ソフトウェアRainwayの開発者はTwitterにて、任天堂から承認を得られていないがゆえに、同ソフトのNintendo Switch版をアクティブに開発していないことを明かした。先日発表したXbox One版とAndroid版を積極的に開発していることを報告する一方で、Nintendo Switch版の開発状況を発表した。これまでNintendo Switch版の未来について曖昧な言葉を繰り返し続けてきたが、事実上の開発凍結状態であることをようやく公言した形だ。
We are currently actively developing Rainway for Android and the Xbox One. The Switch is not in active development as we have not received approval from Nintendo to do so yet. When we have an update, one will be posted.
— Rainway (@RainwayApp) September 3, 2018
Rainwayは、PC(Steam)ゲームを、さまざまなデバイスでプレイすることを可能にするソフトウェアだ。価格は無料。必要なものは、RainwayがインストールされたDirectX 11対応のGPU 搭載PCと、それぞれのデバイス(現時点では、Webブラウザ、Android、Xbox One)。PCで動作させているPCゲームを、ストリーミングにより該当デバイスにてプレイ可能にするという仕組みだ。PCゲームを遊べるソフトウェアであり、ゲームを動かす相応のスペックのPCと無線環境が必要になる。環境さえ揃えれば、高い解像度とフレームレート、低遅延でのストリーミングが実現する。
Rainwayは、その機能を聞くかぎりでは、「単なるストリーミングソフト」という印象を抱く人もいるだろう。先日の発表では、多岐にわたる機能を追加することが発表され、多機能なソーシャルゲームツールへと進化を遂げようとしているが、それでも発表時は単なるストリーミングソフト以上のものではなかった。Rainwayが注目を浴びたのはNintendo Switch対応を告知していたことにほかならない。
PCゲームをストリーミングでNintendo Switchにてプレイできる。そうしたふれ込みで、弊誌を含めたメディアの注目を集める成功にしたRainwayは、味をしめたかのようにNintendo Switchを主体としたプロモーションをとり始める。任天堂キャラクターを使ってSNSに意味深な投稿をしたり、「Nintendo Switchで遊びたいゲーム」を募るアンケート投稿したり。さらにはRainwayを用いて『ニーア オートマタ』や『オーバーウォッチ』、『Cuphead』をNintendo Switch上で動かす動画を投稿。プロモーションビデオでもNintendo Switchで『PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS』をプレイするシーンを収めており、任天堂の最新ハードを用いることで注目度を集めようとしていた。
https://twitter.com/RainwayApp/status/919521490160189442
一連の流れを見るに、当然発表時から任天堂からの承認を得ているものだと思われていた。しかしそうではないことが次第に明るみに出ていった。「任天堂といい話し合いができた」と話すなど良好な関係を示唆する投稿をおこなっていたものの、その後Nintendo Switch版について口を閉ざし、「Nintendo Switch版のことは任天堂にきいてくれ」とコメントすることを避けるようになった。任天堂との交渉を続けていることは報告していたが、今回の発表により約1年以上任天堂と交渉してもなお、承認が得られていないことが明らかになった形だ。
改めてNintendo Switch版が開発停止状態であるとTwitterにて発表されて以来、同ハード向けのリリースを待ちわびていたユーザーから、厳しい言葉が寄せられている。その批判の多くは、実現性の低い状態でありながらも、前述したようにNintendo Switchをプロモーションに利用していた点。「詐欺師」「ニセモノ」と辛辣なワードが並んでおり、期待していたユーザーの落胆の意図が強く伝わってくる。
Rainway開発者もこうした声に困っている様子を見せており、一連のリプライを集めて「任天堂さま!どうかこんな多くの声があるんですから、承認してください!」というリプライをニンテンドー・オブ・アメリカ宛に飛ばしていた(投稿は削除済み)。開発者にとっても、Nintendo Switch版はある種の呪縛のようなものなりつつある。とあるユーザーは「今回の発表については正直と呼べるものではない。これまでNintendo Switchを使い宣伝をしており、今はその可能性を排除しており、恥ずかしいものを隠そうとしている」と指摘。Rainway開発者は、そう思わせたなら申し訳ないとしながらも、隠す意図はなく、承認が下りるのを待ちながら、達成可能なプロジェクトに取り組んでいくとしている。
We're super sorry you see it that way, we're not trying to sweep anything under the rock, just working on more attainable projects while we wait (hopefully) for approval. I hope you understand.
— Rainway (@RainwayApp) September 5, 2018
ただし、Nintendo Switchに対応していない状態でも、Rainwayのプロジェクトは規模の拡大を続けている。スタートアップ企業としてシアトルにオフィスを構え、150万ドル(1億7000万円)の資金調達に成功し、スタッフを徐々に増員しながら開発が進行中(GeekWire)。すでに8万5000人のユーザーが同ソフトウェアを体験し、登録ユーザーの10万人の到達も視野にあるという。先日お伝えしたように、総合的なゲームツールを目指して開発が進められ、基本無料ソフトながら将来的には有料プランも追加される予定。iOSにも対応できるように、制作が進められている。まだマネタイズに至る段階ではないが、ビジネスとして期待を集めているのは事実だろう。それだけに、Rainwayが注目されるきっかけであるNintendo Switchは同ソフトにとって念願のはず。
承認を得ない段階から、開発者がNintendo Switchの対応を公言してしまったことにより期待を集め、がんじがらめ状態に陥ってしまっているRainway。Nintendo Switchでは、ニコニコ動画やHuluといった一部のソフトウェアが配信されているのみで、あくまでゲームタイトルの配信が優先されている。任天堂ハードで、ストリーミングながらPCゲームをプレイできるようになるという異例のソフトウェアがニンテンドーeショップにて配信される日は訪れるのだろうか。