オーストラリアにて発売禁止となった、ドラッグがテーマの『We Happy Few』。再審査にて一転「18歳以上対象」として販売可能に

カナダのインディースタジオCompulsion Gamesは7月3日、現在開発中のアクション・アドベンチャーゲーム『We Happy Few』について、オーストラリアでの発売が可能になったと発表した。『We Happy Few』はドラッグをひとつのテーマとしており、以前同地域において発禁処分を受けていた。

カナダのインディースタジオCompulsion Gamesは7月3日、現在開発中のアクション・アドベンチャーゲーム『We Happy Few』について、オーストラリアでの発売が可能になったと発表した。同スタジオは今年5月、オーストラリアで本作を販売するため、同国の審査機関Australian Classificationにレーティング審査を申請したが、ゲーム内に含まれる表現を理由にレーティングの付与を拒否され、同国では事実上の発売禁止措置となる。これを受けて同スタジオは、再審査を求める考えを示していた。

『We Happy Few』にて描かれる、1960年代のイギリスをモチーフにしたWellington Wellsという街では、住民は「Joy」と呼ばれるドラッグを常用している。Joyはハッピーな気分になれるだけでなく、この街の不都合な過去を忘れる効果もあり、Joyの服用を拒む者は異端者扱いされ迫害を受ける。ゲームにてプレイヤーは、Joyを服用することで周囲の人間に溶け込み、攻撃を避けることができるが、服用するかどうかはあくまで任意である。

しかしAustralian Classificationは、ドラッグの使用が「報酬」や、なにかの「動機」に結びつく形で表現されている場合は禁止表現に該当すると定めている。Joyの服用は、ゲームの難易度を下げるという報酬に結びついており、またゲームの進行上、プレイヤーにJoyを服用するよう促していることは否めないとして、『We Happy Few』でのドラッグの描かれ方は禁止表現に相当すると判断された(関連記事)。

Compulsion Gamesおよび本作の販売元Gearbox Publishingによる再審査請求を受けて、Classification Review Boardという独立した組織が再審査をおこなったところ、3人の審査員は全員一致で、本作はレーティング「R18+(Restricted)」に相当するという判断を下したという。なお、審査方法自体は最初におこなわれた審査と同じである。R18+とは18歳以上対象を意味し、ゲームに与えられる同国のレーティングとしては上限に位置する。また、18歳未満への販売は法律により禁じられる。

今回の再審査に向けて、『We Happy Few』のゲーム内容に何らかの修正を加えたということは無く、やはりドラッグ表現が焦点となったようだ。同国のレーティング審査では、ドラッグや暴力、ヌードなど特に注意すべき表現が含まれる場合、そのインパクトの強さを5段階で評価している。『We Happy Few』のJoyは、その上限を超えたと当初判断されたわけだが、再審査では、本作のドラッグ表現はもっともインパクトの高い「High」に留まると評価され、そのほかの表現も許容範囲内だとして無事レーティングを取得し、オーストラリアでの販売が可能となった。

まったく同じ方法で審査をやり直して、なぜ判断が分かれたのかが気になるところだが、おそらくメーカー側から追加の資料提出や説明がおこなわれていたのではないだろうか。Compulsion Gamesは、『We Happy Few』では市民にJoyを摂取させる社会と、それを拒否し戦うという物語を描いており、著名な小説や映画作品にも通じるテーマだと主張し、当初の審査結果に対して不満を表明していた。なお、今回の再審査における詳細な内容は後日公表される。

オーストラリアのレーティング審査は、ほかの国・地域と比べて比較的厳しいことで知られ、発売禁止となるゲームはこれまでにもあった。また同時に、再審査制度を利用するケースも数多くあり、たとえば『F.E.A.R. 2: Project Origin』でも、当初は流血を含む暴力表現のインパクトが許容範囲を越えると評価されたが、再審査により判断が覆り発売に至った。そのほか、『State of Decay』ではドラッグをビタミン剤に変更することで発売禁止を免れた。『Outlast 2』では、審査に提出したアルファ版の映像が製品版よりも過激だったことが問題となり、再審査にて無事レーティングを得たということがあった。さまざまなケースがあるが、『We Happy Few』におけるJoyはゲームの根幹に関わる要素だけに、特に表現を修正することなく販売を認められたことで、開発元のCompulsion Gamesや、本作を楽しみに待っているオーストラリアのファンは安堵していることだろう。

今回の騒動の間にはE3 2018があり、そこでCompulsion Gamesがマイクロソフトの傘下スタジオとなることが発表された。これによる『We Happy Few』のリリースプランへの影響はなく、8月10日にPC(Steam)/PlayStation 4/Xbox One向けに正式リリース予定だ。

Taijiro Yamanaka
Taijiro Yamanaka

国内外のゲームニュースを好物としています。購入するゲームとプレイできる時間のバランス感覚が悪く、積みゲーを崩しつつさらに積んでいく日々。

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