『Gears of War』クリエイターのCliffy B率いるBoss Key Productionsが閉鎖。レッドオーシャンに飛び込み続けた挑戦者たち


Boss Key ProductionsのCEOであるCliffy Bことクリフ・ブレジンスキー氏は5月14日、同スタジオが閉鎖した旨を発表した。4月10日に早期アクセス入りしたばかりのバトルロイヤルゲーム『Radical Heights』については、近い将来までサーバを稼働させ続けるとのことだ。

https://twitter.com/therealcliffyb/status/996092708971274245

Boss Key Productionsは、Epic Gamesにて『Unreal』『Gears of War』シリーズを手がけたゲームデザイナーのクリフ・ブレジンスキー氏と、Guerrilla Gamesの共同創設者として『Killzone』シリーズに携わったArjan Brussee氏が2014年に設立したスタジオ。同年に発表された『LawBreakers』は、無重力エリアでの激戦や高機動アクションが売りのヒーロー選択型アリーナシューターである。ハードコアなファンに向けた実力主義のFPSタイトルという触れ込みと共に2017年8月に海外ローンチされたものの、プレイヤーが集まらず。PC版では同時接続ユーザ数100人以下の状態が続き、計画されていたシーズン制度もわずか1シーズンで終幕を迎えた。2018年4月にはアップデートを停止し、今後は別プロジェクトに専念することを伝えていた。

その別プロジェクトというのが、F2Pの超早期アクセスタイトル(X-Treme Early Access)『Radical Heights』である(関連記事)。窮地に追いつめられたスタジオが開発期間5か月の突貫工事で世に送り出した、最大100人同時対戦型のバトルロイヤルゲームだ。結果としてスタジオの延命は叶わず、開発期間以上に短命の作品としてサービス終了を迎えようとしている。

『Radical Heights』

『Radical Heights』は「Cash is King」と謳われているように、マッチに勝利することだけでなく、お金を集めてリッチになることも目標のひとつとなっている。そのほか課金要素とリンクしたマネーシステム、80年代カリフォルニア州を意識したビジュアル、円形ではなく四角のグリッド毎に閉じていくプレイエリア。さらには補給物資の代わりに降り注ぐ札束の雨、パラシュートを使わないフリー・フォール落下、車両ではなくBMXによる移動など、既存のバトルロイヤルゲームとは一味違ったラジカルなアイデアが詰め込められていた。『セインツ・ロウ』シリーズの元アニメーターZach Lowery氏がクリエイティブ・ディレクターを担当していることも影響してか、コメディタッチの対戦ゲームとして期待が持てた。

愉快なエモートも特徴のひとつ

だが開発者自ら認める圧倒的未完成感は快適なゲームプレイの妨げとなっており、Steamのユーザレビューは芳しくない。同じF2Pのバトルロイヤル市場には『フォートナイト』『H1Z1』という完成度が高いタイトルが並んでいることもあり、険しい道のりを歩んでいたことは否めなかった。SteamChartsによると、すでに同時接続ユーザのピーク数は1000人を切っている。仮にスタジオが閉鎖しなくとも、このプレイヤー人口で1マッチ100人の対戦ゲームを維持することは困難だったのではないだろうか。

『LawBreakers』が飽和状態のシューター市場で苦戦したように、『Radical Heights』もバトルロイヤルブームの波に乗り切れずに終わっていく。後者に関しては『フォートナイト』という絶対王者が絶頂期を迎えていることもあり、いかんせん厳しい戦いではあった。『フォートナイト』は2か月間におよびコミュニティを湧かせた彗星落下イベント(関連記事)、映画「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」とのコラボ企画など、バトルロイヤルという枠組みを越えたマーケティングマシーンとして猛威を振るっている。Boss Key Productionsはそうしたレッドオーシャンに果敢にも飛び込んでいった挑戦者と言えるだろう。

声明文を出したクリフ・ブレジンスキー氏はしばらく休暇を取り、家族との時間を大切にするとのこと。いずれまたゲーム制作に復帰する日が来ることを楽しみに、そして気長に待ちたい。