ゲーム中、消耗したプレイヤーの精神を癒す「セーフルーム」を紹介し続けるTwitterアカウントが面白い。お気に入りは『ダークソウル』
スリルや恐怖感を特徴とするゲームの多くには「セーフルーム」と呼ばれる安全エリアが存在している。いわゆる敵の攻撃や脅威が及ばない安全地帯だ。突き詰めていえば、それは日本語的には「ルーム」ではないことも多いが、大枠でセーフルームと定義しよう。Twitterにて、安全エリアともいえるセーフルームをひたすら特集アカウントThe Safe Roomが注目を集めている。Rock, Paper, Shotgunがこのアカウントを短く紹介している。
地獄の中のオアシス
The Safe Room のTwitterのコンセプトは、いたってシンプルだ。タイトルとセーフルームとされる場所の名前、そしてその場所のスクリーンショットを併記して投稿するのみ。実際にいくつかの投稿を見ていただこう。
Room 302. Silent Hill 4: The Room. (Team Silent, 2004) pic.twitter.com/1OLZTPUEiX
— The Safe Room (@TheSaferooms) May 9, 2018
West Wing Storeroom. Resident Evil / Biohazard. (1996) pic.twitter.com/dCkJnFrac0
— The Safe Room (@TheSaferooms) May 4, 2018
『バイオハザード4』の4-2における武器商人の前のトンネル、『サイレントヒル4 ザ・ルーム』の自宅となる302号室、そして『ダークソウル』における火継ぎの祭祀場など。5月から投稿は始められているが、前述した日本生まれのホラーゲームから欧米生まれの『Call of Cthulhu: Dark Corners of the Earth』や『Darkwood』など、扱っているタイトルの幅は非常に幅広い。そして、圧倒的にホラーゲームが多い。
ホラーゲームといえばプレイヤーを脅かし、消耗させるものがほとんどだ。The Safe Roomアカウントがセーフルームを「nice(ナイス)でcozy(居心地のよい)な場所」と定義しているとおり、緊張感あふれるゲームプレイのアクセント、もしくはオアシスとなるのがセーフルームになるわけだ。ゲームのいち要素を特集するTwitterアカウントはそう珍しくないが、セーフルームという特殊な場所を取り上げるのは非常に興味深い。中の人は何を思い、こうした特集をしているのだろうか。中の人に話を聞いてみた。
Sidorovich's Bunker. S.T.A.L.K.E.R.: Shadow of Chernobyl. (GSC Game World, 2007) pic.twitter.com/0pvsSRrfji
— The Safe Room (@TheSaferooms) May 21, 2018
実は、このTwitterを運用しているのはインディーゲーム開発者Dillon Rogers氏だ。氏は、これまでValveのゲームのModを制作しており、現在はインディーゲームを開発している。そして現在開発中のゲームは、もちろんホラーゲームである。The Safe Roomのアカウント運用を始めようとしたきっかけは、セーフルームというコンセプトをこの世に広めたいという想いがあったからだという。プレイヤーを緊張させる時間があるように、休憩させる時間が必要であると氏は考えており、優秀なデザイナーほどその重要性を認識していると語る。セーフルームは、そうしたデザイナーのセンスが反映された場所であるとのことだ。
Rogers氏はもともとホラーゲームが大好きで、ホラーゲームの仕組みを研究するために前述した作品をプレイするうちに、セーフルームに魅入られたという。投稿しているスクリーンショットは、すべて自分でプレイし撮影したものであるとのこと。氏はホラーゲームを愛するが、もっとも気に入っているセーフルームは、ホラーゲームではない初代『ダークソウル』の火継ぎの祭祀場だという。病み村や地下墓地といった難しい場所の探索を終えて火継ぎの祭祀場に着いた時、落ち着いた音楽を聞きながら篝火のゆらめきを見ているとこれ以上ないほど安心し、魔法のようにも感じるとのこと。
Firelink Shrine. Dark Souls. (From Software, 2011, re. 2018) pic.twitter.com/YrspJh54mW
— The Safe Room (@TheSaferooms) June 5, 2018
ホラーゲームの数だけセーフルームはある
またTwitterの投稿ペースは割と頻繁である中で、まだ“ネタ”のストックはあるのか聞いてみたところ、この世にはホラーゲームが多く存在し、ホラーゲームの数だけセーフルームは存在するので、まだまだ紹介していけると自信のほどを見せた。セーフルームは必ずしも安全ではなく、『サイレントヒル4 ザ・ルーム』の302号室や『System Shock 2』のように後に危険になる場所でも、一時的にでも安らげる場所はセーフルームと定義しているので、ストックは多くあると教えてくれた。
MedSci Deck Chemical Storeroom. System Shock 2. (Irrational Games and Looking Glass Studios, 1999) pic.twitter.com/N4w35WUYjC
— The Safe Room (@TheSaferooms) May 6, 2018
ちなみにRogers氏の開発中のゲームにどれくらいのセーフルームが存在するのか聞いてみたところ、ゲームには本拠地となる大きなセーフルームが存在するほか、プレイヤーが探索する街の中にも隠されたセーフルームを多く存在し、敵に追われた時に逃げ込める、見つける価値のある安らぎの場所として機能するとのこと。
氏が開発中のゲームのタイトルは『Gloomwood』。霧に覆われたヴィクトリア朝時代の“憑かれた街”を舞台に、住民に見つからないようにランタン片手に進む一人称視点のホラーゲーム。『バイオハザード』や『サイレントヒル』のような恐怖感に、『Thief: The Dark Project』のようなステルス探索アクションを混ぜたような作品を目指し、開発を進めているとのこと。
緊張と安らぎの配分にこだわる“セーフルームオタク”のRogers氏が生み出すホラーゲームはどのようなものになるのだろうか、今後の開発に期待したい。また氏が選ぶセーフルームセレクションを楽しみたい方は、The Safe RoomのTwitterアカウントも忘れずフォローしておこう。