『Everybody’s Gone to the Rapture』の開発元The Chinese Roomが、Sumo Group傘下に入り再始動。新たなスタイルの作品を手がける
デベロッパーのSumo Digitalを保有するSumo Groupは8月14日、イギリスに拠点を置くインディースタジオThe Chinese Roomを買収したと発表した。The Chinese Roomは、『Dear Esther』や『Everybody’s Gone to the Rapture』などの作品を手がけ、いわゆるウォーキング・シミュレータージャンルを確立させたことで知られるスタジオだ。同スタジオは昨年9月、VR作品『So Let Us Melt』をGoogle Daydream向けに発売した数日後に活動休止を発表。スタッフをレイオフし、しばらくのあいだ充電期間を取るとしていた(関連記事)。
一方のSumo Groupは、Sumo Digitalのスタジオをイギリスやインドに複数持つグループ企業だ。古くはセガの『アウトラン』シリーズの移植から、現在開発中の『チームソニックレーシング』まで、主にレースゲームの開発元として知られてきたが、『リトルビッグプラネット3』や『Dead Island 2』『Crackdown 3』、またオリジナルタイトルの『Snake Pass』など幅広いジャンルを手がける。
The Chinese Roomの共同設立者Dan Pinchbeck氏も、今回のスタジオ買収について公式ブログにて声明を発表している。Pinchbeck氏は昨年の活動休止以来、スタジオのこれまでの歴史を振り返る時間を設けたそうで、素晴らしい数年間であったと同時に、それなりの代償を支払わざるを得なかったと述べる。昨年の発表では、『So Let Us Melt』の開発終盤のストレスや、財政的なプレッシャーについて語っていた。そして、The Chinese Roomを再始動させるのであれば変化が必要で、新たなアイデアを模索し、異なるスタイルのゲームを手がけようと決めたという。
そうした中でSumo Groupと出会い、昨年の冬から協議を始めた。同じイギリスに拠点を置いていることもあり、Pinchbeck氏はSumo Digitalのこれまでの実績はもちろん、開発チームや手がけるゲームを大事にするスタジオの文化についても耳にしていたそうで、もともと良い印象を持っていたようだ。協議では、The Chinese Roomが何か新たな、そしてより規模の大きなものを手がけるにあたって、Sumo Groupが持つ基盤や経験をどう活かせるのかなどの意見を交わしたという。そして、Sumo Group内の各スタジオの関係性やマネジメント、また幹部のオープンで率直に意見を言う姿勢などは、The Chinese Roomに上手くフィットするだろうと感じて買収に応じる決断をしたとのことである。なお、もうひとりの共同設立者Jessica Curry氏は、独立した立場で作曲家としてのキャリアを続けるという。
The Chinese Roomの今後についてPinchbeck氏は、まず2016年に発表していたテーブルトークRPGから着想を得たという『The 13th Interior』については、元The Chinese RoomのゲームデザイナーAndrew Crawshaw氏と共にプロトタイプを制作し、コアメカニクスを練っている段階だという。いつかの時点で、完成させるべく本格的な開発に取り掛かる機会を探すだろうとしている。また、このほかにもコンセプト段階の作品がふたつあり、いずれも同スタジオがこれまでに手がけてきたタイトルとは、まったく異なるジャンルになるそうだ。
昨年リリースした『So Let Us Melt』については、さらなるメカニクスの追加などを施すことを計画しているという。Pinchbeck氏は、同作の物語をとても気に入っており、また音楽はCurry氏の代表作と言っても過言ではないとし、Google Daydream以外のプラットフォームでも発売して、より多くの人に触れてもらいたいとしている。これらの計画のロードマップについてはまだ明かされていないが、これから新たなスタッフをスタジオに迎え入れていくとのこと。Pinchbeck氏は、「もしこれがゲームであれば、しゃがれた声の男が「New dawn(新たな夜明けだ)」とでも言うだろうね」と、今後への期待を語っている。