監獄島サバイバル『SCUM』Steam早期アクセス販売開始。代謝から排泄までケアする徹底した身体シミュレーションが話題となり売り上げ好調

ハードコア・サバイバルゲーム『SCUM』のSteam早期アクセス販売が開始された。Twitch視聴者数は一時『フォートナイト』超え、ローンチ直後の同時接続プレイヤー数は約5万人という好スタート。代謝、体温、栄養バランスまでケアするこだわり抜いた身体シミュレーション機能が『SCUM』の特徴だ。

Devolver Digitalは現地時間8月29日、ハードコア・サバイバルゲーム『SCUM』のSteam早期アクセス販売を開始した。販売価格は2050円となっている(日本語非対応)。本作は数日前からTwitch配信者向けの先行配信を開始しており、一時は視聴者数20万人超えという『フォートナイト』を上回る数字を記録(関連記事)。その注目絶頂期をキープしたままローンチを遂げ、見事同時接続プレイヤー数5万人台のロケットスタートを成功させた。Devolver Digitalパブリッシュ作品史上最高の好スタートを切ったとも報告されている(公式ツイート)。

本作はGamepires/Croteam開発のオープンワールド・サバイバルゲーム。マルチプレイ/シングルプレイ対応、サーバー最大人数は64人、カメラは一人称視点・三人称視点切り替え可能となっている。ゲームの設定としては、「SCUM」(クズ野郎)という架空のリアリティショーの出演者として監獄島「SCUM」にぶち込まれた終身刑の囚人たちがサバイバル生活を送り、さまざまな行動を通じて「FAMEポイント」を集めつつ、島からの脱出を図るというもの。監獄島は144平方キロメートルと広大で、昼夜サイクルあり・天候変化ありのダイナミックなマップとなっている。Unreal Engine 4を採用しており、フォトグラメトリー技術を利用した美しい世界が広がっている。ロケーションのビジュアルとしては、フランス領ギアナ・カイエンヌならびに開発者が拠点を置くクロアチアの島々を参考にしたという。

※追記 2018/08/30 22:55
現時点では島から脱出する方法は実装されていない(Steamコミュニティスレッド

『DayZ』の登場以降、Steamでは大量のサバイバルゲームが配信されてきた。そんな中、『SCUM』はなぜこれほどまでに注目を集めることに成功したのだろうか。著名Twitch配信者を囲い込むマーケティング戦略もセールスに貢献しているとは思われるが、それ以上に、かねてから宣伝されてきた「究極のハードコア・サバイバル」ぶりが、熟練のサバイバルゲームファンの心をくすぐったのではないだろうか。わかりやすい例で言うと、本作では生存のために食料を食べるだけでなく、「何を」食べるかまでもが重要となってくる。

代謝、栄養、体温、体重、乾湿、排泄、嘔吐、心拍数など、人体に関わるありとあらゆる要素をシミュレートした本作は、もはや身体管理シミュレーションゲームとでも言うべきこだわりようを見せている。まずキャラクター作成画面では、年齢、体型、顔型、入れ墨などをカスタマイズできる。年齢や体型によって筋力、体力、機敏さ、知性が変動。キャラクター作成後も食生活や運動量によって無数にある身体パラメーターが変動し続け、筋力や体力といった基本性能が変わっていく。どんなにマッチョなキャラクターを作っても、たんぱく質や炭水化物を摂取できなければやせ細ってしまうわけだ。

メタボリズムシステムとして表示される身体管理用のパラメーター群には膨大な数の項目が設けられており、摂取/消費カロリー、各種ビタミン・ミネラルの接種量、タンパク質/炭水化物/脂肪のバランス、基礎代謝率、心拍数、血圧、呼吸数、酸素飽和度、胃の中で消化中の成分までをモニタリングできるようになっている。また頭を撃たれると知性が下がったり、顔を殴られて歯を失うと固形物を食べられなくなったりと、とにかく芸が細かい。排泄管理も必要となっており、食生活によっては急な下痢であたりを散らかしてしまうことも。そのほかお腹いっぱいの状態で飲食を続けると嘔吐してしまう。

こうして説明すると、管理項目が異様に多くマイクロマネジメントが面倒なゲームであるように聞こえるかもしれないが、現実世界に生きる人々がカロリー摂取/消費量や栄養バランスを分単位でモニタリングしないように、本作もデイトレーダーのように画面に張り付いて健康状態をウォッチしなくても生きていけるようになっている。スポーツ選手のように肉体管理を徹底したい方向けに、そのオプションを用意しているわけだ。

この綿密なメタボリズムシステムの構築にあたっては、コミュニティの助けも借りている。2017年には、ゲームをプレイするテスターではなく、実生活での水分摂取量と身体・メタボリズムへの影響を調査するための被験体という意味でのテスターを募集していたほど(Steam)。Devolver Digitalパブリッシュ作品らしい、真面目にイカレタこだわり。その徹底ぶりが話題となり、初動ブーストにつながったのだろう。

そのほか、プレイヤーは身体能力や知性の状態によってさまざまなスキルを習得していくことになる。ボクシング、射撃技術、持久力、隠密行動、運転、ロックピック、カモフラージュ、電子工学、生物化学、心理学、調理、医療など、過酷な状況下で生き抜くために技術を培い知識を蓄えていくのだ。監獄島には他の囚人たちだけでなく、バイオ・エンジニアリングにより狂暴化した野生動物、ゾンビ化した島の住民、TV番組という設定上マンネリ化を防ぐため送り込まれる重武装特殊部隊と遭遇することも。厄介な存在ではあるが、見方を変えればどれも貴重な食料とも言える。また厳重監視区域付近ではパトロール中の二足歩行メックに出くわすこともある。

地道な物資調達、狩猟、クラフトなどサバイバルゲームらしい要素は揃っており、素手同士の拳闘や銃火器に関してもリアリズムを追及している。ただこうしたサバイバルゲームでは、他のプレイヤーになかなか出会えなかったり、出会っても一瞬で射殺されたりして、思う存分に銃を撃つことができないことが多い。その点、本作にはゲーム内イベントシステムが用意されており、自由にPvPコンテンツを楽しめるようになっている。メニュー画面にあるイベントタブから、チームデスマッチやエリア制圧といったさまざまなルールのPvPイベントに参加して、同サーバーで遊んでいる他プレイヤーと思う存分にドンパチできる。敵を多く倒せばFAMEポイントがたまり、FAME値が高いプレイヤーを倒せば、それだけ自分のFAME値が上がる。

このFAME値は将来的に、イベント外の通常プレイ時に死亡した際に利用することになる予定だ。リスポーン時に経験値・獲得済みスキル・アイテムを失いたくない場合はFAME値を消費するといった具合である(早期アクセス開始時点では、まだ諸々の機能が完成していないため、FAME値を消費することなく自由にリスポーンできる)。

究極のサバイバル体験を目指しつつ、ゲーム内イベントにより刺激的な銃撃戦も楽しめるように設計されている『SCUM』。最低1年間の早期アクセスを予定しており、正式リリース時にはPvEクエストやエンドゲームコンテンツ、キャラクター作成時の性別選択オプションの追加、安全区域の設置、スキルやクラフトシステムの拡充などが計画されている。

Ryuki Ishii
Ryuki Ishii

元・日本版AUTOMATON編集者、英語版AUTOMATON(AUTOMATON WEST)責任者(~2023年5月まで)

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