イギリスに拠点を置くインディースタジオBig Evil Corporationが、2Dアクションゲーム『TANGLEWOOD』を現在開発中だ。2016年におこなったKickstarterキャンペーンの成功を受けて制作中の本作の対象プラットフォームは、かつてセガが販売していたメガドライブ。セガ非公認ではあるが、メガドライブの実機で遊べるカートリッジにゲームを収録して発売する予定である。
『TANGLEWOOD』は、キツネのような動物の主人公Nymnが、はぐれた家族の元に帰ることを目指す横スクロール・アクションゲームだ。ジャンプアクションを駆使してステージを進み、パズルを解いて道を切り拓く。道中にはFuzzlと呼ばれるコロコロと転がる生き物がおり、パズルの動力となるほか、中にはNymnに特殊能力を与えるものもいる。たとえば黄色のFuzzlに触れると、Nymnは一定時間身体が同じく黄色になり、ジャンプしたあと空をグライドすることができる。また緑色のFuzzlの場合は、一定のあいだ時間を止められる。こういった能力も上手く使いながら、敵の危険を避け、森を進んでいくのだ。
レトロゲームをいまも愛するインディー開発者らは、それぞれのこだわりを持って8bitや16bit風に再現したゲームを手がけ、中にはメーカー非公認ながらファミコンやゲームボーイなどの実機で動作するゲームをリリースする例もある(関連記事)。1988年に発売されたメガドライブをプラットフォームとするこの『TANGLEWOOD』もその流れを汲む作品の一つだと言えるが、本作がユニークなのは、メガドライブが現役だった当時の開発環境そのものを用意して、その当時と同じように開発しているということだ。Big Evil Corporationの設立者Matt Phillips氏が、その経緯についてBBCなどに語っている。
Phillips氏は、『TANGLEWOOD』を可能な限り本物のメガドライブゲームとして提供したいと考えたそうで、それは子供の頃からの夢だったという。彼はこれまでCrytekやDeep Silverなどで数多くのAAAタイトルの開発に携わり、現代的なゲームエンジンでの開発を続けてきたが、それに少し飽きてきたということも理由としてあるとのこと。そして、インターネットやガレージセールを漁ってメガドライブの開発キットを入手。具体的にはメガCDをベースにした開発機と、Windows 95のPCで利用する純正の開発ツールなどだ。20年ほど前のものであるため、入手した時点では修理が必要な状態だったという。
開発環境を揃えたPhillips氏は、まず『Pong』や『テトリス』といったシンプルなゲームや、簡単なアクションゲームを作りながら、その扱いを学ぶことから始めた。非常に限られたメモリやROMを前にさまざまな工夫も求められたそうだが、Phillips氏としてはそういった制限の中での開発を楽しんでいたようだ。
一方、完成したゲームを収録するメガドライブ用のカートリッジについては、中国の工場でケースを、そしてカナダの業者にPCB(基板)を制作してもらうとのこと。こちらもやはり古いゲーム機向けだからか、パートナーを見つける過程では困難があったようだ。ちなみに、「セガ 3D復刻プロジェクト」などを担当したセガの奥成洋輔氏は、メガドライブのカートリッジをいま作るなら金型から作る必要があり、PCBについても、いまの技術で同じものは作れないと思われるため設計しなおす必要があると、その困難さを語っていた(電ファミニコゲーマー)。
そうして開発中の『TANGLEWOOD』について、Phillips氏はメガドライブゲームとして正式にライセンスを許諾してもらえないか、セガに直接問い合わせたそうだ。しかしセガには、メガドライブ向けのライセンスや品質チェックをおこなう部署はすでに存在しないため断られたという。ただ非公式にではあるが、プロジェクトが上手くいくようエールを送ってもらったと語っている。
『TANGLEWOOD』は、2018年6月頃の発売を予定しており、現在公式サイトにて予約を受け付けている。ゲームは、日本のメガドライブ本体でも動作するマルチリージョンのカートリッジに収録され、メガドライブゲーム風のケースや説明書も付属する。価格は54ポンド(約8000円)である。現在、アルファ版が体験版として配布されているので、こだわり抜いたメガドライブゲームに興味のある方はチェックしてみてはいかがだろうか