【UPDATE】PS4版『ニューダンガンロンパV3』が韓国でレーティング審査拒否に。先月発生した少女による猟奇殺人事件が審査の判断に影響か

韓国のゲームレーティング機関Game Rating And Administration Committee(以下、GRAC)は7月26日、PlayStation 4版『ニューダンガンロンパV3 みんなのコロシアイ新学期』のレーティング審査結果を公表し、「NO(審査拒否)」に分類したことを明らかにした。

【UPDATE 2017/8/4 11:00】
ソニー・インタラクティブエンタテインメント・コリアは8月1日、本件について声明を発表し、9月26日に予定していた『ニューダンガンロンパV3』の韓国国内での発売を中止すると正式発表した。同社は「GRACの審査結果によって」発売中止を決定したとだけ発表しており、具体的にどのような表現が問題になったかについては言及していない。

【原文  2017/7/28 19:11】
韓国のゲームレーティング機関Game Rating And Administration Committee(以下、GRAC)は7月26日、PlayStation 4版『ニューダンガンロンパV3 みんなのコロシアイ新学期』のレーティング審査結果を公表し、「NO(審査拒否)」に分類したことを明らかにした。海外メディアKotakuなどが報じている。日本やほかの国・地域と同様に、韓国においてもレーティングを取得しなければ事実上ゲームを発売できないため、GRACは本作の韓国国内での発売を認めないという判断を下したことになる。

『ニューダンガンロンパV3 みんなのコロシアイ新学期』は、スパイク・チュンソフトの『ダンガンロンパ』シリーズの一作。今年1月にPS Vita版と共に国内発売された、ハイスピード推理アクションゲームだ。9月には海外やSteamでも発売予定となっている。本作では、超高校級であると認められた16人の学生たちが才囚学園に監禁され、学園内で発生した殺人事件に対して、学級裁判を通じてクロ(犯人)を探し出す。そして、学級裁判の結果によって学生たちがおしおき(処刑)されるというコロシアイが展開される。

本作が審査拒否となったことについては韓国国内でも報じられており、そのひとつGamemecaによると、GRACは「本作には模倣犯罪を促しかねない犯罪・暴力・性的描写などが含まれており、社会的な混乱を引き起こすことが懸念される」ため、審査拒否に分類したと伝えている。とはいえ、韓国ではこれまでに『ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生』などのシリーズ作が発売されており、学生たちがコロシアイするという内容に大きな違いはない。もっとも、ほとんどが「18歳以上のみ対象」とレーティングされており、発売が可能なギリギリの内容であったわけではあるが。なぜ今回はそのギリギリのラインを超えたと判断されたのだろうか。

その理由として韓国国内で推測されているのが、今年6月に同国内で発生した猟奇殺人事件だ。これは17歳の少女が小学2年の女児を誘拐し、首を絞めて殺害したうえで遺体を切断した容疑で、共犯の18歳の少女とともに逮捕されたという事件だ。高校生による残虐な事件に韓国国内は大きなショックを受け、日本でも報じられている。当然ながら、この事件と『ダンガンロンパ』とは何の関係もないが、「高校生と殺人」という共通点が“社会的な混乱”に繋がると懸念されたのではという見方だ。GRACの担当者は別の韓国メディアThis is Gameに対し、この事件が審査に影響を及ぼしたかどうかについて否定も肯定もせず、本作のコンテンツの表現が、社会で受け入れられる限度を超えていたため拒否したと説明。模倣犯罪などへの懸念もあるが、理由はそれだけではないとしている。

『GET EVEN』

現実に起こった出来事がフィクションのメディア作品の公開・発売に影響を及ぼした例はこれまでにもあり、たとえば16歳の少女が警察官の父親を殺害した2007年の京田辺警察官殺害事件のあとには、当時放送中だったテレビアニメ「ひぐらしのなく頃に」や「School Days」の一部の放送回が放映中止となった。いずれも事件を彷彿させる描写が含まれていたという。
ゲームでいうと、今年5月にイギリス・マンチェスターで起きた爆弾テロ事件のあと、バンダイナムコが『GET EVEN』の発売延期を決定した。この事件では幼い女の子が犠牲になったことが大きく報じられたが、同作では爆弾を身体にくくり付けられた少女が登場する。とはいえ、これらはいずれも制作側の自主的な判断でおこなわれたことで、もし仮に個別の事件がGRACの判断に影響を及ぼしたとすれば、少し性格の違う事例となる。

『Homefront: The Revolution』

GRACでこれまでに「NO(審査拒否)」と分類された家庭用ゲームはあまり多くなく、『Mortal Kombat(2011)』、『Manhunt』および『Manhunt 2』、『パチパラ15 スーパー海IN沖縄2』そして『Homefront: The Revolution』だ。『Mortal Kombat』と『Manhunt』シリーズは、残虐表現が問題となったことは想像に難くない。残りの二つについてははっきりしないが、『Homefront: The Revolution』には北朝鮮がアメリカを占領し覇権を握った世界が描かれており、北朝鮮と休戦状態にある韓国の立場として受け入れられなかったのかもしれない(ちなみに前作は審査すらされていない)。

一般にレーティング機関は、ゲームのコンテンツ・表現が青少年に与える影響への配慮を求める社会的要請に応えることを目的としているため、そのレーティング機関がある国や地域ごとに判断は異なってくる。推測ではあるが、上の最後に挙げた『Homefront: The Revolution』はいい例だろう。そのため、社会情勢によって審査基準が変わってくることは韓国に限らずあり得る話だ。とはいえ、こちらもまた推測をもとにしているが、たったひと月前に起こった事件が審査に影響を及ぼすということはやや過剰反応に映る。これではゲームを審査に提出する側も対応しきれないだろう。なおGRACに審査拒否と分類されても、7日以内であれば異議を申し立てることができるため、前出の韓国メディアGamemecaによると、韓国版『ニューダンガンロンパV3』の販売元であるソニー・インタラクティブエンタテインメントの韓国法人は、現在社内で対応を検討中だそうだ。

Taijiro Yamanaka
Taijiro Yamanaka

国内外のゲームニュースを好物としています。購入するゲームとプレイできる時間のバランス感覚が悪く、積みゲーを崩しつつさらに積んでいく日々。

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