Nintendo Switch版『Hollow Knight』の売上が約2週間で25万本突破。タイトル数が増えてもSwitchのインディー市場は活気を見せる

インディースタジオTeam Cherryは6月28日、IGNの取材に答え、Nintendo Switch版『Hollow Knight』の売上が25万本であることを明かした。2018年にはいってもNintendo Switchでインディータイトルを発売した開発者の、売上好調の喜びの声が聞こえてきている。

インディースタジオTeam Cherryは6月28日、IGNの取材に答え、Nintendo Switch版『Hollow Knight』の売上が25万本であることを明かした。『Hollow Knight』は6月12日に同ハード向けに配信開始された横スクロールアクションゲーム。配信開始直後から日本を含めた配信対象国のニンテンドーeショップランキングにて上位に位置しており、好調なスタートを見せていた。また、ニンテンドー・オブ・アメリカのレジー・フィザメイ社長もWaypointのインタビューにて同作を名指し「非常によくやっている」と絶賛していた。その数字がIGNの問い合わせにより判明した形だ。

『Hollow Knight』は2017年2月にPC向けに発売された横スクロールアクションゲーム。Nintendo Switch版は、リリースされたDLC3個を同梱している。いわゆるメトロイドヴァニアスタイルの作品となっており、かつて栄華を極めた地下に存在する虫の王国ハロウネストを舞台に、さまざまな虫と戦いながらトラップを切り抜け、巣穴の構造を把握していく。虫をテーマにしながら、手書き調のグラフィックで美しい世界観が描かれる。気を抜くとすぐに死んでしまうシビアな難易度も特徴であるが、回復手段も潤沢であるので、ストレスなくハードな冒険が楽しめる。アクション部分も気持ちよく、さまざまな部分で完成度の高い作品に仕上げられている。

SteamDBを介してStemSpyによるSteam版のセールスの推移を見てみると、25万本に到達したのは発売から4か月後の6月末。もともと評価が高いことで知られており、任天堂からプロモーションのプッシュを受けているという追い風もあるが、Steam版が120日近くを要したセールスに、16日ほどで到達したというのは同ハードとの相性のよさを感じさせるだろう。

Nintendo Switchにおいては、インディーゲームをリリースする開発者の多くが、自身の作品のセールスが好調であることを報告している。昨年から喜びの声が数多く生まれていたが、特筆すべきはそうした報告が今年に入っても途切れていない点。昨年は『スチームワールドディグ2』『ワンダーボーイ ドラゴンの罠』など多くの作品の開発者が、他ハードと比較し売上の好調を報告していた。また昨年発売された作品として、『Stardew Valley』の売上が100万本、『オーバークック』の売上が50万近いことも任天堂より発表されていた。

今年に入っても『Super Meat Boy』開発者が、Nintendo Switch版の発売初日の売り上げが、2010年に発売したXbox 360版とほぼ同じであったと投稿(関連記事)。『Darkest Dungeon』開発元も発売2か月時点でNintendo Switch版はスタジオの総収益の7%を占めるとし、想定より大幅に売れているとPC Gamerに告白。またPLAYISMから発売された『返校 -Detention-』の売上も好調であることを確認している(先日発売された『殺戮の天使』も同様に好調)。そのほか小規模スタジオのインディーからも喜びの声は数多くあがっており、2017年を上回る成功報告が生まれつつある。

昨年インディー開発者の成功報告があげられた際には、弊誌も含めて「ハードで発売されるソフトの本数」を理由のひとつとする声も多かった。ハードの発売から日が浅いうちはソフトのラインナップが限られているため、手に取ってもらいやすいというわけだ。Nintendo Switchタイトルの情報を集積するSwitchRPGのデータベースを参照すると、2018年はすでに昨年を大きく上回るペースで作品がリリースされており、総合するとタイトル数は900本以上に及ぶ。依然として他ハードと比べるとタイトル数は下回るが、タイトルが増え続けてもインディー市場が好調であることが読み取れる。任天堂はeショップのレイアウトを変えたり、Indie Worldといった企画を進めたり、昨年以上にNintendo Switchのインディータイトルをプッシュしている。今後さらに競争が熾烈になっていくことは間違いないが、同ハードのインディー市場の活況は昨年に限定したものではなく、光る魅力を持つタイトルは今後もその市場の恩恵を受けるだろう。

やや話は変わるが、Nintendo Switchのインディータイトルの成功報告としては『Wulverblade』の開発者が初月の売上をグラフで公表し、Nintendo Switch版のセールスが他ハードを圧倒的に上回っていたことを明かしていた。

Switch版の数字が極めて突出していることにより海外メディアにて注目を集めていたが、実は同作はNintendo Switch版が他ハードよりも3か月半リリースが早い。Nintendo Switch版は10月半ば、他ハード版は2018年1月末に発売されている。当然、先行リリースされたバージョンは売れやすく、また後発のリリースはメディアの注目を集めづらいがゆえに売れづらい。それぞれのハードウェアを所持している場合には、先行リリース版を購入する人が多いと考えるのが自然だろう。

『Wulverblade』はゲームの評価も高く、開発者も純粋な結果を報告しているだけだが、他タイトルの成功事例とは条件が異なっており、突出した結果が出やすい環境であったことを留意すべきだろう。前述したSwitch版が成功したといわれている『ワンダーボーイ ドラゴンの罠』もSteam版は、コンソール版と比べて2か月弱後発であった。好調なSwitch版と低調なSteam版が比較されることもあったが、数字に開きが出るだけの条件は存在していた。

昨今では「Switch版が売れた」というインディー開発者の報告は、多くのメディアの注目を集めるがゆえに、プロモーションとしても効果的なものになりつつある。もちろん、Nintendo Switchのインディー市場は前述したように好調さを維持している点は疑いなく、後発でのリリースで成功を収めている作品も多数存在する。こうした成功報告を聞くのが楽しみなユーザーもいるだろう。成功報告に興味がある方は、そうした投稿を見た時には、時期や発売条件などを探ってみると、より正確に事実関係を把握できるかもしれない。

Ayuo Kawase
Ayuo Kawase

国内外全般ニュースを担当。コミュニティが好きです。コミュニティが生み出す文化はもっと好きです。AUTOMATON編集長(Editor-in-chief)

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