Steamの“アダルトゲーム”界隈に異変。開発者複数名が、Valveからポルノコンテンツの削除要請を受け取る

Steamにてアダルトゲーム『HuniePop』などを配信するHuniePotが、Steamを運営するValveからポルノコンテンツの削除要請を旨としたメールを受け取ったことをTwitter上にて明かした。今すぐポルノコンテンツを消しなさい、というのがValveの意向のようだ。

Steamにてアダルトゲーム『HuniePop』などを配信するHuniePotが、Steamを運営するValveからポルノコンテンツの削除要請を旨としたメールを受け取ったことをTwitter上にて明かした。メール内容は、「『HuniePop』が、Steamのポルノコンテンツの規定ガイドラインに違反しており、そうしたコンテンツをアップデートで除去しなければ、ゲームをストアから削除する」というもの。今すぐポルノコンテンツを消しなさい、というのがValveの意向のようだ。

『HuniePop』は2015年1月に発売された、美少女ゲームだ。パズルゲームを通して女の子を攻略していくデートシミュレーターとなっている。デートという名のパズルをすることで美少女の好感度が上がっていき、一定まで達すれば夜のデートも楽しめる。きれいなアートワークも魅力であるが、パズルパートも作り込まれており、ゲームデザインの面での評価も高い。本作は性描写がひとつのアピールポイントであるが、18禁の外部パッチを当てることでその性描写はさらに過激になる。HuniePotは、そうした外部パッチを導入し成功した先駆者のひとりである。

『HuniePop』を含めた“解禁型”の美少女ゲームが大きな成功を収めたことにより、以降も外部パッチの性描写解禁がジャンルの主流になっていく。2D・3D問わず性描写をウリにするタイトルは、外部パッチを併用した販売を進めている。しかし一方で、こうした手法があまりに常態化したことを懸念してか、Valveは昨年10月にSteamフォーラムなど、公の場所で外部パッチの情報を共有することを自粛するように各デベロッパーに求めていた(関連記事)。

この1件があり、各デベロッパーが公に18禁パッチを共有することはなくなった。一方で市場自体は活性化しており、Sekai Projectのような美少女ゲームパブリッシャーを筆頭に、パッチ解禁型の美少女ゲームがSteamで配信され、その作品本数は増加の一途を辿っている(One Angry Gamer)。ある意味では、ノベル型美少女ゲームの受け皿とも言える市場になりつつあった。

しかし今回Valveは、2015年1月に配信された『HuniePop』のポルノコンテンツを削除するというアクションに出たわけだ。『HuniePop』では長らくコンテンツ追加のアップデートはおこなわれていない。新たなコンテンツの表現が規定に引っかかったのではなく、Valveが新たなルールを制定し、もともとの表現に問題があったと判断したのだろう。問題となるのは、どの表現が規定に引っかかっただ。一見すると前述したような18禁の外部パッチについて指摘を受けたのではないかと推測できるが、『HuniePop』はもともとの性表現もかなり過激で、パッチを当てずともキャラクターの乳頭を確認できるシーンもある。そもそも、こうした元コンテンツが過激すぎると理由で警告された可能性を、検討する必要がありそうだ。

また、同じく性描写シーンが特徴のひとつの『Mutiny!!』の開発者も、同様の警告を受け取ったとしている。2週間以内にポルノコンテンツを削除しなければ、ストアから削除するという内容のメールだ。デベロッパーであるLupiesoftは、Steamにおけるガイドラインを知っている限りで厳しく守ってきたとし、パブリッシャーであるMangaGamerのスタッフがValveスタッフに直に話した際に性描写について問題ないとコメントをもらったと断言。にも関わらず、Valveスタッフがこのような警告を送りつけてきたことに激しい怒りを見せ、今後ゲーム販売にてSteamを利用することはないと投稿している。

一方HuniePotは、Valveと話し合うことでベストな解決策を見出したいとコメントしている。またHuniePotは、ストアから削除されることはあっても、購入したユーザーのライブラリから消えることはありえないだろうとも語る。Steamの美少女ゲームマーケットが徐々に成長してきた矢先、突如性描写への規制を強める動きを見せたValve。事実としてSteam Directの解禁にあわせて“エロ釣り”を武器にするゲームが目立っていただけに自然な展開とも言えるが、開発者にとっては急な動きであるのも確か。

ただ以前より、ガイドラインがあいまいかつはっきりと可視化されていない以上は、何を守ればいいのかわからないというValveへの指摘も多くなされている(関連記事)。美少女ゲームとしては、もともとはそうした手法を使い成功を収めたものの、VRやアニメ、コンソールなど多岐にわたる展開をおこなうことで、フランチャイズとしてのブランドを確立した『ネコぱら』のような作品も存在する。エロを絡ませながらも、それ以外のコンテンツ部分に魅力を持たせることも、選択肢のひとつだろう。Steamで美少女ゲームを売る、もしくは売ろうとしているデベロッパーにとっては、この動向を注意深く見守る必要がありそうだ。

【UPDATE 2018/5/18 14:20】
NEKO WORKsが、傘下ブランドTentacle Gamesとして開発に参加している『Tropical Liquor』について、同様の警告をValveから受け取ったと報告している。同社の社長であるアンコウ氏はTwitterにて、2D表現における乳頭の露出の有無が、問題点であるのではないかとコメント

Ayuo Kawase
Ayuo Kawase

国内外全般ニュースを担当。コミュニティが好きです。コミュニティが生み出す文化はもっと好きです。AUTOMATON編集長(Editor-in-chief)

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