『スプラトゥーン2』イイダvsヒメ論争は奇妙な形で終止符、海外でもファンベースが生まれ順調な出足の予感
第一作目の『スプラトゥーン』ではマスコットキャラクターである「アオリ」と「ホタル」をめぐる終わりなき争いが繰り広げられてきた。強気でおてんばな「アオリ」と毒舌で天真爛漫な「ホタル」で結成される「シオカラーズ」。それぞれ異なる魅力を持つキャラクターとしてファンに愛されてきた。
その「シオカラーズ」にかわって『スプラトゥーン2』のマスコットキャラクターとなったのが「テンタクルズ」だ。妖艶な「イイダ」と無邪気な「ヒメ」で結成されるユニットがすでに海外で人気を博していることは以前お伝えした。その熱を冷めるどころか、発売が近付く現在、その「イイダヒメ論争」は加熱に一途を辿っているのだ。ただその論争は「どちらがいいか」というものではない、やや奇妙な形で発展しつつある。
人気を集める「イイダ」マスコット化する「ヒメ」
純粋な海外人気でいえば、「イイダ」は「ヒメ」を圧倒している。その結果はファンイラスト投稿サイトに如実にあらわれており、DeviantArtやTumblrでは「イイダ」のイラストが多く見受けられる。以前弊誌が調査した際には「イイダ」は、その格好良さが人気の理由としてあげられていた。しかし「イイダ」の勢いは単に「人気がある」程度では収まらないようだ。というのも、先日開催された『スプラトゥーン2』の前夜祭でもそうした熱烈な支持が数字として現れていたからだ。国内向けの前夜祭では「ロックvsポップ」がテーマであったことは知られている。一方北米では「アイスクリームvsケーキ」というテーマで前夜祭が開催された。
結果的にはアイスクリームが勝利したわけであるが、注目したいのはその得票率。約75%のユーザーが「イイダ」の擁するアイスクリームを支持したという数字が出たことをMyNintendoNewsが報告している。北米でも7月は夏なので、そういったアドバンテージを得ていることも考えられるがKotakuは「Marina(イイダ)がアイスクリームを勝利へ導いた。個人的にはケーキ派であったがMarinaが好むアイスクリームを愛さずにいられなかった。Marinaの人気が勝利を導いた。」と熱弁している。75%のすべてが「イイダ」の人気だとは断言できないが、異様ともいえる熱烈な支持が関係していることは間違いないだろう。
一方「ヒメ」はというと、マスコットに近い形でユーザーに受け入れられている。「ヒメ」の特徴はその表情豊かさだ。トレイラーでも喜怒哀楽をまじえた無邪気さ前面に出ていたが、その表情の豊かさが“いじられている”。もっともよく見られる“いじり”は「ヒメ」がグレムリンに似ているという指摘だ。グレムリンというのはブラックジョーク映画作品の「グレムリン」か、伝承上の生物のおぞましいグレムリンかは定かではないが、かわいらしさを意味する例えではないことは間違いない。ほかにあげられているのが「チャイルドプレイ」の「チャッキー」だ。独特の目の形や輪郭が「チャッキー」に似ているとあげられている理由だろう。しかしこれらは、単に悪意込められているというよりは、meme(ネットスラング)の扱いに近い。その表情の豊かさや生意気さがマスコットのように親しまれている印象を受ける。Polygonはこうした「ヒメ」の扱いについては「ゲーム内での第一印象がよくなく、額が広すぎるゆえにゴブリンやグールにも見える」と考察している。
一方で日本ではこうした人気は逆転しているようだ。大手画像投稿サイトPixivでは「イイダ」のイラストが7月19日18時時点で385件投稿されている。「ヒメ」のイラストは615件。「ヒメ」タグには他作品のイラストがまじりやすいことを考慮しても、「イイダ」を凌ぐ人気を誇っている。国外と国内におけるこの人気の差は、非常に興味深いデータだろう。
海外では「イイダ」はアイドルとして、「ヒメ」はマスコットとして愛されつつある。ひとついえるのは、『スプラトゥーン2』は発売前にして圧倒的なファンベースを確立しているということだ。同じく任天堂が手がける『ARMS』も発売前にすでに人気を確立していたが、『スプラトゥーン2』のファンベースの大きさはそのはるか上を行く。海外ではレビューが解禁されており、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』までとは言わずとも、安定した評価を得ていることがMetacriticを見てもわかるだろう。国内人気は言わずもがな、海外でも順調な出足を予感させる。好調なニンテンドースイッチの後押し、そして国内外でファンベースを確立した『スプラトゥーン2』は売上人気ともにどこまで伸びていくのだろうか。その行く末が楽しみだ。