『Star Wars バトルフロント II』EA幹部がスキン型ルートボックスを導入しなかった理由を語る「ピンク色のダース・ベイダーは相応しくない」
【原文 2017/11/29 14:08】
Electronic Arts(以下、EA)は、現在発売中の『Star Wars バトルフロント II』からゲーム内課金要素を取り下げている。クレート(ルートボックス)から入手できるアイテムによってキャラクターの能力を強化でき、そのクレートはお金を払うことで開けることができたため、より多くのお金を払ったプレイヤーがマルチプレイで有利になるPay-to-Winそのものだという批判が巻き起こったためだ。ただ、取り下げは一時的なもので、EAはゲームにしかるべき調整を施したのちに再開する予定だとしている(関連記事)。
EAは現時点ではクレートから強化アイテムを入手できる仕様については変更していないが、そもそもなぜこのような仕様にしたのだろうか。Pay-to-Winだと批判されることは容易に想像できたはずである。ルートボックスについては賛否さまざまあるものの、入手できるアイテムがコスメティクス要素、つまりキャラクターの見た目を変えるだけのものに限定している『Overwatch』などのゲームでは比較的プレイヤーに受け入れられているが、『Star Wars バトルフロント II』でも同じようにはできなかったのだろうかという疑問が残る。
EAの最高財務責任者Blake Jorgensen氏は11月28日、金融機関クレディ・スイスが主催するAnnual Technology, Media and Telecom Conferenceに参加し、まさにこの点について言及している。Jorgensen氏によると、本作の開発過程においてもっとも気をつけていたことは、長い年月をかけて確立された「スター・ウォーズ」の世界観を壊してしまわないことだったという。そして多くのコスメティクス要素を導入することは、世界観の破壊に繋がってしまうかもしれないと語る。
とはいえ、何らかのコスメティクス要素を導入すること自体は可能だとし、現在ルーカスフィルムと実際に取り組んでいる所だとJorgensen氏は明らかにしている。ルーカスフィルムはスター・ウォーズブランドを管理する立場にあり、『Star Wars バトルフロント II』においてはEAや各開発スタジオと密に連携を取って開発にも関与している。Jorgensen氏は、スター・ウォーズのファンはリアルであることを求めるため導入することは簡単ではないが、たとえば異なる色のライトセーバーのようなものであればファンも欲しがるかもしれないとヒントを残している。
本作を巡る一連の報道の中では、EAや開発元のDICEは、当初はクレートから得られるアイテムをコスメティクス要素に限定しようと計画していたというものがあった(関連記事)。結局ルーカスフィルムの親会社でスター・ウォーズの権利をEAにライセンスしている立場にあるディズニーからの要請により取り下げられたとされており、その理由については詳細には報じられていなかったが、今回のJorgensen氏の発言から、スター・ウォーズの世界観やキャラクターのイメージを守りたいというライセンサーとしてのディズニーの意向が働いたということが真相だったようだ。
すでに世界観が確立され世界的な人気を得ている他社のIPだけに、不用意にいじることのできない難しさを感じさせるエピソードである。ただ、その代わりにおこなわれたのがクレートへの強化アイテムの導入だったとすれば、結果的にこれもまた不用意な決断だったかもしれない。『Star Wars バトルフロント II』を発端に各国で活発になりつつあるルートボックスを巡る議論の中では、コスメティクス要素に限っていたとしても何らかの規制が必要ではないかというものも見られる(関連記事)。EAはスター・ウォーズファンもさることながら、そうした議論の行方にも注意を払いながら本作の調整をおこなっていることだろう。
【UPDATE 2017/11/29 16:30】
なお、YouTubeユーザーUninspired Zebra氏が、『Star Wars バトルフロント II』のゲームデータを解析した結果、キャラクターのスキンを変更するメニューを発見したとして映像を公開している。それによると、スキンは銀河共和国や銀河帝国、反乱同盟軍などに分類され、クローン・トルーパーであればさらに第501大隊やコルサント・ガードなど所属ごとのスキンが用意されていることが分かる。この映像の真偽は不明だが、スター・ウォーズの世界観に基づいたカスタマイズ要素は、Jorgensen氏が示した単純な色の変更とは根本的に異なる。こういった実装方法であれば、これまでのスター・ウォーズゲームにも存在していたためディズニー/ルーカスフィルムも許容でき、またファンも期待する所ではないだろうか。