任天堂が、海外の大手ROM配布サイトの訴訟に踏み切る。損害賠償請求額は100億円規模になる可能性も
任天堂およびニンテンドー・オブ・アメリカが7月19日、Jacob Mathias氏とMathias Designs社を相手にとり、アメリカ・アリゾナの合衆国地方裁判所にて訴訟を起こしていたことが明らかになった。海外メディアTorrentFreakなどが報じている。同メディアでは、訴状も確認できる。
Mathias Designs社は、「LoveROMS.com」と「LoveRETRO.co」の運営者とされている。両サイトは、ゲームのROMを無料配布する違法サイトだ。同サイトでは、ファミコンからWiiまで、歴代の任天堂ハードウェアで発売された数百もの同社のゲームを配布している。さらにROMだけでなく、ハードウェアのBIOSも配布している。サイトのサービスは任天堂に無許可でおこなわれていながら、任天堂および製品のロゴマークなども使用されている。任天堂は、Mathias Designs社はJacob Mathias氏による個人会社であると指摘。個人と会社の両方を相手どって訴訟を起こした。
任天堂は著作権侵害、商標権侵害、そして不正競争を理由に訴えに出ている。一見ファンサイトのように見えるが、運営者はこうした違法行為によって潤沢な利益を得ていることを指摘。両サイトの閉鎖とともに、侵害されたゲームごとに15万ドル(1600万円)、各商標の侵害にあたり最高200万ドル(2億2000万円)の賠償金を求めている。数百ものゲームが配布されており、40以上もの商標が使用されていることから、損害賠償金は1億ドル(110億円)に到達する可能性もあるという。
「LoveROMS.com」では、前述したように無料のROMやBIOSが配布されている。任天堂ハードウェアだけでなく、ソニーおよびセガハード向けのタイトルなども扱われている。会員登録などは必要なく、該当ページに行き、任意の場所をクリックすればダウンロードが開始される。一般ユーザーは低速ダウンロードのみ選択可能。定額のサブスクリプションサービスに加入したり、指定のアプリケーションをインストールすれば高速ダウンロードが可能になる。こうしたダウンロードにおけるサービスを利用し、利益を得ていたと推測できる。一方「LoveRETRO.co」は旧作をブラウザ上で無料でプレイできるというWebサイト。形態は異なるが、侵害している領域はかなり似ている。なお現在両サイトはともに閉鎖されていない。
任天堂は膨大なコンテンツを保有する大企業ということもあり、自社のコンテンツにおける著作権や商標権侵害には目を光らせてきた。そして今回、なかば無法地帯と化していた違法ROMサイトに踏み込み、Jacob Mathias氏およびMathias Designs社を相手に訴訟が起こされた。同社は、これまでバーチャルコンソールを販売しており、最近ではニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータやニンテンドークラシックミニ スーパーファミコンを発売しているほか、Nintendo Switch Onlineの加入者特典として『ファミリーコンピュータ Nintendo Switch Online』の配信を予定しているように、旧作の販売についても力を入れている。ROMサイトでは大量の旧作が違法にばら撒かれており、任天堂は甚大な被害を被っていると主張するのはもっともだろう。ROM配布をめぐる訴訟は、どのような結末を迎えるのだろうか。