VivendiがUbisoft株式を全て売却することで合意。敵対的買収を予期させた長き攻防戦に終止符が打たれる
フランスのマルチメディア企業Vivendiが3月20日、同社が保有しているUbisoft株式を全て売却することでUbisoftと合意に至ったことがわかった(VentureBeat)。全体の27.27%に相当する3048万9300株のうち909万909株をUbisoftが買い戻し、残りの一部を大株主である中国Tencent(559万1469株)やカナダの年金基金Ontario’s Teachers’ Pension Plan(378万7878株)などが1株当たり66ユーロで購入。Vivendiは今後5年間に渡りUbisoft株式を一切取得しないことでもUbisoftと合意に達しており、敵対的買収を予期させた両社の攻防戦はこれにて幕を閉じる。
Vivendiは2015年10月に初めてUbisoft株式を取得したのち、同社株式の保有率を徐々に伸ばしていった。経営方針やビジネス・スタンダードの違いから、2016年にはUbisoftのCEOであるYves Guillemot氏が他社との合併も辞さない意志を見せるほど、UbisoftにとってVivendiによる買収は避けたい事態であった(CNBC)。Vivendiは2016年6月にUbisoft傘下のモバイルゲーム開発会社Gameloftに対する敵対的買収に成功。2017年9月には株式保有率を26.63%にまで伸ばし、フランスの法律上、株式公開買い付けを実行できる株式保有率30%への到達は時間の問題と思われていた。
だがVivendiは2017年11月に入り、少なくとも半年間はUbisoftに対する敵対的買収を仕掛ける意向はない旨をアナウンスし、それからしばらくは目立った動きがなかった(Vivendi PDFリンク)。そして今回の発表により、Vivendiが完全撤退する形となった。議決権を手放すことにはなるが、Vivendiは株式売却により約20億ユーロ(約2600億円)を取得する。売却益は12億600万ユーロ(約1570億円)となる。
なお今回の取引に参加したTencentはVivendiのように敵対的買収や取締役会の席を望んでいるわけではなく、Ubisoftとは長期投資を目的とした良好な関係にある。今回の発表に合わせて両社が戦略的パートナーシップを結んだことも伝えられており、今後はUbisoftの中国市場開拓にあたりTencentが大きく関わってくることが予想される。Tencentは『League of Legends』のRiot GamesやUnreal Engine/『フォートナイト』で知られるEpic Gamesの株式も保有しており、ゲーム業界内で着実に勢力を伸ばしている。規制の厳しい中国でゲームを販売するには、Tencentのような同国のゲームパブリッシャーによる仲立ちが不可欠。Ubisoftタイトルまで手中に収めたTencentは、中国市場において引き続きその名をとどろかせることだろう。