第一次世界大戦後の陰鬱なパリが舞台のホラーアドベンチャー『The Piano』5月発売へ。『サイレントヒル』などから影響受ける

インディーゲームデベロッパーMistaken Visionsは、物語主導のサイコホラー・アドベンチャー『The Piano』の最新トレイラーを公開し、発売予定日が5月24日(日本時間の5月25日)であることを発表した。主人公ジョン・バーナウェイは、アメリカ人の父とフランス人の母の間に生を受ける。パリ万博の狂乱を経て、ナチス・ドイツがフランスを占領する1940年代のパリがゲームの舞台となる。

インディーゲームデベロッパーMistaken Visionsは、物語主導のサイコホラー・アドベンチャー『The Piano』の最新トレイラーを公開し、発売予定日が5月24日(日本時間の5月25日)であることを発表した。

フランスの青年の1割が戦死したといわれる凄惨な第一次世界大戦の戦禍が残る頃。主人公ジョン・バーナウェイは、アメリカ人の父とフランス人の母の間に生を受ける。レザネ・フォール(狂気の年月)と呼ばれる1920年代、パリ万博の狂乱を経て、ナチス・ドイツがフランスを占領する1940年代のパリがゲームの舞台となる。才に恵まれなかったピアノニストであるジョンは、音楽の才能あふれる三人の兄、ジョージ、ルイ、バレンタインの陰に隠れるようにして暮らしていた。そんなある日、バーナウェイ・ブラザーズとして知られた三人の兄たちが次々と不審な死を遂げてしまう。ジョンは殺人の容疑をかけられ、新聞は連日彼への疑惑を報道する。三人の兄を慕い尊敬していたジョンは、兄たちの死に隠された秘密を解き明かすため、精神科医ホーベンの助けを借りて、失われた記憶を探る心の旅に出る。

ゲームは主人公ジョンの精神世界と思われる1940年代のパリの暗闇を、ジョンがたった一人で放浪するかたちで展開される。途中には精神科医による“患者ジョン”についての所見を記したメモや、ラジオの音声、タイプライターなどが登場し物語が進行していく。暗い通りには「おまえの兄弟たちは死んだ」といったメッセージや、暗号のような落書きがされていたり、ジョンの疑惑を報道する新聞や“Foire de Paris”のポスターなどが貼られている。(“Foire de Paris”――パリ・フェアは1904年から毎年開催されている有名な小売りイベント。舞台となる1940年にナチス・ドイツの侵攻によって一時終わりを告げる。)薄暗い通りにジョン以外の人間は誰もいないが、目をサーチライトのように光らせたクリーチャーや、幽霊のような幻覚、ジョンに襲い掛かって来る怪物などが出現する。ジョンはそれらの怪物たちから身を隠しながら、神経をすり減らしつつ正気を保ち、家族にまつわる謎を解いていかなければならない。Gamasutraによると、Stemmildt氏は本作について『サイレントヒル』とフィルム・ノワールにインスパイアされた一味違ったゲームを目指したとのこと。暗いパリの街並みを包む雰囲気が、本作の最大の特徴となっている。

Mistaken Visionsのスタジオヘッド兼リードデザイナーであるJonathan Stemmildt氏は、5年にわたりほぼ一人で本作を開発してきた。Mistaken Visionsは、今年3月にインディーゲーム・コンサルタントGame If You Areとの提携を発表。Game If You Areから、Lewis Denby氏がプロデューサーとして招かれ、ゲームがフルボイスになることが伝えられていた。Lewis Denby氏は、EurogamerやPC Gamerなどで活躍した元ゲームライターで、2013年のアドベンチャー・ゲーム『Richard & Alice』にアーティストとして参加した経験を持つ人物。2016年にイギリスでGame If You Areを設立し、現在はインディーゲームのPRやコンサルタント業務を行っている。ゲームについてDenby氏は「私が最初に『The Piano』を知ったのは18カ月前だね。Jonathanが初期のデモを送ってきた時だけど、粗削りだけど過去にプレイしたことのない雰囲気と個性があるゲームを見つけたんだ。以来Jonathanと私は協力しながらゆっくりと完成を目指していたんだ」と語っている。

開発を手掛けるMistaken Visionsは、Jonathan Stemmildt氏が大学在学中に設立した、ドイツのハンブルクを拠点とするインディーゲーム開発グループだ。今回の『The Piano』が処女作となる。
5年にわたって開発が続けられてきた『The Piano』だが、開発がはじまった当時に公開されたゲームの動画と見比べると、三人称視点への変更をはじめアセットがいちから作り直されているなど、ゲームが大きく洗練されてきたことが見て取れる。

一旦は2017年に発売が予定されていた『The Piano』だったが、テスターからのフィードバックを受けて発売を延期。以来、1年にわたってさらなる改善が続けられていた。ようやく完成にこぎつけた本作について、Stemmildt氏は「5年前、私はただ怖いだけではなく、プレイヤーが感情的に結びつくことができるような、深くて個人的な物語を特徴としたゲームをつくりたいと考えていました。はじめてのゲームだし大きな期待をしていたわけではなかったのですが、何年も夢見てきたことがにわかに実現することになり、時間があっという間に過ぎ去ったかのようです。最高の気分です!」と感想を語っている。

『The Piano』は現在Steamにて販売ページが公開中。価格は9.99ドルで、日本語非対応。対応OSはWindowsのみとなっているが、Mistaken VisionsはゲームエンジンであるUnityがLinuxとMac OS用のビルドを簡単に作成するオプションを用意していることから、5月のリリース後にクロスプラットフォームの作業を行うとしている。

Masahiro Yonehara
Masahiro Yonehara

ゲーム世界の散策とスクリーンショット撮影を趣味にしています。コア、カジュアルを問わず、ハードルが低く奥が深いゲームに惹かれます。

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