宇宙ACT『Star Control: Origins』の著作権侵害を突如訴えたオリジナル版作者が、侵害内容を公表。アイデアや一般表現を羅列しメーカーは困惑

Stardockが昨年発売した宇宙ゲーム『Star Control: Origins』が、『Star Control』シリーズの初期作品を手がけた開発者からの著作権侵害の申し立てによりSteamとGOGから削除されたことを先日お伝えしたが、その後両者の対立が激しさを増している。

パブリッシャー・デベロッパーのStardock Entertainmentが昨年発売した宇宙アクション・アドベンチャーゲーム『Star Control: Origins』が、『Star Control』シリーズの初期作品を手がけた開発者からの著作権侵害の申し立てによりSteamとGOGから削除されたことを先日お伝えしたが、その後開発者側が声明を発表したことで両者の対立が激しさを増している。

まずは本件の経緯を簡単に振り返っておこう。1990年代に3作発売された『Star Control』シリーズの権利はAtariが保有していたが、同社は2013年に破産。その際に競売にかけられた資産の中から、Stardockは『Star Control』シリーズの権利を購入した。しかし、初期2作の著作権は開発者であるPaul Reiche 3世氏とFred Ford氏が保有を主張したことで、Stardockが得たものは「Star Control」の商標権と、『Star Control III』の著作権(Reiche・Ford両氏の著作物を除く)のみとなった。

シリーズの中で特に人気の高かった『Star Control II: The Ur-Quan Masters』のコンテンツを活かした続編を制作できない形となったため、Stardockは独自の世界観やキャラクターなどを用意して『Star Control: Origins』を制作・発売する。そして、Reiche・Ford両氏はアメリカのDMCA(デジタルミレニアム著作権法)に基づく著作権侵害の申し立てをValveとGOGに対しておこない、本作は両ストアから削除された。なお、これはValveとGOGが本作の著作権侵害を認定したことを意味するわけではない。

https://twitter.com/Dogar_And_Kazon/status/1080886812950769665

Reiche・Ford両氏は今回出した声明の中で、『Star Control: Origins』に対してDMCAの申し立てをおこなうに至った理由のひとつとして裁判所の判断を挙げている。『Star Control』シリーズの権利をめぐっては、それまでにも両者の間で対立が続いており、Stardockは両氏による本作に対するDMCAの申し立てを警戒し、裁判所に予備的差止命令を出すよう訴訟を起こしていた。しかし、Stardockの請求は却下される。裁判所は、制作物に関してより専門的な知識を持つReiche・Ford両氏が本作に著作権侵害の懸念を持っていることを重視。また、著作権侵害が疑われている本作を係争中にリリースしたことで、Stardock側が問題を拡大させているとした。裁判所は著作権侵害を認定したわけではないが、Reiche・Ford両氏はこれを受けてDMCAの申し立てをおこなったという。

『Star Control: Origins』がストアから取り下げられてから、Stardockは本作のどの要素が著作権侵害に当たるのかReiche・Ford両氏に再三尋ねていた。Stardockの主張としては、前述したように両氏が制作に関わっていないのはもちろん、過去作のコンテンツも使用していないという立場で、もし侵害行為があるのであれば削除する姿勢を示している。これを受けてReiche・Ford両氏は、自身が著作権を主張する『Star Control II』と、関与していない続編『Star Control III』、そして『Star Control: Origins』に含まれる複数の要素のうち、星間移動関連について比較した表を公開した。ここでの両氏の主張を端的に言うと、『Star Control: Origins』はStardockが著作権を持つ『Star Control III』のコンテンツを使用せず、『Star Control II』を模倣しているということである。一方のStardockは、示された各要素について反論している。

上に掲載した画像は、Reiche・Ford両氏が公開した表に、Stardockが反論(右側の赤枠内)を書き加えたものである。両者の主張が統合されているため、本稿ではこちらのみを掲載する。Reiche・Ford両氏は13項目の要素について模倣であるとしており、一方のStardockはこの多くで似た表現を使用していることを認めながら、著作権保護の対象ではないと主張していることが見て取れる。

たとえば、星間移動に“ハイパースペース”を使用していることや、2Dの見下ろし型視点であること、またレーダーマップの表示や、惑星間でバトルがおこなわれることについて、Stardockはアイデアにすぎないと反論している。一般的に、ゲームのアイデアは著作権保護の対象とはならないことを指しているのだろう。そのほか、ゲームのみならず多くのSF作品が使用する一般的な表現(ハイパースペースも含む)について指摘したり、惑星間を赤色で表現することについて「色は著作権として保有することはできない」としたり、あるいは事実誤認を指摘する項目もある。ただ1点だけ、宇宙船が燃料切れを起こした際に助けがやって来る表現については反論がない。

この表を見た海外ゲーマーの中には『Starflight』や『フォートナイト』を表に追加したり、『Mass Effect』のスクリーンショットを並べて模倣であるといって楽しむ姿が見られ、一般的な表現やアイデアを羅列したReiche・Ford両氏の主張は無理筋だと映っているようだ。Stardockの社長Brad Wardell氏も「彼らは『No Man’s Sky』のことをどう思っているのだろう」と述べ、これらの表現の削除を求めることは妥当なのか疑問を呈している。一方で、Redditでは個々の表現ではなく、これらを組み合わせた全体的な表現として著作権が認められるのではないかという声も聞かれる。Reiche・Ford両氏の意図がどちらにあるのかは分からないが、両氏の主張が認められるのか否かは、最終的には裁判などで争わないことには結論を見ないだろう。

なお、DMCAの扱いをめぐって本件に関心を示していた弁護士のRichard Hoeg氏は、今回Reiche・Ford両氏が挙げたような理由で販売中のゲームにDMCAの申し立てがおこなわれた事実に、業界全体は恐怖を感じるべきだとコメントしている。DMCAが申し立てられれば、今回のようにストア側は精査することなく法に則り一旦削除してしまう。DMCAの濫用はしばしば問題視されており、これに拍車をかけかねないという意見なのかもしれない。

Reiche・Ford両氏は、この表の中で一般的な表現を挙げていることを認識してか、すべての星間移動表現に著作権を主張することはないとしている。ただ、『Star Control II』で採用した独自の表現には著作権があると自信を見せる。今後、Stardockの反論に対してさらに反論するのかどうか注目される。

Taijiro Yamanaka
Taijiro Yamanaka

国内外のゲームニュースを好物としています。購入するゲームとプレイできる時間のバランス感覚が悪く、積みゲーを崩しつつさらに積んでいく日々。

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