ゲームが新しい要件に準拠していることを確認していくことになります。(Valve moderators will going back through the catalog and making sure games are complying with the new requirements.)」と曖昧な言葉で表現している。この「新たな要件」というのは、やや気になるところ。すべてを容認すると告知していた背景を踏まえると、「新たな要件」は前述した内容説明などゲーム内容以外での要件を指しているのかもしれない。
いずれにせよ、成人向けコンテンツをめぐる一連の騒動にひとつの答えが出ることは、間違いなさそうだ。フィルタリング機能はひとまず完成に近付きつつあるようだが、本当の意味で完成したといえるのは、差し止められていた成人向けコンテンツが配信された時だろう。中にはすでに4か月以上差し止め状態のタイトルを抱えるデベロッパーもいるだけに、Valveのフィルタリングにまつわる整理を催促する声は少なくない。一部例外を除く、あらゆるコンテンツを容認するSteamストアは、果たして本当に実現されるのだろうか。