床と壁の概念なし。360度飛び回るメトロイドヴァニア『Dandara』ニンテンドースイッチ/PS4/Xbox Oneにて発売。Steam版は7日


Raw Furyは2月6日、Long Hat Houseが手がけた2Dアクション・アドベンチャーゲーム『Dandara』を国内発売した。プラットフォームおよび価格は、ニンテンドースイッチ(1690円)/PlayStation 4(1690円)/Xbox One(1620円)/Steam(1690円)。iOS/Android向けにも発売されている(Steam版は明日7日未明に販売開始)。いずれのバージョンも、架け橋ゲームズのローカライズにより日本語表示に対応している。

『Dandara』の舞台は「ソルト(Salt)」と呼ばれる神秘的な世界だ。かつては美しい場所で、人々には自由な意思と創造心にあふれていたが、とある考えが広まると共に調和は崩れていってしまう。そしてソルトの人々はいま、自由を疎む「エルダー軍」による圧政に苦しめられている。そうしたなか、“創造のゆりかご”から生まれた子「ダンダラ(Dandara)」が目を覚ます。本作の主人公である彼女は、自由とバランスを失い崩壊の瀬戸際にあるソルトに残された最後の希望である。

本作はメトロイドヴァニアスタイルの2Dアクションゲームで、部屋から部屋へと進んで複雑に入り組んだマップの隅々まで探索していく。本作のユニークな点は、床や天井、壁といった概念が一定でないことだ。つまりダンダラは360度どの面にでも立つことができ、敵もまたしかり。ソルトの世界も上下左右が混在したデザインの不思議な世界観を構築している。訪れる部屋によってはステージ全体がグルリと回転するため、方向感覚を失わないようワールドマップとにらめっこをすることになるだろう。

移動する方向を定めている場面。上の白いラインが実際に左スティックで指している方向だが、その近くの白い地面にロックされた下の緑のラインに沿って飛べる

このような世界を、プレイヤーは地面から地面へと縦横無尽に飛び移って移動する。ちょうどグラップリングフックを刺して身体を引き寄せるアクションをイメージするとわかりやすい。ただし、飛び移れるのは地面の白く塗られた部分のみで、また地面の上を歩くことはできない。そのため、前に進むには上下の地面を“くの字“を描くように交互に飛び移っていくことになる。グラップリングフック(実際には違うが、固有技名がないため本稿ではこう呼ぶ)が届く距離には限りがあり、また180度以下の角度でないと刺せないため、ルート選びに頭を使う場面も多くなるだろう。

グラップリングフックは適当に方向を指すだけでその近くの白い地面をロックしてくれるため、細かい場所をいちいち指すことなく、ピョンピョンと素早く飛び移っていくことが可能だ。敵やトラップの存在を忘れて油断してはいけないが、爽快感を失わないようにする上手い工夫だといえる。なお、PC/コンソール版とモバイル版とでは操作方法が異なるのみで、ゲーム内容に差異はない。タッチ操作のモバイル版はバーチャルスティック式で、画面右側の好きな場所でグラップリングフック操作を、画面左側では後述するショット操作をおこなう。ニンテンドースイッチ版では、コントローラー操作とタッチ操作両方に対応しているが、どちらもうまく最適化されている印象だ。

本作に登場する敵・エルダー軍には人型の兵士もいれば、モンスターやゴーストのようなものまでさまざまおり、たとえばダンダラを目視すると武器で襲いかかってきたり、弾を撃ってきたり、あるいは突進してきたりと攻撃方法や行動パターンもさまざまだ。また弾をどんどん撃ってくる砲台のような敵や各種トラップ、さらに中ボスや巨大なボスといった強敵も登場する。

ダンダラは基本の攻撃手段として手から放つショットを持っており、これで敵を倒していく。ショットは溜め撃ちとなっており、溜める長さによって攻撃力が増大する。一方、溜めずにボタンをタップするだけでは何も撃てないため、接近した敵に対してとっさに迎撃することは難しい。その場合は焦らず、素早く退避して間合いを開けるのがベストだ。敵の激しい攻撃の前では、ショットと待避を繰り返すヒット&アウェイの立ち回りがカギを握る。なお攻撃手段としてはほかに、後述する強力なサブウェポンも存在する。

