Hello Gamesが販売する『No Man’s Sky(ノーマンズスカイ)』のSteamユーザーレビューの好評率が上がり、レビュー全体の評価が「ほぼ不評」から「賛否両論」へと変化した。同作は、発売時に期待はずれの烙印が押されたのち、Steamにて不評レビューが相次ぎ、次第に真っ赤に染まっていたことをご存知の方も多いだろう。発売以降、定期的に大型アップデートを繰り返し、最近のレビューこそ好意的なステータスになることもあったが、発売当初に寄せられた4万件を超える不評はそうそう覆せなかった。しかし7月24日までほぼ不評となっていたレビューステータスが、ついに賛否両論へと好転した。
好転したのは、もちろん7月25日に実施された「NEXT」アップデートの影響だろう。コミュニティの念願であったマルチプレイを実装しただけでなく、三人称視点の導入や拠点建設機能の拡張、グラフィック改修など大規模なテコ入れがはかられている。筆者は発売日に『ノーマンズスカイ』を購入し、レビュー記事を執筆した。アップデートのたびに同作を遊び続けてきたが、リリース直後と比較すると確かにゲームは大きく変化している。
採取できる素材の量が増えたり、生態系や地形が変化したり、交易が拡張されていたりといった既存のシステムが深化されているほか、基地建設やマルチプレイといった新要素を導入し、遊び方にバリエーションがもたらされている。UIやシステム面に大きく手が入れられているので、久しぶりにゲームを遊んだプレイヤーはすぐに変化を感じられるはずだ。とはいえ、魅力的なストーリーや中毒性のあるクエストの反復といったプレイヤーを積極的に没入させる要素が用意されているわけではないので、プレイヤーが主体的に遊び方を見つけていくゲームであることには変わりない。
主にSNSなどで盛り上がりを見せているが、鍵を握っているのは三人称視点とフォトモードを組み合わせた写真撮影だ。今回マルチプレイ導入にあわせて三人称視点が実装され、“ゲームの見え方”が変化。昨年3月に実装されたフォトモードと抜群の相性を見せている。すでに昨年から美しい惑星を発見したという報告が増えていたが、今回のアップデートにより退廃的な惑星の発見報告もあがっている(PC Gamer)。自分だけの惑星を見つけて、自分のアバター(カスタム可)と共に“セルフィ”のごとく撮影し共有できるようになったことにより、ゲームに新たな遊びがもたらされたと言えよう。その惑星を友人と共に探索できるとすればなおさらだ。ただし、三人称視点はまだ最適化がなされておらず、画面が揺れるといった課題も存在している。
こうした新要素によってゲームの拡張に成功したこと、そして何より2年前のゲームの無料アップデートを続けてきたことに対し、Hello Gamesを評価する声が集まっているわけだ。同時接続プレイヤー数も昨日25日は4万人超えを記録(SteamCharts)。プレイヤー数は発売日やアップデート日に急激に上昇しすぐに落ち込むものであるが、それほど注目度が高いということだろう。
とはいえ、Steamの「賛否両論」の基準は甘めだ。現状では『ノーマンズスカイ』は4割の「おすすめ」を得ている。つまり、依然として約6割のプレイヤーは「おすすめしない」という意思を表明していることになる。8万件以上寄せられているレビューのステータスを今後「ほぼ好評」にまで変えていくのは至難の業で、すでに「おすすめしない」に投じているユーザーの心を動かすことが求められる。
『ノーマンズスカイ』は、実は発売直後は不評一色というわけではなかった。革新的な部分を高く評価するプレイヤーは少なくなかった。しかし、遊びこまれるうちに内容の薄さが指摘され、レビュー欄が赤い色に染まっていった。アップデートについても、同じような現象が起こらないとは限らない。今『ノーマンズスカイ』を遊んでいる人々の心をつかみ続けることができるかが、非常に重要になる。Hello Gamesと彼らが生み出した力作は、発売から2年を経て、あらためて真価が問われているだろう。