アーケード筐体でPCゲームを遊びたい。DIYゲーマーが「Steam リンク」を組み込んだ本格筐体を製作

SteamリンクはPCから有線/無線で映像をストリーミングして、リビングなど離れた場所のテレビでSteamのゲームを楽しむための周辺機器だ。今回紹介する海外ゲーマーのInferno156氏もユーザーのひとりであるが、彼はテレビではなくアーケード筐体に組み込んでプレイするために、いちから筐体を作り上げてしまった。

Valveが開発し販売している「Steam リンク」。国内では株式会社デジカが運営するPROスチーマーから販売されているが、母艦となるユーザーのPCから有線/無線で映像をストリーミングして、リビングなど離れた場所のテレビでSteamのゲームを楽しむための周辺機器だ。通常は7344円で販売されているが、定期的にセールがおこなわれており、入手して楽しんでいる方もおられるではないだろうか。今回紹介する海外ゲーマーのInferno156氏もその一人だが、彼はテレビではなくアーケード筐体に組み込んでプレイするために、いちから筐体を作り上げてしまった。

Steam リンクと、RetroPieを利用したアーケード筐体 Image Credit: llevine5

きっかけはRaspberry PiでレトロゲームをエミュレーションするRetroPieからの影響があったという。Raspberry Piは手のひらサイズのシングルボードコンピュータで、レトロゲームの雰囲気を盛り上げるために、コンパクトなものから本格的なものまで、アーケード筐体を自作して組み込むことが一部のRetroPieユーザーの間で広まっている。しかしInferno156氏は、それとは少し違ったことをやりたいと考え、セールで入手したSteam リンクを代わりに用ることを思いついたそうだ。

Inferno156氏のDIY作業はかなり本格的なものである。彼はまず、3D CAD/CAMソフトウェア「Fusion 360」でデザインをレンダリングして検討を重ねることから始めた。彼は大型筐体ではなく、卓上に置けるようなコンパクトでスリムなデザインを目指したようだ。そして段ボールでモックアップを作り、さらに調整を重ねていく。モックアップを作ったことで、モニターの距離が近すぎて目が疲れそうだと分かったため、コントロール部は引き出し状にデザインを変更して距離を稼ぐことにしたという。

デザインが決定したら、次は材料の用意である。Inferno156氏はコンピュータ制御の工作機械MPCNCを所有しているようで、これで設計どおりにMDFボードを切り出していく。同時にボタンやスピーカーなどの穴あけ作業もおこなっている。そうして切り出した各パーツを塗装し、ビニールシートを貼り、そして接着して組み上げたところで筐体のガワが出来上がり。あとはスティックやボタン、モニタ、そしてSteam リンクなどを組み込んで完成である。操作系はXInputで動作するUSB接続のキットを入手したとのこと。モニタは市販のPCモニタを流用したようだ。

Inferno156氏は、完成したアーケード筐体で『MARVEL VS. CAPCOM 3』や『Castle Crashers』などをプレイする様子を披露しており、何ら問題なく動作しているようだ。筐体には、マウスやキーボードが必要になった場合でも対応できるようUSB端子も完備。ゆっくり楽しめるよう、天板にはカップホルダーも備えている。筐体デザインは伝統的なものではないが、シンプルな配色でどこかクラシックな雰囲気を醸し出している。

こうしたオリジナルの筐体を自作することは、前述したRetroPieなどのほか、コンソール機をモバイル化するためにおこなう人もいる。かつてTHQが『Darksiders』のプロモーションのためにラップトップ型Xbox 360の製作を依頼した、Ben Heck氏はよく知られている製作者のひとりだ。今回Inferno156氏が製作した筐体のユニークな点は、ストリーミング機器であるSteam リンクを使用したというところだろう。ゲームを実行するPCが別途必要ではあるが、本体は123 x 90 x 15mmと非常にコンパクトで扱いやすく、筐体のエアフローに悩まされることもほぼない。もちろん、プレイするゲームはSteamライブラリから選び放題だ。Inferno156氏はアーケード筐体に利用したが、ほかにもさまざまな活用できそうであるため、今後新たなアイデアでDIYする人が現れるかもしれない。

Taijiro Yamanaka
Taijiro Yamanaka

国内外のゲームニュースを好物としています。購入するゲームとプレイできる時間のバランス感覚が悪く、積みゲーを崩しつつさらに積んでいく日々。

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