ショットの溜めおよび撃った時の反動で動く足場。このようなギミックもさまざまあり、近くにトラップがある場合は繊細な操作が求められる

マップを探索する中では、どうしても先に進めない場面が出てくるだろう。こうした場合は、まだ訪れていないほかの部屋にヒントがあるのがメトロイドヴァニアの常である。ゲーム序盤ではワールドマップを入手でき、訪れた部屋とその出入り口が確認できるので、まだ通っていない出入り口を目指すのだ。

そうした中では、たとえばエルダー軍に怯え家にこもっているソルトの住民たちに出会うことがあり、彼らの力を借りることによって特定の足場が動くようになったり、あるいは行く手を塞ぐ岩の壁をも破壊できる新たな力(サブウェポン)を使えるようになり、次第に探索可能範囲は広がっていく。マップの環境には森や街、遺跡のような場所などがあり、場面が変わるごとに新たな敵はもちろん、部屋の中を移動するギミックや、ダンダラを攻撃してくるトラップなどが大きく様変わりする。

マップの一部エリアを引いて見たところ。中央にキャンプが確認できる

マップの中にはテントが設置されたキャンプがあり、ここでゲームをセーブすることができる。キャンプでは体力や、サブウェポンを使用するために必要なエネルギーを回復できるほか、体力やエネルギーの上限値アップや、体力やエネルギーの回復アイテムの効果を高めるアップグレードも可能だ。アップグレードは「ソルトの粒」と交換しておこなう。ソルトの粒は敵を倒したり、マップ内にある木箱などのオブジェクトを破壊したり、あるいは宝箱から入手できる。なお、宝箱からは上述した回復アイテムを入手できることもある。

ゲーム中に死亡すると、最後にセーブしたキャンプに戻され、それまで集めていたソルトの粒はすべて失ってしまう。ただし、死亡した場所にはダンダラの魂のようなものが残されており、そこをふたたび訪れて魂に触れることで失ったソルトの粒を回収することが可能である(回収前にふたたび死ぬと、前回の魂は消えてしまう)。本作では回復アイテムの総数は限られているので、アップグレードの重要度が高い。敵やオブジェクトはほかのマップに行ってしばらくして返ってくると復活するが、大量のソルトの粒を失ってしまった場合は、可能な限り取り返しに行きたいところだ。ちなみに、マップの中ではほかの人の魂を発見できることもある。エルダー軍によって無念の死を遂げたソルトの戦士だろうか。それからも同様にソルトの粒を入手できる。

上下左右どの面にでも立てることと、グラップリングフックのみでの移動という本作の大きな特徴は、四方八方に広がる広大なマップでの探索範囲が徐々に広がっていくメトロイドヴァニアゲームにうまくフィットしており、それと同時にプレイヤーのスキルを試す要素にもなっている。ゲームを進めるに従って敵やトラップの攻撃は激しくなり、行き当たりばったりではすぐに死んでしまいかねない。そのため、グラップリングフックでの立ち回りはより重要さを増していく。マップ内にはどこかしら安全地帯があるため、そこでどのようなルートを飛び移って行くのかや、敵やトラップへの対処を事前に考えてから行動する慎重さが求められる。一方で、細かいことを考えずスピーディーに突き進まざるを得ない場面もあり、そうした緩急の利いたゲームデザインもまた本作の特徴となっている。

頭から足にかけて大きくなっている奇妙なソルトの住民。これはブラジルの画家タルシラ・ド・アマラウの作品「Abaporu」をモチーフにしている

ちなみに、この『Dandara』を開発したLong Hat Houseは、ブラジルに拠点を置くインディースタジオである。実は主人公のダンダラは、17世紀のブラジルで奴隷制度と戦った実在の人物Dandara dos Palmaresをモデルにしており、抑圧からの解放という本作のテーマも、その歴史から影響を受けている。そのほか、ゲーム内ではブラジルの名画をモチーフにした場面なども見ることができる。日本のゲームが日本の文化を取り込むことがあるのと同じように、本作は知らず知らずのうちに地球の裏側の文化にも触れることができる作品でもある。